春と言えばチョウが飛びはじめる季節。色とりどりの羽を駆使してあちこちを飛び回る姿は、なんとも可憐なものである。そんな可憐なチョウの中でも、ひときわ存在感がありチョウ好きの人気を欲しいままにしているのが、今回紹介するギフチョウだ。
一般的な
知名度が高いわけではないが、
チョウ好きであれば知らない者は存在しない。
なぜそこまで人気なのかといえば、要因はいくつかある。
ひとつは生息地が限られている点だ。
ギフチョウは
西日本を中心に分布しているが、
どこでも生息しているようなチョウではない(北海道、四国、九州には生息していない)
基本的には
日当たりの良い林床等に生息しており、
植物が生い茂りすぎたところや、
逆にあまりに拓けたところには生息していない。
よく管理された
里山環境が減った現在では、
生息地が狭まるのは必定といえよう。
関東では神奈川県の一部に生息地があるのみと言われており、
埼玉県南部に住んでいる私
からしたら、かなり縁遠い存在である。そのため
多くの自治体が天然記念物に指定しており、
力を入れて保護活動を行っている。
ちなみに和名の
ギフチョウは、
はじめて学会に発表された個体が岐阜県産だったことに由来する(それ以前は
ダンダラチョウと呼ばれていた)
日本固有種のため、世界でも日本にしか生息していない。
また、
成虫が出現するのが春のみという点も、
そのレア度を上げているといえよう。地域によって異なるが、
ギフチョウが出現するのは大体3月下旬から5月頃にかけてであり
、まさに春限定。
そんな春しか見られない
ギフチョウは
スプリングエフェメラル(春のはかない命の意味)と呼ばれ、
チョウ好きの春の幕開けを告げるチョウともいえる。
そしてやはり、見た目にも美しい羽が、チョウ好きの心をくすぐる。
この羽が地域によって変異があり、そうした違いを楽しむのも、チョウ好きのマストとなっている。
生息地が限られていて出現期間も短い、可憐な見た目に地域差が表れるともなれば、そりゃ人気が出るのは必然といえよう。
西日本を中心に分布する
ギフチョウに対し、
ヒメギフチョウは
東日本を中心に分布する。
関東では
群馬県の一部にしか生息しておらず、
やはり私にとっては、中々簡単に見られるチョウではない。
両者は
かなり明確に分布域を分けており、数ヶ所を除いて同じところに生息しているということはない。
この
ギフチョウと
ヒメギフチョウの分布の境目を
リュードルフィアラインと呼ぶ。
ちなみに、よく似た両者は前羽先端付近の模様や、後羽の縁付近の模様で見分けられる。詳しくは画像をご参照いただきたい。
ギフチョウのオスは中々えげつない生態をしており、
交尾をしたメスが他のオスと交尾できないように、受胎曩という粘り気のある物質をお尻の先に付けてしまう。
ただでさえ数が少ないのだから、そんなことしたら余計に少なくなってしまうのではないかと心配になるが、それによって子孫を繋いで来たのだから、余計なお世話なのだろう。
春の訪れを告げる特別なチョウである
ギフチョウ。
見つけるのは簡単ではないが、
見つけたときの感動は何物にも代えがたい。
みなさんも
ギフチョウ探しにチャレンジして、
その感動を味わってみてはいかがだろうか。
チョウ目アゲハチョウ科ウスバアゲハ亜科
成虫は3月~5月頃にかけて出現
前翅長27mm~36mm
雑木林の林縁や日当たりの良い林床等に多く生息
春を代表するチョウの1種。各所で保護活動が行われている。