蝶の仲間は飛んでいることが多いので、止まらないと何の種類か判別出来ないということが多々ある。例えば小さな青いシジミチョウは至るところをちらちらと飛んでおり、基本的にヤマトシジミと考えてもらって差し支えないが、その中に別種が混ざることもしばしばある。そのうちの1種がツバメシジミだ。
ヤマトシジミとルリシジミは、正確に判別するのに苦労するが、ツバメシジミは止まってしまえば見分けるのはお手のものである。ツバメシジミには後羽の先にオレンジの模様があり、そこからしっぽが生えているからだ。
このチャーミングなしっぽは、ただでさえ小さくてひらひらしたシジミチョウのかわいさを、より一層引き立ててくれている。
このしっぽがツバメシジミという名前の由来になっているのだが、専門用語で言うとこのしっぽは尾状突起(びじょうとっき)と呼ばれている。どうやらこれがあると天敵にこちらを頭と思わせる効果があるらしい。そうすることで仮に襲われても、羽だけが欠けて助かる確率が上がるというのだ。
シジミチョウの仲間は時折後羽をすりすりしていることがあり、それが超絶かわいいのだが、実は尾状突起を動かすことによって、頭が動いている様を演出しているという。
「かゆいのかな?」と見ていた私が馬鹿らしくなる、見事な生存戦略だったのだ。
そんなツバメシジミの食草は、四つ葉のクローバーでおなじみのシロツメクサというのだから、かわいいキャラ作りに余念がない。
もっともシロツメクサ以外にも、マメ科の植物を広く食草にしているため、シロツメクサでなければダメという偏食家なわけではない。
食性の広さもあってか、市街地の近郊でも見られる普通種となっている。
とはいえ肌感としては、ヤマトシジミに比べるとはるかに数が少なく感じる。そのため見つけると、なんだかレアな蝶を見つけ出した錯覚に陥って、テンションが上がってしまう。(こう言うと語弊があるが、ヤマトシジミが多すぎるだけであって、実際に数が少ないというわけではない)
実際羽を広げたら、きれいなスカイブルーだし、裏羽も白を基調とした黒点と、ワンポイントのオレンジが可憐で、見ていてとても楽しい。(ヤマトシジミ等と同様、スカイブルーはオスだけで、メスは農紺のやや地味な色合いをしている)
後、地味にポイントが高いのが、触覚が縞模様だというところだ。なんてことはないのだが、これがなんともかわいい。
細部までこのようにかわいい演出に余念がないのだから、まったく感服せざるを得ない。
こんなにかわいらしい蝶が身近にいるのだから、探しに行かない手はない。
今すぐ家を飛び出して、ツバメシジミに会いに行こう。
【ツバメシジミ】
成虫は4月~10月頃にかけて出現
前翅長9mm~19mm
北海道から九州にかけて分布
日当たりの良い草地に生息
食草はマメ科の各種植物
飛んでいるところをヤマトシジミやルリシジミ等と見分けるのは難しい。止まっていれば尾状突起で容易に判断できる。