春から秋の長い期間、日本の野原では様々な花を見ることができるが、そんな花が咲き乱れるところでよく見かけるのが、今回紹介するホソヒラタアブである。
興味がない方からしてみれば、ハチのように映るかもしれないが、ホソヒラタアブはハナアブの仲間に分類されるアブの1種である。
ハナアブの仲間よろしく、花をよく訪れて蜜を吸っている。
ちなみにハチのような色をしているのは擬態のためだと言われており、ホソヒラタアブの立派な生存戦略である。
飛ぶのが非常に上手で、ホバリングの名手とも言われている。実際に生息地では、まるで空中で静止しているかのようなホバリング姿をよく見かける。
飛翔力が高いが故に、交尾まで飛びながら行ってしまう。いやいやそこは止まりながらじっくり・・・と思ってしまうのは人間の勝手な都合なのだろう。
和名にもあるように、細く平べったい体型をしている。
同じハナアブの仲間で、ハナアブの基礎とも言えるナミハナアブと比べるとその差は顕著で、一見すると同じ種類の仲間とは思えないほど姿形が異なっている。
ちなみに私は子どもの頃、なぜかその辺にいるハナアブというと、すべてホソヒラタアブだと思っていたという無茶苦茶な思考の持ち主であった(幼い日の自分を擁護すると、私が持っていた図鑑はアブの掲載数が少なかったので、そう思っても仕方ない節はあると言える)
故にアブは種類がとても少ないと思っていたのだが、実際はかなり種類が多く、似た者も多いので見分けるのが難しい一群である。
私も毎回、写真を撮ってはなんの種類か同定するのに苦戦している口であり、昆虫観察の難しさを感じるものである。
アブというと人の事を刺す危険生物として悪名高い事でお馴染みだが、ホソヒラタアブは人を刺すことはない。
それどころか、幼虫はアブラムシを食べるので、正真正銘の益虫である。
よもやアブが益虫になる日が来るとは、考えもしなかった方が多いのではないか。
個人的なホソヒラタアブお気に入りポイントは、やはりその見た目の美しさである。
ほんの10mmちょっとの小さな昆虫であるが、なんだかブローチのようなルックスをしており、特に花に止まったところは、とても絵になる。
また、太陽が当たった時には金色に輝くという、なんとも美しい一面を持っている。
どこにでもいるような身近なアブであるが、そこには様々な魅力が隠されている。
ホソヒラタアブに、小さな昆虫の魅力を感じた時、昆虫観察は一段と楽しくなるだろう。
【ホソヒラタアブ】
ハエ目ハナアブ科ヒラタアブ亜科
成虫は3月~11月頃にかけて出現
体長11mm前後
北海道から九州にかけて分布
草原等の花に多く訪れる
幼虫はアブラムシやカイガラムシを捕食
身近なアブの一種。飛翔力が高く、よくホバリングしている