昆虫散歩道

昆虫をあれこれ撮影してあれこれ語ります

アオドウガネ・・・分布を北上させている艶消しグリーンの刺客

緑が鮮やかなアオドウガネ。いつの間にか身近な存在に

「こがねむしーはーかねもちだー♪」などという歌があるが、その輝きの美しさで異彩を放っているのがコガネムシだ。
ところが私が住んでいる埼玉県南部のベッドタウンでは、コガネムシを見る機会はあまり多くない。その代わりによく見られるのが今回紹介するアオドウガネだ。

 

緑が鮮やかな本種ではあるが、昆虫に興味がない方からしてみたら、一体コガネムシと何が違うのかがわからないだろう。
もっと言うと、カナブンとの違いをわかっている方もほとんどいないのではないか。

 

まず、コガネムシとは輝き具合が全然違うコガネムシと比べるとアオドウガネはなんというか、艶消しっぽい感じだ。故に慣れればコガネムシと見間違うことはまずないだろう(ていうかコガネムシのメタリック感半端ねえ)

こちらはコガネムシ。すごいメタリック

一方のカナブンは、アオドウガネと比べるとなんだか角ばった顔をして、全体的にシュッとしている羽の付け根にある三角(小循板〔しょうじゅんばん〕という)の面積も大きい。また、主な食べ物は樹液だったり果実だったりなので、そうしたところで見かけたらカナブンだと思っていただいて差し支えないだろう。

こちらはカナブン。カブトムシを捕りに行くとよくいるよね

そんなアオドウガネだが、前述の通りコガネムシに比べると遥かに目撃する頻度が高い。私は埼玉南部の住宅街ど真ん中に住んでいるのだが、庭先ですらアオドウガネをよく見かける
元々は南方系のコガネムシの仲間だったのだが、温暖化の影響か分布域が北上しており、近年では関東でもごくごく普通に見られる種類となった

 

そんな身近な存在なので、親しみやすい昆虫なのかと言われると、これが少し事情が異なってくる。それはなぜかというと、様々な植物の葉を食べる害虫として悪名高いからである。
成虫の食べ物は様々な広葉樹の葉っぱなのだが、時折大量発生して全体的に食い荒らしてしまうというとんでもない事をしでかしてしまう。
特に果樹に対する被害は大きく、個人的には、友人宅の柿やらキウイやらがやられていたのが印象的であった。

アオドウガネに食害されたカキの木。全体的にこうなっちゃうから大変だ

さらにアオドウガネが厄介なのが、成虫だけに飽きたらず幼虫までもが農作物に被害をもたらすという点である。
幼虫は土中で木や草の根を食べて育つ。特に沖縄のサトウキビ畑での被害は甚大で、駆除活動にかなり腐心しているようである。
要するにアオドウガネは、上からも下からも植物を食べ尽くしてしまうというとんでもハイブリットな生態をしているのだ(なんちゅう嫌なハイブリット)

 

どうしてもこういう害虫とされる昆虫を紹介すると、ネガティブな内容になってしまうので心苦しいのだが、アオドウガネの魅力はというと、カラーリングが美しくてなんだかかわいらしいところだ(見た目しか入れないのがバレそうだ)
中々ここまでキレイに緑が出る昆虫もいないのではないか。そう考えると、なんだか美しい昆虫という事で、見え方も変わってこないだろうか。ほら!そんな感じに見えないだろうか!ほらほら!(強引)

 

まあなんとも言えないまとめ方になったが、アオドウガネはアオドウガネで、自らの生態に倣って頑張っているわけである。その生き様を理解していくことで、うまく付き合うきっかけになるかもしれない。
皆さんもアオドウガネを見かけたら、暖かく見守ってあげよう。

 

【アオドウガネ】

甲虫目コガネムシスジコガネ亜科

成虫は5月~10月頃にかけて出現

体長17mm~26mm

本州から沖縄にかけて分布

畑や果樹園、公園等に多く生息

幼虫は植物の根を食べる

艶消しグリーンのコガネムシ。農作物の害虫としても知られる。

 

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