昆虫散歩道

昆虫をあれこれ撮影してあれこれ語ります

キリギリス・・・有名だけど意外と姿を目撃する者は少ない?

草むらの鳴く虫代表。夏って感じがするよね

アリとキリギリスといえば、知らない方がいないくらい有名な寓話だ。
働き者のアリと怠け者のキリギリスを対比的に描いた物語はあまりにも有名なお話といえよう。
さて今回はそんなキリギリスをご紹介していこうと思うわけだが、果たしてキリギリスは本当に怠け者なのだろうか?そんなキリギリスの真実に迫っていこう。

 

知名度だけであれば抜群のキリギリスだが、実際に見たことがある方は案外少ないのではないか
その要因としては、そこまで身近な存在でない事が上げられる。私は埼玉南部のベッドタウンに住んでいるが、周辺でキリギリスはまず見かけない。ある程度自然が豊かなところまで赴かないと生息していないのが、キリギリスの実状といえよう。

また、基本的に背丈が高めの草むらの中に潜むように暮らしているため、中々目に止まる所に現れない。鳴き声は聞こえど、姿を見るにはかなり注意深く草と草の間を探さないとダメなので、家の近くに生息地があるような方でも、昆虫に興味がなければ素通りしてしまうことだろう。 

基本は草むらの中の方。何見てんのよ!?

体つきはかなり立派で、他のキリギリス科の仲間と比較してもさすがの貫禄といったところか。その体つき故に草の隙間をのそのそ歩いてることが多く、草の先端に行くと草が重さに耐えられず、結局元の位置に戻ってしまうというかわいらしい様子もよく目撃する。

 

鳴き声は短めに「ギィー」と鳴き、次のギィーまでに「チョン」という謎の短い声が入るという、ちょっと独特な感じになっている。
アリとキリギリスではキリギリスは何も考えずにただ楽しく歌を歌って過ごしているという設定になっているが、実際はそんなに気楽なものではない。キリギリスが鳴く主な理由は、無論メスへのアプローチのためである。彼らは次世代に子孫を残すために、頑張って鳴いているというわけで、種の存続にとって極めて重要な役割を果たしていることになる(セミ同様鳴くのはオスだけである)
ちなみに働きアリの中には2割ほど働かずにサボっている者がいるらしいので、必ずしもアリの方が働き者のというわけでもない(これにはちゃんと理由があるのだが、今回はキリギリス回なので、また別の機会に語ってみようと思う)

 

メスは鳴く機能がない分、お尻に産卵のための管(まんま産卵菅という)が付いており、故に雌雄の見分けは容易だ。メスは鳴かないので、鳴き声である程度場所がわかるオスに比べて、見つける難易度がかなり高くなっている。

メス。お尻に産卵管がついているのですぐメスだとわかる

実は他の昆虫を襲って食べる肉食性の一面を持ち、セミなんかも補食する事があるほどである(植物を食べることもあるので、正確な食性は雑食である)
キリギリスの足はトゲトゲになっているのだが、これは捕らえた獲物を逃がさないためのものらしい(怖ぇ・・・)

 

そんなキリギリスであるが、実はニシキリギリスヒガシキリギリスという、完全な別種に分けられるというのはあまり知られていないところだろう。
ニシキリギリスは近畿から西に、ヒガシキリギリスは青森から岡山に分布しているようで、故に、私が埼玉県で撮影したキリギリスは、正確にはヒガシキリギリスということになる。
さらにもっと言うと、正確にはもっと細かく分けるのがマストらしいのだが、ここまで来るともう私が理解できる領域をはるかに越えてしまっているので、特に語れることもない(おいおい)

 

とまあ、キリギリスが怠け者でないことがわかったところで(無理矢理繋げてやがる)やはり思うのはキリギリスは見かけるとテンションが上がるということだ。だってなんか立派だし。体高があるってだけでなんか興奮するし。
そして、真夏の真っ昼間に鳴いているので、夏の風物詩でもある。
セミとはまた違った夏の風物詩を堪能することが、何よりの楽しみなのである。

 

【キリギリス】

バッタ目キリギリス科キリギリス亜科

成虫は7月~11月頃にかけて出現

体長30mm~40mm

本州から九州にかけて分布

日当たりのいい草原や河川敷等に多く生息

様々な植物や昆虫を食べる

日本を代表する鳴く虫。草の中にいるので姿を見るのが難しい

シオヤアブ・・・かわいい顔して昆虫界最強クラスのアサシン

林縁でおなじみシオヤアブ。目がカービィっぽい

時に昆虫という存在は、人々に嫌われることも珍しくない。台所の使者であるゴキブリや吸血鬼のカ。悪臭発生機のカメムシ等は、常に駆除の対象となるような嫌われ昆虫たちである。
そして、アブも人の血を吸い、しかもその瞬間がとてつもなく痛いので、嫌われ昆虫の仲間入りをしていると言えよう。
しかし、そんなアブの中で、なんともかわいらしい顔つきをしているのが、今回紹介するシオヤアブである。

 

まあまずは画像をじっくり見ていただきたい。なんともかわいい目をしていると思わないか?
この顔つきはまるであの大人気キャラクター、カービィのようなルックスだ。
しかもお尻に白いポンポンが付いているという、なんともかわいいに寄せた作り。ちなみに白いポンポンが付いているのはオスだけで、メスは先細りのお尻になっている

メスはお尻の白いポンポンがない

そんなアブっぽくないかわいらしい見た目で、なんとも平和な昆虫なのかと思ったそこのあなた。あなたはまだシオヤアブの本性を知らない。
実はシオヤアブは、昆虫界最強という称号を得ている。それはなぜか。ひとえにシオヤアブが、獰猛なハンターだからである。
そうはいってもシオヤアブの体長は3cmほど。昆虫界最強と名乗っていいほど強そうには見えない。ところがそんな体格でありとあらゆる昆虫を補食する。時にはトンボやスズメバチ、カマキリ等、いやいやパワーバランス逆だろうとツッコミたくなるような者まで、獲物として捕らえてしまう
ちなみにカメムシテントウムシ等、臭いで撃退する系の面々も、シオヤアブにとっては関係なし。例えるなら、スポーツマンNo.1決定戦室伏広治状態である。
しかもシオヤアブがすごいのは、小さい体格にも関わらず、毒等の飛び道具を使うことはなく、体のどこかが伸縮したり、罠を仕掛けたりすることなども一切ない。そう、己の体を目一杯使って狩りをするというわけだ。

 

基本的な狩りの仕方は、適当なところで待ち伏せをして近くを通りがかった者に襲いかかって口吻をぶっ刺して仕留めるという非常にシンプルなもの(やり口がマフィアのそれと一緒)
その狩りの方法故に目がとても良いようである。
また、その獰猛な性格故に、フィールドワークをしていれば、お食事中のシオヤアブに会うことは難しくない。

お食事中のシオヤアブ。よく見る光景である

逆光でアサシン感マシマシ

ただし、一応補足しておくと、シオヤアブが強いのはあくまで奇襲の場合であって、正面からやりあうと強くないという意見も多々ある。まあサイズがサイズだけに、カマキリ等とやりあったら普通に負けそうな気はする。

 

さて、ここで皆さんも気になるだろう。そんな獰猛な性格のアブ。それはそれは危険なのではないかと。
ところがどっこい、シオヤアブは自ら人間を襲うことはない、大人しいアブである(いや、大人しいは語弊があるか?)
要するに人間を襲うアブは血液を欲しているアブであり、シオヤアブは人間の血液などまったく興味がないので、襲いかかってくることなどないということだ。
ただし、無理やり捕まえたりすると刺してくることがあるようだ。しかもめちゃくちゃ痛いらしい。どれくらい痛いかは刺されたことがないのでわからないが、興味がある方は捕まえて確かめてみよう!

 

とまあ、自ら危害を加えてくる系でないとわかったところでシオヤアブを見てみると、かわいい顔がとても愛らしい存在である。
そして、顔に似合わず昆虫界最強というギャップ萌え。こんなに魅力的な昆虫も中々いない。
ぜひともシオヤアブを見つけて、そのギャップに魅了されていただきたい。

 

【シオヤアブ】

ハエ目ムシヒキアブ科シオヤアブ亜科

成虫は6月~9月頃にかけて出現

体長23mm~30mm

北海道から沖縄にかけて分布

林縁の日当たりの良い場所等に多く生息

幼虫はコガネムシの幼虫を捕食する

他の昆虫を狩る獰猛なアブ。オスのお尻の白い毛が特徴的。

 

mushisagashi.hatenablog.jp

マメコガネ・・・海外でもブイブイいわせるジャパニーズ・ビートル

茶色い羽のマメコガネ。飛んでいるところはミツバチっぽい

参考までにコガネムシ。すごいメタリック

コガネムシといったらメタリックなカラーリングでおなじみの甲虫だ。その輝かしいルックスから、金持ちという印象すら持たれているほどだ(若い世代には伝わらなそう)
しかし、一口にコガネムシといっても実はかなりの種類が存在し思い思いの形態や生態をしている(ちなみに、広義にはカブトムシもコガネムシの仲間である)
そんなコガネムシの中で今回は、世界で暴れまわる暴君をご紹介しよう。その名もマメコガネである。

 

しかし、世界で暴れまわる暴君なのにマメコガネとは、なんとも拍子抜けな名前である。
大きさは1cm前後と、普通のコガネムシと比べるとかなり小さく。飛んでいる姿はまるでミツバチのようなかわいらしい感じだ。
茶色い羽がトレードマークで、コガネムシと比べて色彩は地味な印象を受ける。

おいおい、暴君要素が全然ないじゃないかと思ったそこのあなた。マメコガネが本領を発揮するのはこれからである。


マメコガネがなぜ猛威を振るっているのかと言えば、その食性に原因がある。
マメコガネマメ科の植物や、ブドウ、クヌギ等様々な植物を食する。要するにマメコガネは、重大な農業害虫ということなのだ。
また、幼虫は土の中に潜って植物の根を食べるため、農作物を枯らしてしまうこともある。すなわちマメコガネは、大人から子どもまで完全無欠の害虫ということになるわけだ。

実はコガネムシの仲間には、マメコガネ同様成虫が植物の葉を食べ、幼虫は地中で根を食べる種類が多い。ということは、その分害虫とされる種類も多いということだ。

 

農作物にとっては看過できない天敵であるということはわかった。では一体、世界で暴れまわる暴君とはどういうことなのか。勘の良い方はすでに気付いているかもしれない。
マメコガネは日本在来種の昆虫なのだが、20世紀初頭、貿易の荷物に紛れてアメリカに進出爆発的に分布を広げ、アメリカ中の果樹に大打撃を与えてしまったのだ
アメリカではジャパニーズ・ビートルと名付けられ、恐れられる存在となった。

 

しかしマメコガネを完全に防除するのは難しいと言わざるを得ない。
このマメコガネ。様々な植物を食するからかかなり数が多い。ちょっと草が茂ってるところに行くと普通にたくさんいるため、仮に畑を中心に駆除を行ったとしても、その辺の草地で暮らしていけるたくましさがある
そして、マメコガネの食指はヨーロッパにも及ぶようになり・・・

生息地ではあちこちでアチチアチチ

そんなこんなでマメコガネは害虫なので、ネガティブ要素満載の記事になってしまっているわけだが、少しくらいマメコガネのポジティブなところを書かないと怒られてしまいそうだ。
マメコガネのいいところはひとえにあれだ、まあなんというか、要するにその、なんかかわいらしい。そう、なんかかわいいだろう!ちっちゃなコガネムシでなんかかわいいのだ!そうだそうだ!

 

まあなんか無理やりまとめてしまったが、生態によって害虫だと決められてしまうのも、なんともやるせないような気がしなくもない。マメコガネはこの生き方で長い年月を過ごしてきたのであり、それは別に悪というわけではないのである。 
心を広く持ってマメコガネを見ると、なんともかわいらしい存在だ。
マメコガネを探して、色々思いを馳せてみてはいかがだろうか。

 

マメコガネ

甲虫目コガネムシスジコガネ亜科

成虫は5月~9月頃にかけて出現

体長9mm~13mm

北海道から九州にかけて分布

農耕地や日当たりの良い草原等に多く生息

幼虫は土中で植物の根を食べる

小型のコガネムシ。国内のみならず欧米でも害虫として猛威を振るっている。

コミスジ・・・林縁を滑空しながら飛び回る三本線

身近だがマイナーなコミスジ。胴体の光沢がすごい

4月も大方過ぎ去ってGWが近づいてくる頃。ふわりとまるで滑空するように飛び回るチョウが現れる。それが今回紹介するミスジだ。

 

身近な所に生息しているチョウではあるのだが、一般的な知名度は低いチョウだ。
分類的にはタテハチョウ科のミスジチョウ属に属するチョウだが、そもそもミスジチョウというのが、昆虫に興味がない方にはほぼほぼ知られていない存在と言えよう

ミスジチョウの名前の由来は羽を広げたところを見るとわかりやすい。白い模様が三本線に見えるところから名付けられたというわけだ。


日本に生息するミスジチョウ属の仲間は、ミスジ以外は都市部近郊ではほぼ見ることがない上に、コミスジにしてもアゲハやモンシロチョウ等と比べると住宅街に出没する率が低いので、その辺りが知名度が低い要因と言えるだろうか。
それでもコミスジちょっとした雑木林や河川敷等を歩くとよく見かけるチョウなので、フィールドワークをすれば遭遇率の高いチョウだ。

 

ちなみに南西諸島に本種とそっくりなリュウキュウミスジという種類が存在するが、分布域が被っていないので、その辺りの知識があれば間違えるということはない。

 

前述の通り滑空するような独特な飛び方をするので、慣れてくれば飛び方で容易にコミスジだとわかる。
ちなみにコミスジのみならず、ミスジチョウの仲間は滑空するように飛ぶのが特徴である。

 

タテハチョウの名前の由来は羽を立てて止まるから「立て羽チョウ」というところから来ているのだが、ミスジは基本的に羽は立てずに開いて止まることが多い
他のタテハチョウの仲間は羽の裏面が枯れ葉ライクで保護色になっており、積極的に羽を立てて止まる理由があるのだが、ミスジの裏面は表面の黒を茶色にしたような感じになっているので、そこまで羽を立てて止まる必要がないのではないかと個人的には思っている。

裏面は茶色い感じになっている

参考までに同じタテハチョウ科のルリタテハの裏面。かなり枯葉っぽい

また、食性も他のタテハチョウの仲間の多くが好きな樹液や果実等よりは、花で吸蜜をする方が多いという貴婦人感溢れる一面ものぞかせるなど、タテハチョウ科でありながら、とことんタテハチョウとは一線を画そうとするチョウなのだ。

 

日の光が当たると胴体の光沢がキレイなのも中々ポイントが高い。身近な存在でもよくよく観察すると、こういった魅力を発見することが出来る点が、昆虫観察の魅力の1つと言えよう。

身近な存在でありながらあまり知られておらず、不遇な(?)チョウではあるが、その実、見た目や飛び方がおしゃれなチョウでもある。
緑が深くなってくる爽やかな季節に合わせて、コミスジと戯れるのも乙なものである。

 

【コミスジ

チョウ目タテハチョウ科イチモンジチョウ亜科

成虫は4月~10月頃にかけて出現

前翅長22mm~30mm

北海道から九州にかけて分布

日当たりのいい林縁等に多く生息

食草はマメ科の各種、ハルニレ等

白い三本線が特徴のチョウ。滑空するように飛ぶ。

アゲハ・・・これほど有名なチョウもいないであろう

日本のチョウといったらアゲハで決まり

アゲハ。それはもはや今さら私が説明するまでもない超メジャー昆虫であろう。
というわけで今回の記事はここまでまた来週・・・というのもあんまりなので、頑張って紹介していこうと思う。

 

アゲハ蝶は2001年にポルノグラフィティの6枚目のシングルとして発表された楽曲でオリコン最高・・・

 

茶番はさておき、まず形態的な話としては、皆さんも想像が付くところであろう。
大型のチョウで黒地に薄黄色の模様があしらわれた羽の模様はとても華やかだ。
後ろの羽にあるしっぽ(尾状突起)が特徴的で、これは他のアゲハの仲間にも見られる特徴である。

 

アゲハと表記されることが多いが、他のアゲハチョウの仲間とより区別しやすくするためナミアゲハと呼ばれることもある(ナミとはすなわち「並」であり、普通という意味である)

 

実は身近なところでは、アゲハとよく似ているキアゲハという別種が存在しており、知らない方だとその辺りの区別がつかないだろう。

キアゲハ。アゲハと双璧をなす存在だ

キアゲハは文字通りアゲハと比べると黄色がより濃く、存在感がある。色味が違うので慣れてくれば飛んでいるところを見るだけで見分けることができる。
確実な見分け方は羽の模様を見てもらえればわかる前羽の付け根の模様がアゲハは線のようになるのに対して、キアゲハは線がなく塗りつぶしのような感じとなっている
この2種類の見分け方は算数でいうところの九九くらい基本なので、皆さん必ず覚えるように(もっともこの2種類は中々止まらない系チョウなので、捕まえたりしないとじっくり観察するのは難しい)

両種の見分け方はこれでばっちり

アゲハは身近な存在で、住宅街でも普通に飛んでいるチョウなわけだが、それはひとえに、庭に植えてあるミカン科の木で幼虫が育つことが大きな要因だろう。
少し注意深く住宅街を歩くと、ミカン類の木を植えている家は結構多く、植木として人気な事がうかがえる。
そんな街の植木を活用して、アゲハは繁栄しているということだ。
特定の種類の植物でないとダメということもないので、手広く繁殖できるのも強みだ(逆に人里離れた所ではあまり見かけない印象がある)

 

また、幼虫に関してもおそらくチョウ界トップクラスの知名度を誇る存在であろう。
よく植木に産卵するので、子どもの頃に飼育したり自由研究の題材として取り上げた方も多いのではないか。
緑の体に独特の目玉模様があまりにもおなじみである。
危険が迫ると黄色の角(臭角と呼ばれ文字通り臭い)を出すことも有名だ

成虫だけでなく幼虫もかなりの知名度を誇る

やんのかこらぁ!あぁん!

そんな幼虫も小さいうちは鳥のフンのような色をしており、まさしく鳥のフンに擬態しているのではないかと言われている

若齢の幼虫。我鳥の糞ですよ

ちょっとマイナーな話をしておくと、アゲハは知覚できる色の範囲が広い昆虫と言われている。
昆虫は赤色が見えない者が多いのだが、アゲハはこの辺りもちゃんと識別できるようである
そのためか、アゲハはツツジヒガンバナ等、他のチョウがあまり吸蜜に訪れない赤系の花を好んで訪れる傾向がある
美しく咲く花を訪れるアゲハはやはり可憐で、これぞ昆虫観察の醍醐味と言えよう。

アゲハといったらツツジ。中々絵になる光景である

我々の暮らしの中にも当たり前のように定着しているアゲハ。
その姿は美しく、だからこそこれだけの知名度があるのだろう。
昆虫観察はアゲハにはじまりアゲハに終わる。皆さんも昆虫観察の第一歩を踏み出してみよう

 

【アゲハ】

チョウ目アゲハチョウ科アゲハチョウ亜科

成虫は3月~11月頃にかけて出現

前翅長35mm~60mm

北海道から南西諸島まで全国に分布

住宅街や公園、草原や耕地等様々な場所で見られる

食草はミカン科各種

日本を代表するチョウ。住宅街でも普通に生息している。

 

mushisagashi.hatenablog.jp

カノコガ・・・体に対して羽の面積が狭すぎやしませんか?

独特なシルエットのカノコガ。ガにしては羽の面積が狭い

一般的にガというと、地味な色をしたチョウのような風貌を思い浮かべる方が多いだろう。実際チョウもガも同じ鱗翅目に分類されるので、同じような風貌をしているのも納得というもの。

ところが中には、明らかにガじゃないんじゃないの?とツッコまれてしまいそうな者が存在するのも事実である。今回紹介するカノコガも、まさにそんなルックスをしているガだ。
 
細かく確認してみると、まず他のガと比べて、明らかに羽の面積が小さい
故に大きな羽をはばたかせて飛ぶガとは違い、ちらちらとなんともゆっくり飛んでいるので、明らかに羽にパワーが足りないような気がする。
 
また、そんな面積の小さい羽に反比例するように体が太いので、余計に飛ぶのが大変そうである。
よく見てみると体に黄色いラインが引いてありなんだかお洒落な装飾だ。本来チョウやガというのは、羽の模様で魅せてくれるものだが、体の模様が目を引く者は中々いない。
ちなみにメスはオスに比べて体がさらに太いので、より存在感がある。

こちらはメス。明らかに体がオスより太い

裏から見るとサイドにも黄色い斑点があるのがわかる
そんなカノコガのシルエットは、ガというよりもハチと言った方が信用してくれそうな感じがする。実際カノコガは、ハチの仲間に擬態をしていると言われており、そう言われるとその独特なシルエットも、なんだか納得というところである(まあぶっちゃけ、そこまで似てな、、、おっと誰か来たようだ)
 
ところでカノコガはなぜカノコガという名が付けられたのかこれはとてもシンプルで、羽の模様が鹿の子(いわゆるバンビ)の模様のようだから「鹿子蛾」という名になったというわけだ。
言われてみると確かにバンビっぽい羽の模様をしていると感じるが、中々そこに着目するのもすごいというかなんというか。明らかにその独特なフォルムの方が和名にしやすそうな気がするが、しかしカノコガという和名は個人的にはセンスを感じるので、良い着眼点なのではないだろうか。
 
そんなカノコガは昼行性であり、夜はちゃんと寝たい派の私にとっては優しい種類である。
もっと言うとカノコガは、昼間はそんなに活発ではなく、早朝の方が元気だと感じる。なぜそう感じるのかと言うと、少年時代に早起きをしてカブトムシを捕りに出かけると、決まってたくさんのカノコガがちらちらと飛んでいたからだ。
朝露に濡れたサンダルとカノコガ。それが私の少年時代の思い出なのである。
ということは、カノコガが朝早い方が活発というのも、私の思い出補正が入っているような感じがする(おいおい)
もちろん真昼間に飛んでいるところを目撃したこともあるし、この辺りは時期や地域によっても違うのかもしれない。みなさんの出会うカノコガはどうだろうか?
 
私の子ども時代を彩ってきたカノコガ。幼虫はシロツメクサやギシギシ等、その辺によく生えている草を食べるために、結構いろいろなところで目撃するガでもある。
独特な造形のカノコガを探して、昆虫のデザインの奥深さに触れてみよう。
 
【カノコガ】
鱗翅目ヒトリガ科カノコガ亜科
成虫は6月~8月頃にかけて出現
開帳30mm~37mm
北海道から九州にかけて分布
草原や雑木林の林縁等に生息
食草はシロツメクサタンポポ、ギシギシ等
独特なデザインのガ。ちらちらとゆっくり飛ぶ。

オオゾウムシ・・・かなり立派な体と象の鼻

これが本物のゾウムシっちゅうもんよ!Byオオゾウムシ

ゾウムシと聞いて話ができる方というのは、ある程度昆虫好きだろう。興味がない方からしたら、ゾウなのかムシなのかはっきりしろと言ったところか。
しかし、オオゾウムシを見ればなぜそのような名前になったかが理解できるだろう。見事にゾウさんチックなルックスだ。

 

ゾウムシの仲間は実は身近な所に結構生息している。雑木林や草原等、ちょっと自然があり、昆虫が生息していそうな所に赴けば大抵見かけることができる。
しかし、昆虫に興味がない方にしてみたら、ゾウムシなんて見たことないわと言う方がほとんどだろう。
それもそのはず、ゾウムシの仲間は1cmにも満たないようなとても小さい種類が多いので、かなり目を凝らさないと見つけられないというわけだ。
しかもあまり飛ぶことがないので、余計に目立たない存在と言える。

ゾウムシの世界は結構ミクロ。写真のカシワクチブトゾウムシは大体5mmほど

そんな中でオオゾウムシは、他のゾウムシとは一線を画している。
体長は2cm前後と和名の通り他のゾウムシよりもかなり大きい(それでもそんなに大きくないけど)
ゾウムシが小さいと思っていた私は、オオゾウムシをはじめて見たときに、あまりにもゴツい体つきに興奮を隠すことができなかった。そして、これこそが本物のゾウムシか!と感嘆したものである。
ちなみに、かつては日本最大のゾウムシだったが、現在は外来種ヤシオオオサゾウムシ(オが3つ並んでいるが、誤植ってわけではありません)に逆転されてしまったという、悲しい過去を持つ。

 

さまざまな所に生息している普通種と記載されている図鑑が多いが、個人的には普通種と呼べるほど見かける種類ではないと感じている
この辺り、図鑑の「よく見る」や「あまり見かけない」等の記載は住んでいる地域の気候や環境等によって変わってくるものなので、あくまで参考程度に留めておくのが吉だろう(無論それはこのブログでも同じである)

 

樹液や灯火も訪れるので、夏のカブトムシ採集の際に目撃することもしばしばある。
飼育方法もカブトムシとほぼ同じでOKで、かつ年単位で長生きしてくれるので、何かと塞ぎがちな昨今において、きっとあなたの良いパートナーになってくれるだろう。

 

幼虫は木の内部に潜んで木材を食べるので、林業等木材を扱う場面では害虫とされることがあり、関係者の方からしたら要注意昆虫ということになる
成虫は前述の通り樹液に集まるが、飼育下では様々な物を食するグルメなので、実際は樹液以外にも色んな物を食べている可能性がある。

 

オオゾウムシはゴツい体の持ち主である。そのため自らの防御力に自信があるのか、捕まえたりすると死んだふりをしてやり過ごそうとする習性がある。その演技力たるや、ドラマの死体役の方も真っ青のものであり、モードに入るとまったく動かなくなってしまう。時には数十分間動かないこともあるようで、とてつもなく迫真の演技である。俳優の卵の方は、1度オオゾウムシに演技を教わることをおすすめする。
もっとも甲虫の中には、死んだふりを得意としている者は結構存在するので(テントウムシ等)オオゾウムシの専売特許というわけでもない。

捕まえると死んだふり。甲虫の仲間では割とよく見られる戦略だ

最後の最後に上げて落としてしまったわけだが、オオゾウムシはかなり独特な見た目で魅力的な存在だ。
ゴツい見た目に似合わず大人しく飼育もしやすい等、親しみやすい要素がたくさんある。
防御に全振りしたオオゾウムシを果敢に観察してみてはいかがだろうか。

 

【オオゾウムシ】

甲虫目オサゾウムシ科

成虫は5月~9月頃にかけて出現

体長12mm~24mm

北海道から九州にかけて分布

雑木林やその周辺に多く生息

幼虫は倒木等の内部で木材を食べる

長い口吻が特徴的な大型のゾウムシ。捕まえると死んだふりをする。