日本を代表するヒカゲチョウの仲間で、いわゆるナミヒカゲと双璧を成すのが、今回紹介するクロヒカゲだ。
そもそもヒカゲチョウとはなんぞやというところで、ご存じない方に説明すると、タテハチョウ科の仲間に、ジャノメチョウ亜科という亜科がある。
そのジャノメチョウ亜科の仲間の1種がヒカゲチョウということになる。
前述の通りノーマルヒカゲチョウであるナミヒカゲと双璧を成すクロヒカゲだが、そもそもナミヒカゲとそっくりな見た目をしている。
慣れてくれば飛んでいる場所や、飛んでいる時の色味で見分けられるようになるが、写真だと違いがよくわからないというのが正直なところ。
後羽に入っているラインがよりくの字に曲がっているのがクロヒカゲ、という見分け方が1番分かりやすいのではないか。
後は、やはり全体的な色味が違う。文字通りクロヒカゲは全体的にナミヒカゲよりも暗色で、また住んでいるところも、暗い林道等に多い。
一方のナミヒカゲは雑木林の周辺、比較的明るいところでもよく見られる。
ちなみにクロヒカゲモドキというそっくりな種類も存在するが、産地が局所的で絶滅危惧種にも指定されており、私は見たことがない。
分布的には、より山地性が強いのがクロヒカゲで、私が住む埼玉のベッドタウンではほぼ見かけることはない。
逆にナミヒカゲは、私が住んでいる周辺でも、ちょっとした雑木林さえあれば見ることができる。
なので私にとってはクロヒカゲの方がより珍しい種類ということになる。
普段ナミヒカゲをよく見ていると、クロヒカゲの暗色具合が際立つので、すぐに見分けられるようになるだろう。(もっとも、微妙な色味の者もいるので、正確とは言い切れないが)
ちなみに同じように暗い場所を好む種類にコジャノメがいるが、混在する場所では、クロヒカゲは高所、コジャノメは低所と住み分けをしているらしい。
また、ナミヒカゲと混在する場所では、クロヒカゲはより暗い所、ナミヒカゲはより明るい所と、住み分けをしているとのこと。
似た者同士争わないための知恵なのだろうか、そこまでお互い気を遣えるとは大したものである。
しかしジャノメチョウあるあるだが、クロヒカゲもおそらく蝶に詳しくない方が見つけたら、蛾だと思われるに違いない。
太古から蝶はキレイで蛾は地味という先入観は根強く、そうした勘違いが頻繁に起こってしまう。
しかし、色味が地味な蝶もいれば、派手な蛾もいる。安易な先入観で判断をするのではなく、その背景を知っていくことで、さらに昆虫の世界は奥深くなっていくのだ。
ぜひとも色んな昆虫に触れて、その面白さを感じてみてほしい。
クロヒカゲは色合いも暗く住んでいるところも暗い。日向の草原を颯爽と飛んでいる他の蝶と比べたら目立たない存在かもしれない。
しかしよく観察してみれば、ジャノメチョウ特有の目玉模様が立派な美しい蝶ではないか。
日陰に住むクロヒカゲだが、決して日陰者ではない。出会ったらぜひとも目を凝らして観察してみてほしい。
【クロヒカゲ】
チョウ目タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科
成虫は5月~9月頃にかけて出現
前翅長23mm~33mm
北海道から九州にかけて分布
林内等暗いところを好む
食草はタケ科のササ類
ヒカゲチョウに似ているが、本種はより山地性が高く暗所を好む