昆虫散歩道

昆虫をあれこれ撮影してあれこれ語ります

ジガバチ・・・地面をせわしなく歩く狩りバチの代表格

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地面を歩くジガバチ。腹部のオレンジの差し色が特徴だ

ハチといえば巣を作る昆虫としておなじみであるが、実はハチの種類によって巣の種類はさまざまである。
一般的に我々が蜂の巣として思い浮かべるのは六角形のハニカム構造の入り口が並ぶものだと思うが、そうした巣を作るのはミツバチやスズメバチ等、社会性のあるハチである。

一方、今回紹介するジガバは、そうした巣は作らない。いわゆる狩りバチの1種である。

 

狩りバチとは、クモやガの幼虫等を狩って麻酔をかけ、そこに卵を産み付けて幼虫の食料にしてしまうという、なんともおそろしい生態を持ったハチの総称である。
しかし、基本的に狩りバチは単独で行動するので、人間を襲うことはほぼなく、よほどの事(無理矢理素手で捕まえたり)がない限りは刺されることはない
故にジガバチも危険性はほとんどなく、近くで観察をしても、逃げることはあれど自分から向かってくるようなことはない、温厚なハチだと言える(ただし、狩りバチに刺されると相当痛いという話も聞くので、やはり無闇な刺激はしない方がいい)

 

巣は地面を掘って作られる。ハチが地面を掘って巣を作るというイメージがない方も多いかもしれないが、同じ狩りバチであるベッコウバチ等、そうした戦略を取るハチは意外と多い、巣を作るわけではないが、ハラナガツチバチの仲間コガネムシの幼虫を自身の幼虫のエサにするために地面を掘り進むし、意外とこの辺のハチにとってはマストな戦略と言えよう。

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ハラナガツチバチが掘った穴。セミの幼虫が出てきた後のようだ

また、これはハチ全般に言えることだが、 腹部がとても細い。ジガバチも例に漏れず細い体をしている。
実はハチは、腹部が細いために液体状の物しか食べられないらしい。狩りバチと称され、実際に芋虫を狩るジガバチであるが、それはあくまで幼虫のための食料成虫の主な食料は花の蜜である。実際に生息地のお花畑では、花を訪れている所を確認できる。

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花を訪れるかわいらしい一面も

そんなジガバチであるが、実は近年、サトジガバチヤマジガバチに分かれることが発覚している。これがまた非常によく似ているので、私のような素人には見分けが付かない。
背中のしわが見分けるポイントらしいが、それもわずかな違いらしい。
生態的に言うと、幼虫用の獲物を1匹だけ巣に入れるのがサトで、複数匹入れるのがヤマという違いがあるらしいが、そんなものは普通に飛んでる個体を見てもわかるわけがない

まあ名前の通り、平地にいるのがサトで、山地にいるのがヤマらしいので、関東平野ど真ん中にいるのはサトであろう。うんうん。

 

ちなみに近年(というか私が物心ついた時以降)サトとヤマで分かれた種類というと、ウラギンヒョウモンがお馴染みだが、こちらも正直私には見分けがつかない(ちなみに北海道の一部のみに生息するヒメウラギンヒョウモンというのもいるらしいので、正確には3種で分かれるんですってよ奥さん)
さて、標高600~700m付近というどちらもいそうな場所で撮影した下の画像の個体はどちらなのだろうか。私には一生わかりそうもない。

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サトかヤマか!?いざ勝負!

少し脱線したが、私はジガバチが好きである。地面をせかせか歩き回る姿は、「おいおいそんなに急がんでも」と諭したくなるような気分になるが、その様子が中々面白い。
狩りバチと言われると狡猾なイメージになるが、お花に来るというチャーミングな一面もあり、なんともかわいらしいと感じないだろうか。
ジガバチを見かけたら、是非その様子をじっくり観察してみよう。

 

【ジガバチ】

ハチ目アナバチ科

成虫は5月~10月頃にかけて出現

体長18mm~25mm

北海道から沖縄にかけて分布

農地や河川敷等の拓けた場所でよく見られる

幼虫は芋虫、成虫は主に花の蜜を食べる

狩りバチの代表とも言える存在。腹部のオレンジ色が特徴。