ミツバチはおそらく日本で最も有名な昆虫の一種で、様々な物語や歌の題材にもなっているいわば超が付くほどの著名人、もとい著名蜂だ。
日だまりのいいお花畑にでも赴けば、右に左に飛び回り、せっせと働いている姿をよく目にする。
性格はとても温厚でめったに人を刺すことはなく、1度刺すと死んでしまうことも有名だ。
実はよく見かけるミツバチは、多くがセイヨウミツバチというのも、もはやお馴染みではないだろうか。
日本にいるミツバチは大きく分けてニホンミツバチとセイヨウミツバチに分かれており、元々日本で暮らしていたのはもちろんニホンミツバチ。セイヨウミツバチは文字通り西洋からの移住組だ。
セイヨウミツバチの方が多くハチミツが取れるという商業的な観点から、養蜂業ではセイヨウミツバチが多く利用されており、ニホンミツバチが利用されることは少ない。
花の受粉の一助にもなることから、農家さんが農作物の受粉のために養蜂することもある。なんでも知り合いの農家さんに聞いた話では、人間が自らの手で受粉させるよりも 蜂が受粉した方がおいしい農作物ができるらしい。いやはや、我々の暮らしの役に立ちすぎな存在である。
見た目的にはより黒が多く小柄なのがニホンミツバチ。黄色が多いのがセイヨウミツバチとなっている。(正確には羽の脈で見分けるが、説明が難しいのでまたいつか語ってみることにする)
ニホンミツバチは天敵のスズメバチに対して、総出でスズメバチを包み込み蒸し殺す(いわゆる蜂球〔ほうきゅう〕)必殺技を駆使して撃退するという、かわいらしい見た目からは想像も出来ない、なんとも恐ろしい所業を繰り広げるのだが、元々スズメバチがいない地方出身のセイヨウミツバチは、対抗手段がなく巣を全滅させられてしまうという。
そうした天敵の存在もあり、実はセイヨウミツバチは日本では野生化しないと言われている。つまりその辺を飛んでいるセイヨウミツバチは、どこかで飼われているいわば家畜ということである。
ところが近年、日本に住み着いたセイヨウミツバチは、ニホンミツバチと同じように、蜂球を作って対抗するものがいると言われている。ニホンミツバチに教わったのだろうか。いやはや大した適応力である。(ただしセイヨウミツバチの蜂球は、温度がスズメバチの致死温度まで上がらず蒸し殺せないらしいので、いずれにせよ茨の道ではある)
また、これも有名な話ではあるが、いわゆる働き蜂はすべてメスである。
ではオスは何をしているのかというと、女王蜂と交尾をするためにあちこち飛び回る。
1度交尾をすると死んでしまうらしく、まさに一斉一代の大勝負と言ったところだ。
また、ハチの針は産卵菅が変化したものなので、オスはそもそも針を持っておらず、要するにオスが出来ることは、メスと交尾をすることくらいしかないと言っても過言ではない。
子孫を残すためだけに特化するというなんともすごい進化をしたものである。
巣という家を作り社会を形成するセイヨウミツバチ。ただそこら辺を飛んでいるだけのように見えるが、その裏では様々なドラマが繰り広げられている。
花の周囲を賑やかに飛んでいるハチたちに想いを馳せてみると、なんとも不思議な気持ちになるものである。
【セイヨウミツバチ】
ハチ目ミツバチ科
ほぼ1年中見られる
体長12mm~20mm
北海道から九州に分布
日当たりの良い花が咲いているところでよく見られる
花粉や花の蜜を食べる
今日のミツバチというとこの種のことを指すことが多い。女王バチは寿命が約3年と長い。