拓けた所で激しく縄張り争いを繰り広げるタテハチョウ。高い飛翔力を武器に他のチョウたちとバチバチにやり合う姿はなんとも喧嘩っ早くてよく目立つ猛者どもだ。
そんなタテハチョウは裏面こそ枯れ葉のような地味な色をしている者が多いが、表は中々色とりどりな模様を見せてくれる。
そんなタテハチョウの仲間で、一際シックで落ち着いた装いを見せるのが、今回ご紹介するキベリタテハである。
画像を見ていただければお分かりしただけるが、キベリタテハはまだら模様や目玉模様のような目立つ模様は存在せず、濃い茶色いを基調に縁の部分が黄色いという独特な配色をしている。もちろん和名も黄色い縁の独特の模様から来ている。
個人的には黄色い縁の内側に並ぶ青い斑点がお気に入りで、この斑点のおかげでより気品を感じる模様になっているような気がしてならない。
ちなみにキベリタテハの裏面は他のタテハチョウと同様に地味な色をしているのだが、アイデンティティであるキベリ模様は隠しきれずにいる。タテハチョウの裏面はどれも地味なので、一見すると見分けるのが難しいのだが、キベリタテハは一発でわかる。もちろん日本で似ている種類は存在しないので、識別は容易だ。
大型のタテハチョウで、やはり他のタテハチョウよろしく縄張り意識が高い。その飛翔力は中々のもので、近くで羽ばたくとバサッと羽音が聞こえてくるほどである。
多くのタテハチョウの仲間が成虫で越冬するように、キベリタテハも成虫で越冬する。そして春になって再び活動を開始した者たちが子孫を残すというライフスタイルを送っていく。
樹液や獣糞、腐果を好んで訪れるというのも代表的なタテハチョウの生態を踏襲している。
他のタテハチョウと異なるのは生息地で、本州では主に1500m~2000mという高標高地に生息するという高山蝶ばりの生息地である。そのため春に活動開始するのが5月頃と他のタテハチョウより遅く、成虫が羽化するのも8月頃と遅い。高標高地の長い冬を耐え忍んだ猛者どもが、再び春に活動するというわけだ。
食草もダケカンバやシラカバといった、高標高地を代表するような木なので、まさに高標高地に適応して生きているというわけだ。
もちろんそんな生態をしているので、埼玉南部の平野部に住んでいる私からしてみたら、キベリタテハはレアキャラもレアキャラなわけだ。もちろんキベリタテハを見かけたらテンションが上がるのは必至。シックな模様も唯一無二と来れば、探しにいかない手はない。みなさんも避暑がてらにキベリタテハを探してみてはいかがだろうか。
【キベリタテハ】
チョウ目タテハチョウ科タテハチョウ亜科
成虫は5月~9月頃にかけて出現し成虫で越冬する
前翅長32mm~43mm
北海道から本州にかけて分布
林縁等に多く生息。
食草はカバノキ科のダケカンバやシラカバ等
黄色い縁取りが特徴的なタテハチョウ。本州では高標高地に生息。