カメムシといえば、臭い匂いを放つ昆虫として、中々に嫌われ者のレッテルを貼られていることが多い。時には家の中にまで入ってくることもあるので、いやでもその姿を目にする方も多いだろう。しかしそんなカメムシの仲間は、実に様々な形をしており、一見するとカメムシとは思えないような格好をしている者も多く存在する。今回はそんなカメムシ代表の、マルカメムシをご紹介していく。
画像を見ていただければ一目瞭然だが、なんとも言えない不思議な形をしている。おおよそカメムシらしくなく、まるで野球のホームベースのような形だ。初見の方は、まずカメムシとは思わないだろう。
サイズも1cmに満たないほど小さいので、そもそもスルーしてしまう方も多いのではないか。
マルカメムシは河川敷の草むらや休耕地等、割と身近なところで見ることができる存在だ。マメ科の様々な植物を食するが、特にクズの群落があれば、そこはしばしばマルカメムシの楽園となる。そうしたところでは集団を形成することも珍しくなく、昆虫嫌いな方からしてみれば、発狂ものと言えよう。
そしてその食性から、ダイズといった豆類の害虫にもなりうるので、農家さんから見ても厄介な存在といえよう(もっともマルカメムシの場合、かなりの大量発生でもしない限り、大きな影響を及ぼすときはないとも言われている)
マルカメムシは、見た目こそカメムシらしくないが、しっかりとカメムシ独特の嫌な臭いを放つ存在である。さらには成虫で越冬し、しばしば家の中に入ってくることもあるという、見た目に反して、非常にカメムシらしい生態をしている。
そしてマルカメムシは、共生細菌を腸内に保有していることも知られており、産卵の際にその共生細菌を産み付けるという特徴がある。産み付けられた共生細菌は幼虫の餌となるのだが、どうもこの細菌を幼虫が食べないと、死んでしまうか、まともな個体に育たないようである。なんとも聞き馴染みのない話であるが、実はカメムシの仲間は、共生細菌がないと生きていけないという種類が多い。ゼリー状だったり液状だったり、その形は種類によって様々だが、マルカメムシはカプセル状の共生細菌を産み付けるようである。
そんな感じでマルカメムシは、見た目こそカメムシらしくないが、中身は実にカメムシらしいカメムシといえよう。時に群れていることもあるので、勘弁してくれと思う方もいらっしゃるかもしれないが、よくよく見ると、独特なフォルムがなんとも言えぬキャラクター感があって、かわいらしくもある。身近な草むらに生息しているので、みなさんもマルカメムシを探して、独特なフォルムに魅了されてみてはいかがだろうか。
【マルカメムシ】
半翅目カメムシ科
成虫は3月~9月頃にかけて出現
体長5mm前後
本州から九州にかけて分布
河川敷や農耕地等に多く生息。特にクズの群落に多い
クズ等のマメ科の植物の汁を吸う
フォルムが独特なカメムシ。群れを成すこともしばしばある。
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