一般的にカメムシというと、緑っぽかったり茶色っぽかったりするやつを思い浮かべる方が多いだろう。そんなカメムシの仲間に、赤と黒というなんとも派手な色をした種類が存在する。それが今回紹介するナガメだ。
ナガメは菜の花が河川敷に咲き誇る頃に現れる。特に春は個体数が多く、菜の花の上でたたずんでいたり、交尾をしたりとかなりの賑わいを見せている。
そして勘のいい方はお気付きかもしれないが、和名のナガメの由来は菜の花に付くカメムシということで「菜亀」となっている。
故に私は河川敷いっぱいに菜の花が咲いていると「うわあ、ナガメがたくさんいそうだなあ」と思うわけである(ここまで行くと末期だ)
菜の花に付くカメムシということだが、菜の花が咲いていない夏から秋にかけても普通に見られる。しかし、最盛期はもちろん春だ。やはり和名を名付けた方も、その辺りの印象が強かったのだろう。
また、色合いこそ赤と黒のカメムシという奇抜なものだが、特別珍しい種類というわけでもなく、その辺の土手に行けば普通に見ることができる。色合い的に、同じような時期から現れはじめるナナホシテントウと見間違えることもしばしばだ。
逃げ足は速くなく、見つけたら見失うことはあまりないが、恥ずかしがり屋なのか、近付くとすぐに葉の裏に隠れてしまう事が多い。
ちなみにナガメと近い種類のヒメナガメという者もいるのだが、こちらは私が住んでいる埼玉県では準絶滅危惧種になっており、よりレアな種類であるといえる(もっともヒメナガメも近所の河川敷に行くと普通にいるので、個人的にそこまでレア感はない)
一見すると他のカメムシとは一線を画すナガメだが、危険が迫ると匂いを発する所や、草の汁を吸う所は、他のカメムシのやり方を踏襲している。
菜の花に付いているという事は、もちろんアブラナの汁を吸うわけだが、アブラナ科の様々な植物の汁を吸うため、ダイコンやキャベツ、ハクサイ等も食事の対象になる。
つまるところナガメは農家さんからしてみたら害虫ということになる。
幸いそこまで大きな被害をもたらすようなことはないらしいが、群れている事もあるので、数の暴力でやられてしまう可能性もなきにしもあらずと言った所だろうか。いずれにせよ、その辺りの作物を育てている方にとっては、要注意生物である。
一面の菜の花畑の中で一際目立つ配色のナガメ。カメムシらしくない見た目で他のカメムシと変わらない生態をしている昆虫だ。
人は見かけによらないと言うが、昆虫も見かけによらない。ナガメを見つけたら、そんな不思議に思いを馳せてみてはいかがだろうか。
【ナガメ】
体長7mm~9mm
北海道から九州にかけて分布
日当たりの良い草原や耕作地等に多く生息
アブラナ科等の植物の汁を吸う