昆虫散歩道

昆虫をあれこれ撮影してあれこれ語ります

モンキチョウ・・・草原を黄色く彩る可憐な蝶

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鮮やかな黄色が目を引くおなじみの蝶だ

モンシロチョウほどではないかもしれないが、比較的多くの人に知られている蝶の一種だろう。
春の暖かい草原を歩けば、かなり多く飛び交う姿を目撃することが出来るはずだ。
黄色い蝶であるがシロチョウ科で、モンシロチョウとは近い仲間ということになる。
モンシロチョウよりも飛び方が俊敏で、時折花を訪れる。
写真に収めるのは中々難しく、不用意に近付くとすぐに飛び立ち、結構な素早さで草原を飛び去ってしまう。

 

マメ科シロツメクサレンゲソウ等を食草にするので、日本中ありとあらゆる草原に生息しており、その点もモンキチョウ知名度を上げている一因だ。

 

成虫が見られる時期も春から秋までと長く、暖かい日であれば初春や晩秋でも見ることが出来る。

基本的に羽を広げて止まることが少ないので、中々表の羽を見ることはできないが、黄色ベースに黒い模様が縁取られておりとても可憐だ。興味がある人は飛んでいるところを注視してみるか、捕まえて観察してみてほしい。(もっとも飛び方が素早いので、飛んでいるところを観察するには、かなりの動体視力を求められることをあらかじめお伝えしておく)

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太陽が透けて表面の黒縁がよく見える

ところでモンキチョウという名前ではあるが、メスは白っぽいというのはご存じだろうか。
以前友人がモンキチョウのメスが飛んでいるのを見かけた時に、「モンシロチョウだ」と言っていたので、真相を教えてあげたら驚いていたという経験があった。
蝶に興味のない方からしたら、モンシロチョウとモンキチョウのメスなど、見分けろと言う方が酷な話である。
ちなみにメスにも関わらず黄色い個体もいるので、これまたややこしい話になってくるのだが、とにかく白い場合はメスだという事は覚えておいてほしい。

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白い個体のメス。淡く黄色が入る程度だ

また、身近な所に生息している黄色い蝶に、キタキチョウという種類が存在する。
こちらは鮮やかなレモン色をしており、普通の方が飛んでいるところを見たら、まずモンキチョウだと勘違いしてしまうだろう。
キタキチョウはより林間のような場所を好むので、飛んでいる場所である程度判別する事ができるが、時折混在することもあるので、その時は注意深く観察していきたいところだ。

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キタキチョウ。明確な模様がなく無地っぽいので見分けるのは容易だ

昆虫はそもそも種類が多いので、こういった、勘違いというか思い込みはよくある。
実際私も、昆虫の写真を撮ってて実は違う種類だったとか、後々見返してみて本当にこの種類なのか疑わしくなったりとかがよくある。
もっともモンキチョウは、その辺の土手に行けば普通にたくさんいるので、足しげく通えばすぐに慣れて見分けられるようになるだろう。

 

暖かい日当たりのいい草原を彩るように飛び回るモンキチョウ。その可憐な姿を見ると、こちらもなんだか明るい気分になるのだ。

 

モンキチョウ

チョウ目シロチョウ科モンキチョウ亜科

成虫は3月~11月頃にかけて見られる

前翅長22mm~33mm

日本全国に分布

日当たりの良い草原や空き地等でよく見られる

食草はマメ科シロツメクサレンゲソウ

日本の草原を代表する蝶。日当たりの良いところを俊敏に飛び回る。

 

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トノサマバッタ・・・バッタと言ったらこいつで決まり

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トノサマバッタ緑バージョン。おなじみの姿だ

日本でバッタと言えばこれ。正にキングオブバッタ。名前もトノサマバッタと貫禄の和名をちょうだいしている。

 

どこにでもいる普通種で、知名度的にもかなり高い存在ではあるが、ちょっとした草地には少なく、割と規模の大きい草原に行かないといない印象だ。
私の近所では河川敷の土手が主な生息地であるが、数はそこまで多くなく、オンブバッタイナゴの方が賑やかに飛び回っている印象がある。

 

飛翔力も高く、同じバッタ科のオンブバッタと比べたら、雲泥の差がある。
その高い飛翔力は蝗害(こうがい)という被害をもたらすこともある。
これは、大量発生したバッタが移動を繰り返し、その先で農作物等の植物を根こそぎ食い荒らしてしまうという、農家さんからしてみればまるで死刑宣告というようなヤバい現象のことである。
サバクトビバッタが有名で、最近でも海外で猛威を奮っているニュースが届いたほどだ。
もっとも日本は森林が多く広大な草原が少ないので、トノサマバッタがそのような甚大な被害をもたらした事例はあまり発生しておらず、今のところトノサマバッタがそこまで全国的に猛威を奮うことはなさそうではある。

そのような群れて蝗害を起こすような個体を、群生相(ぐんせいそう)(そうでない個体は孤独相というが、群生相のトノサマバッタ緑色ではなく、褐色をしている


ここからがややこしいポイントなのだが、褐色の個体がすべて群生相かと言われるとそんなことなくて、ただ単に褐色なだけという個体もいる
子どもの頃、群生相が褐色と聞いて、近所にいる褐色の個体に恐れおののいていたということがあるが、なんでもない取り越し苦労だったようである。

褐色の個体。群生相はもっと黒っぽくなる

ところでトノサマバッタは有名な種類であり、多くの人に知られている存在ではあるが、実はよく似ている種類が存在する。それがクルマバッタだ。
実はみんながトノサマバッタだと思っているヤツが、クルマバッタだったということは、あるあるな話である。
見分け方としてはクルマバッタの方が胸部が盛り上がっている点クルマバッタは顔から胸にかけて黒っぽい模様が目立つ点で見分けがつく。
また、大きさもトノサマバッタの方が大きく、前述の通り飛翔力も高い
羽も、黒い帯状の模様があるクルマバッタと、模様がないトノサマバッタとで違いがあるので、慣れてくると飛んでいるところを見て見分けられるようになる

ちなみにクルマバッタにはよく似たクルマバッタモドキという種類がいるのだが、この話はまた別の機会にしよう。

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クルマバッタ。顔周りの模様が目立つ

ちなみにこれは大抵のバッタがそうだが、メスの方が大きくオスは小さい
交尾をする時はメスがオスをおんぶするような形になるため、その方が都合がいいのだろう。

 

しかしトノサマバッタというのはかっこいいフォルムをしているものである。凛々しくシュッとしていて、飛翔力も高く、トノサマバッタの名に偽りなしといった堂々たる姿だ。
バッタといったらこれ。私も見かけたら夢中で追いかけてしまうものである。
そんな童心に簡単に戻れるトノサマバッタは、やはりキングオブバッタなのだ。

 

トノサマバッタ

バッタ目バッタ科

成虫は7月から10月にかけて出現

体長35mm~65mm(メスの方が大きい)

北海道から沖縄にかけて分布

河川敷等日当たりの良い草原に生息

様々な植物を食べる

バッタの中でも有名な種。飛翔力が高く時に大量発生して農作物に被害をもたらすこともある。

 

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セイヨウミツバチ・・・働き者で人間をも手助けするすごいヤツら

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せっせと働き花から花へ飛び回る

ミツバチはおそらく日本で最も有名な昆虫の一種で、様々な物語や歌の題材にもなっているいわば超が付くほどの著名人、もとい著名蜂だ。
日だまりのいいお花畑にでも赴けば、右に左に飛び回り、せっせと働いている姿をよく目にする。
性格はとても温厚でめったに人を刺すことはなく1度刺すと死んでしまうことも有名だ。

 

実はよく見かけるミツバチは、多くがセイヨウミツバチというのも、もはやお馴染みではないだろうか。
日本にいるミツバチは大きく分けてニホンミツバチセイヨウミツバチに分かれており、元々日本で暮らしていたのはもちろんニホンミツバチ。セイヨウミツバチは文字通り西洋からの移住組だ。

セイヨウミツバチの方が多くハチミツが取れるという商業的な観点から、養蜂業ではセイヨウミツバチが多く利用されており、ニホンミツバチが利用されることは少ない

花の受粉の一助にもなることから、農家さんが農作物の受粉のために養蜂することもある。なんでも知り合いの農家さんに聞いた話では、人間が自らの手で受粉させるよりも 蜂が受粉した方がおいしい農作物ができるらしい。いやはや、我々の暮らしの役に立ちすぎな存在である。

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足に花粉を付けるおなじみの光景

見た目的にはより黒が多く小柄なのがニホンミツバチ黄色が多いのがセイヨウミツバチとなっている。(正確には羽の脈で見分けるが、説明が難しいのでまたいつか語ってみることにする)

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ニホンミツバチ。全体的に黒が多い

ニホンミツバチ天敵のスズメバチに対して、総出でスズメバチを包み込み蒸し殺す(いわゆる蜂球〔ほうきゅう〕必殺技を駆使して撃退するという、かわいらしい見た目からは想像も出来ない、なんとも恐ろしい所業を繰り広げるのだが、元々スズメバチがいない地方出身のセイヨウミツバチは、対抗手段がなく巣を全滅させられてしまうという。

そうした天敵の存在もあり、実はセイヨウミツバチは日本では野生化しないと言われている。つまりその辺を飛んでいるセイヨウミツバチは、どこかで飼われているいわば家畜ということである。
ところが近年、日本に住み着いたセイヨウミツバチは、ニホンミツバチと同じように、蜂球を作って対抗するものがいると言われている。ニホンミツバチに教わったのだろうか。いやはや大した適応力である。(ただしセイヨウミツバチの蜂球は、温度がスズメバチの致死温度まで上がらず蒸し殺せないらしいので、いずれにせよ茨の道ではある)

 

また、これも有名な話ではあるが、いわゆる働き蜂はすべてメスである。
ではオスは何をしているのかというと、女王蜂と交尾をするためにあちこち飛び回る
1度交尾をすると死んでしまうらしく、まさに一斉一代の大勝負と言ったところだ。
また、ハチの針は産卵菅が変化したものなので、オスはそもそも針を持っておらず、要するにオスが出来ることは、メスと交尾をすることくらいしかないと言っても過言ではない。
子孫を残すためだけに特化するというなんともすごい進化をしたものである。

 

巣という家を作り社会を形成するセイヨウミツバチ。ただそこら辺を飛んでいるだけのように見えるが、その裏では様々なドラマが繰り広げられている。
花の周囲を賑やかに飛んでいるハチたちに想いを馳せてみると、なんとも不思議な気持ちになるものである。

 

【セイヨウミツバチ】

ハチ目ミツバチ科

ほぼ1年中見られる

体長12mm~20mm

北海道から九州に分布

日当たりの良い花が咲いているところでよく見られる

花粉や花の蜜を食べる

今日のミツバチというとこの種のことを指すことが多い。女王バチは寿命が約3年と長い。

スジグロシロチョウ・・・それ、モンシロチョウだと思っていませんか?

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一見モンシロチョウっぽいが、違う種類のチョウだ

私たち日本人にとっては、モンシロチョウはとても馴染み深い蝶である。実際に市街地に近いところでも普通に見られ、アゲハチョウと並ぶ有名な蝶と言っても過言ではないだろう。
しかし私はこう言いたい。

 

「それ、本当にモンシロチョウですか?」

 

何を言っているんだと思われるかもしれないが、実はモンシロチョウによく似た蝶が、私たちの身近な所に存在しているのだ。


その名はスジグロシロチョウ

 

読んで字のごとく羽の脈が黒くなるのが特徴で、モンシロチョウと見分けるポイントもそこである。
飛び方がゆっくりなので、慣れれば飛んでいても見分けることができるが、多くの人はまず見かけたらモンシロチョウと勘違いしてしまうだろう。

 

私の肌感では、市街地を飛んでいるのはスジグロシロチョウの方が多く、モンシロチョウはもっと開けたところに多く生息している
また、雑木林を飛んでいるのはほぼほぼスジグロシロチョウで、雑木林でモンシロチョウを私は見たことがない。
なので、雑木林で白い蝶が飛んでいたら、私は間髪入れずにスジグロシロチョウだと判断する

逆に明るい開けたところでスジグロシロチョウを見かけたことは普通にある
なので、ややこしくしてるのはスジグロシロチョウの方である。

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こちらはお馴染みモンシロチョウ。羽の脈が色濃くは出ない

ちなみにもっと言うとスジグロシロチョウにはよく似た種類のヤマトスジグロシロチョウエゾスジグロシロチョウが存在する。これに関して私はあれこれ調べてみて、見比べてもみたが、正直違いがよくわからない

これらを見分けるのは東大に合格するよりも難しいのではないかと感じる

ただ、この両種は生息しているのが山地や海岸沿いの崖地等、特殊なところに生息していることが多いため、たとえ見分けが付かなくても、埼玉のベッドタウン在住の私が近所で見かけるのは、まあほぼ間違いなくスジグロシロチョウだろう

 

そんなスジグロシロチョウの個人的推しポイントは、裏羽付け根にちょこっとかかる黄色い模様だ。
スジグロシロチョウは一見すると全身白で、他の蝶に比べて配色が単純ではあるが、よくよく見るとこういったチャームポイントがあるのだから、なんとも魅力的である。

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ちょっと黄色掛かった個体。差し色の黄色が良い感じだ

身近な蝶で誰でも見覚えのある蝶。しかし、実はそれが勘違いの可能性もある

それほど昆虫の世界は奥深く、いろんな種類が存在するということなのだ。
街で白い蝶を見かけてもモンシロチョウだと決めつけずに、じっくりと観察してみよう。そうすればスジグロシロチョウの魅力にあなたも気付くはずだ。

 

スジグロシロチョウ

チョウ目シロチョウ科シロチョウ亜科

成虫は4月~10月頃にかけて出現

前翅長24mm~35mm

奄美諸島以南を除く全国に分布

主に雑木林周辺や耕作地に生息。住宅地周辺でも見られる

食草はアブラナ科タネツケバナやハタザオ等

モンシロチョウに似るが、羽の脈が色濃くなるのが特徴

 

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オンブバッタ・・・メスにおんぶにだっこなオスの生き様

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これぞまさしくオンブバッタ

私的にバッタの仲間は全体的に知名度が高く、子どもたちの間でも人気が高いように感じる。
トノサマバッタショウリョウバッタイナゴ知名度が高く、誰にでも馴染みがある者たちだ。
そして今回取り上げるオンブバッタも、中々有名な種類と言えるのではないか。

 

その名の通り、おんぶしている姿が有名で、草原を歩けばそこらじゅうで飛び跳ねているところを確認できる。
おんぶしている姿はさながら親子だが、実際は夫婦である。
おんぶされている小さい方がオスで、オンブバッタのオスは、メスに背負ってもらって移動するというなんともおんぶにだっこな状態になっている。
たまに、「小さっ!?」と思うようなヤツもいるのだが、幼虫かと思って注意深く観察しても羽が十分に伸びた成虫なので、オスはなんとも頼りない見た目をしている。

 

ちなみに本種はオンブバッタという名前が付けられているが、実はトノサマバッタショウリョウバッタも、それどころか大抵のバッタの仲間は、交尾をする時はおんぶ状態になる。そう考えると、なんとも適当に命名されたような気がしないでもない。
まあおそらくは、おんぶしている光景を他のバッタよりもよく見かけるから名付けられたのだろう。

 

実は他のバッタよりもしぶといとも感じている。
トノサマバッタショウリョウバッタは、草を刈ってしまうと途端に数を減らしてしまうのだが、オンブバッタは、草を刈った近所の河川敷でもかなりの数が見つかる
なんなら住宅街ど真ん中のウチの玄関先にもいたことがあるので、多少の草があればなんとかなるのではないかと感じている。

 

ショウリョウバッタとフォルムはよく似ているが、そもそも大きさが全然違うし、ショウリョウバッタは飛ぶ時に「キチキチキチ」と音を鳴らすので、見分けるのは容易である。
個人的にはショウリョウバッタは、日本最大のバッタであるが故にゴツくて、サイズの小さいオンブバッタの方が、かわいくて親しみやすさを感じる。

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ショウリョウバッタ。見た目はオンブバッタの親玉風情だ。

擬態能力が高く、姿形はまるで芝生の草そのもの。後ろ足をコンパクトに折り畳むことで、バッタ特有の後ろ足の特徴をうまく隠しており、より草と一体化している。
トノサマバッタなんかは不用意に近付くとすぐに逃げてしまうが、オンブバッタは草にでもなりきっているつもりなのだろうか、近付いてもあまり逃げず、じっとしていることが多い
まあもっとも、ガサガサと草むらを歩けばピョンピョンと飛び出してくるため、我々人間が見つけることは容易である。

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こうなるとどこにいるのか簡単にはわからない

なんとも小さく、健気に草になりきっているオンブバッタは、他のバッタのようなかっこよさや飛翔力ではなく、かわいらしさで勝負している。
どのバッタの魅力も、甲乙付けがたい素晴らしいものなのだ。

 

【オンブバッタ】

バッタ目バッタ科

成虫は7月~11月頃にかけて出現

体長はオスが25mm前後、メスが42mm前後

日本全土に分布

明るい草地等に生息

イネ科等、幅広い植物を食べる

メスよりオスの方が小さく、おんぶされているのはオスである。

 

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コアオハナムグリ・・・厳選しなくても出る色違い

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ニラの花に来たコアオハナムグリ

昆虫を探しに繰り出す時、やはり花が咲いている所は外せない。チョウハチなど様々な昆虫が集まってくるいわば楽園だ。
そんな楽園に、一見するとハチやアブっぽい黄金虫が飛んできたら、それはきっとコアオハナムグリだ。

 

個人的感覚だと平野部から山地までどこにでもいるハナムグリ中でも最も普通種と言って良いのではないだろうか。普通種らしく北海道から南西諸島まで幅広く生息し、成虫が見られるのも春から秋と長い
小さく知名度も低いので目立たない存在だが、かなり身近な昆虫あることは間違いない。

 

コガネムシの仲間というと多くの人が黄金のメタリックなボディ想像すると思うが、コアオハナムグリのカラーリングは艶消しグリーンだ。
よく見ると表面に細かい毛が生えていて、とことんマット仕様にこだわっている。こうした細かい毛が生えている点も、ハチやアブに見えるポイントだ。
花をよく訪れるコアオハナムグリは、この細かな毛が花粉で粉っぽくなっている様子をよく見る。

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拡大すると黄色っぽい毛が生えているのがよくわかる

ちなみにハナムグリの漢字は「花潜り」と書き、文字通り花に潜るようにしている様子から名付けられたというわけだ。

コアオハナムグリも例外ではなく、花に潜っている様子をよく観察できる

また、樹液に来ることもある私は樹液ではほぼ見たことがないのだが、カブトムシやクワガタムシ、チョウなどに気をとられて、いることに気付いていないのかもしれない。

幼虫はコガネムシの仲間らしく、朽ち木や腐植物等を食べる

 

花粉を媒介する存在として、重要な役割を果たしているのは確かだが、花粉を食べる際に大あごで子房を傷つけてしまうため、果樹園の人からすると害虫という位置づけになってしまう。実はコガネムシの仲間は、一般的に悪い印象で語られることはあまりないが、農作物の害虫されているものが多く、成虫が葉を食したり、幼虫が草の根を食したりするために、農家さんの悩みの種となっている。

 

前述の通り、艶消しグリーンをしているコアオハナムグリだが、騙されてはいけないのは、茶色っぽい色の輩も存在するという事だ

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茶色いがれっきとしたコアオハナムグリ

 そんなこととは露知らず、はじめて茶色いヤツを見つけた時に、何か新種がいるぞ!」とテンションが上がった事を思い出すが、なんてことはないコアオハナムグリの色違いであった。
ポケモンの色違いであれば、出現率は中々に低いが、コアオハナムグリの色違いは割とよく見かけるので、別段珍しいというわけではなさそうだ。

 

それでも花に必死に頭を突っ込んでいる姿は中々にかわいいものである。それはグリーンだろうが茶色だろうが変わることはない。

花が咲いているところがあったら、ぜひとも目を凝らして、コアオハナムグリを探してみてほしい。

 

コアオハナムグリ

甲虫目コガネムシハナムグリ亜科

成虫は4月~10月頃にかけて出現

体長10mm~16mm

北海道から南西諸島にかけて分布

日当たりの良い草原や雑木林周辺等に生息

幼虫は朽ち木や腐植物を食べる

花の周辺をちらちらと飛んでいる。大きさ的にハチやアブに見えることもある。

ヒメジャノメ・・・特徴的な目玉模様であなたを見ている!?

林間のヒメジャノメ。比較的ゆっくり飛んですぐ止まる。

河川敷や雑木林の日だまりなんかを歩いていると、茶色い蝶がピョンピョンと飛んでいる。よくいるヒメウラナミジャノメよりなんだかひとまわり大きかったら、それはきっとヒメジャノメだ。
ヒメウラナミジャノメに比べたら数は少ないが、いろんなところでお目にかかるいわゆる普通種である。

 

ずっと飛び続けているということはあまりなく、少し飛んでは止まり、飛んでは止まりを繰り返していることが多い
写真を撮りたい私からしたら、なんともありがたい蝶である。

 

コジャノメとよく似ているが、コジャノメはより暗い所を好み、そのせいか知らないがヒメジャノメよりも暗い色をしているので、慣れれば飛んでいるところを見ても見分けることができる。

コジャノメ。ヒメジャノメとよく似ているが、明らかに色が暗い

ところで私がいつもなんとも言えない気持ちになるのが、ヒメジャノメとコジャノメの名前の付け方である。

ヒメジャノメはジャノメチョウよりも小さいジャノメチョウだからヒメジャノメ。コジャノメはジャノメチョウよりも小さいジャノメチョウだからコジャノメ・・・ってどちらも同じとはこれいかに。どちらが先に命名されたのか、調べてもわからなかったのだが、もう少しひねった名前の付け方をしてもよかったのではないかと思わなくもない。

 

蝶の仲間ではあるが、普通の人が飛んでいるのに遭遇したら、まず蛾だと勘違いしてしまうだろう。それくらい目立たない要素満載で、かつ普通種という微妙な立ち位置に立たされているのがヒメジャノメだ。

ただ、私はこの場を借りてよく見てくれと訴えたい。この目玉模様のワンポイントの美しさよ。まさに蛇の目蝶の名前に恥じない、立派な模様だと思わないだろうか。

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特徴的な目玉模様。なんだか見られている気分だ。

この目玉模様だが、なんでわざわざこんなものを付けているのだろうかと疑問に思うが、どうもこれがあることによって、身を守れる確率が上がるらしい。
なんでも捕食者は、目のある方を頭だと勘違いするために、羽の目玉模様を目掛けて攻撃するという算段なのだ。そうすれば、羽が欠けるだけで、逃げ切れる可能性が上がるというわけである。
また、目玉模様で天敵の鳥を驚かすと言った効果もあるようだ。
ただなんとなく付いている模様ではなく、きちんと計算された上で身に付けているというのだから、なんとも驚きである。

 

そんな武器を纏いながら今日もヒメジャノメは飛んでいるわけで、ちょっと見た目が地味だからと言ってスルーせずに、じっくりと観察してほしい。
きっとあなたも、ヒメジャノメの魅力に気付くはずだ。

 

【ヒメジャノメ】

チョウ目タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科

成虫は5月~10月頃にかけて出現

前翅長18mm~31mm

北海道渡島半島から九州にかけて分布

河川敷や雑木林周辺のやや明るいところに多く生息

食草はイネ科やカヤツリグサ科の各種植物

コジャノメに似るが、比較的明るいところを好む。

 

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