シオカラトンボというと、日本中のあらゆる所に生息するポピュラーなトンボであり、昆虫に詳しくない方でも知名度が高いのではないだろうか。
そんなシオカラトンボより大型で存在感のあるトンボが今回紹介するオオシオカラトンボである。
シオカラトンボよりも水色が濃く、複眼が黒いので比較すると結構イカつい印象を受ける。
体格もシオカラトンボよりしっかりしているので、水辺を飛び回っている姿は中々貫禄がある。
シオカラトンボのように住宅街真ん中に現れるようなことはほとんどないが、都市部周辺でも自然多めの公園の池等に行けば普通に生息している。
分布も北海道から南西諸島まで生息しており、実は結構身近な存在だと言えよう。
オオシオカラトンボの水色の体色は粉を吹いている故なのだが、これは成熟した個体の証でもある。実は未成熟のオスはまったく違う体色をしており、ほぼほぼメスと同じような感じになっている。なので、未成熟個体はオスかメスか非常にわかりづらい。
お尻の突起の形で見分けられるので、細かくてわかりにくいがなんとか観察してみよう。
ちなみにメスは成熟してもそのままの体色なので、分岐点はオスの粉ふきという事である。
実はトンボが成熟するにつれて体色が変わるのはごくごく普通の事であるので、結構ややこしかったりする。赤とんぼとしておなじみのアキアカネなんかも未熟と成熟でだいぶ色が異なっている。
しかし、成熟しているかどうかが一目でわかってしまうというのはなんとも恥ずかしいような気がする。人間は特に見た目で未熟かどうかがわからないので、いやあよかったよかった(?)
そんなオスのオオシオカラトンボは中々漢気溢れるようで、メスが産卵しているところを見守るように飛んで護衛したりする。
奥さんを守っているなんてなんて素敵な、、、!と思った方もいるかもしれないが、トンボは同じ相手と添い遂げる事などなく、また別の交尾相手を探しに飛んでいってしまう。
さらに、交尾中の個体に凸することも全然普通にあったりする(メスの護衛に熱心なのも、そうした事情があるからではないかと邪推してみる)もはや子孫を残すためにはなんでもござれな世界と言えよう。
ちなみにこれもオオシオカラトンボのみならずトンボ界隈では普通の事なので、皆さんショックを受けないでいただきたい。
まあ要するに、トンボはトンボで子孫を残すために全力を捧げているわけである。それを人間の倫理観で否定するなどおこがましいというもの。そうやって何代も命を繋げてきたと思うと、なんだか素晴らしいなと思うような思わないような、まあ思うことにしよう!そうしよう!うんうん。
とまあ無理やり納得させてしまったが、トンボの世界は中々熾烈で、縄張り争いもかなり激しい。そんな死線を潜り抜けていると思うと、かっこよさも倍増というもの。オオシオカラトンボの黒光りする複眼もなんだかめちゃめちゃかっこよくないだろうか。
そんな争いを制したオオシオカラトンボのかっこよさに触れる時、昆虫観察の醍醐味を感じることができるのだ。
【オオシオカラトンボ】
トンボ目トンボ科
成虫は5月~11月頃にかけて出現
体長52mm~61mm
日本全土に分布
林縁の池や湿地等に多く生息
昆虫を捕食
シオカラトンボより少し大きいトンボ。黒い複眼が特徴。