昆虫散歩道

昆虫をあれこれ撮影してあれこれ語ります

ナツアカネ・・・子どもの頃に陥った盛大な勘違い

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成熟して真っ赤になったオス。アキアカネと違って全身が赤くなる

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成熟したメス。背中だけが赤くなる

赤とんぼと言ったら日本の秋の代名詞である。実際秋にはあらゆるところで見られるので、そう感じる人が多いのは当然と言ったところだ。
ところがそんな赤とんぼに、夏の名前を冠したものが存在する。それがナツアカネだ。

 

ナツアカネは日本の赤とんぼ界において、アキアカネと双璧を成す存在であることは言うまでもないが、同じような姿形をしているので、はじめの内は見分けるのがとても難しい。

アキアカネの記事の時にも見分け方の説明をしたのだが、その時と同じ画像を貼っておくので、迷った時はこちらを参考にしていただきたい。

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胸部の模様が見分けるポイント。しかし中々見分けるのは難しい

ちなみにオスは全身が赤くなるので、慣れてきたら色味だけでナツアカネだと見分けることができるようになる。

アキアカネとの生態の違いとしては、アキアカネが夏になると高山帯に避暑に繰り出すのに対して、ナツアカネはそのような大規模移動は行わない
そのため真夏でも平地を普通に飛んでいる。この辺はさすが名前に「夏」が付いているだけのことはある。

 

さて、そんなナツアカネであるが、私は少年時代とんでもない勘違いをしていた
曲がりなりにも昆虫好きの少年だった私は、当然赤とんぼにアキアカネとナツアカネがいることは知っていた。
そして、その名前から夏に見られるのがナツアカネ。秋に見られるのがアキアカネだと勝手に思っていたのだ。


実際アキアカネは夏に高山帯に避暑にいくので、秋に見られるというのは正しい。しかし、ナツアカネは夏から秋、それも晩秋から初冬くらいまで見られるのだ。
なんなら私の肌感では、ナツアカネの最盛期は秋だ。真っ赤に染まった成熟したオスを見られるのも秋が多いので、ナツアカネとは名前に偽りありと言ったところである。
とにかく少年の時はそんな風に思っていたので、所謂誤同定をたくさんしていたことだろう。(もっとも私が暮らしていた地域は、ナツアカネはあまり見られないので、あながちその認識でもよかったかもしれない)

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未成熟のメス。赤というよりオレンジに近い

このナツアカネという名前だが、以前は夏に見られる未成熟の赤くない個体を、種類関係なく一緒くたにナツアカネと呼んでいたものが、正式に和名になったものらしい。
そう考えると昔はこの辺がかなり大雑把で、現在になってかなり見直しが図られたというのが垣間見える。
もっとも昆虫というのは、同種だと思ってたものが何種類かに分けられるといったことが割と日常茶飯事的に起きているので、今後もこういった事例は増えていくのではないかと勝手に予想している。

 

ナツアカネ
秋に飛んでも
「夏」アカネ

 

といった感じでしょうもない一句ができたわけであるが、とにかくナツアカネは夏でなくても普通にいるということは押さえておいていただきたい。
そして、秋に乱舞している赤とんぼを見て、アキアカネかな?ナツアカネかな?と目を凝らして観察してみると、いつもの昆虫観察もより面白く感じるだろう。(もっとも赤とんぼはこの2種類だけじゃなくて、他にも色々な種類がいることをあらかじめお伝えしておく)

赤とんぼの奥深き世界をぜひともご堪能あれ。

 

【ナツアカネ】

トンボ目トンボ科

成虫は6月~12月頃にかけて出現

体長35mm~40mm

北海道から九州にかけて分布

水田や池沼、湿地等に多く生息

小さな昆虫を捕食

アキアカネと双璧を成す代表種。夏のみでなく初冬頃まで見られる

 

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