日本には四季があり、その季節その季節で様々な景観を楽しむことができる。皆さんもご存知の通り、木々の葉っぱは初夏にかけて緑が深くなり、秋には紅葉で赤やら黄色やらに色付くわけであるが、そんな木々と同じように体色を変化させる昆虫がいる。それが今回紹介するクヌギカメムシだ。
一般的なカメムシに比べてシュッとした体型をしているのが特徴だ。文字通りクヌギの葉を食べるため、クヌギの木の幹にいることを目にすることが多い。
前述の通り初夏にかけて成虫になり緑色になるが、秋になると全体的にオレンジ色に変化するという、まさに紅葉と同じルートを辿る。
そして、そんな紅葉が進んだ時期に交尾をして、クヌギの木の幹に卵を産み付けるという生活を送る。
この時期のメスはお腹が異様にパンパンになっており、いかにもたくさん卵を産みますよ感がひしひしと伝わってくる。
12月の終わり頃でも見かけることがあるので、寒くなってきて昆虫がいなくなり、心まで寒くなってくる昆虫好きの心に寄り添ってくれる存在だ。
前述のように、クヌギカメムシの卵は木の幹に産み付けられ、しかも同じ木にかなり大量に産み付けられることもあるため、生息地にいくと簡単に見つけられる。
緑色の数の子のような感じで、なんとも言えない見た目をしている。
幼虫はまだ寒い時期から孵化し、最初のうちはこのゼリー状の卵を食べる。そして、暖かくなり新芽が出る頃に植物の汁を吸う生活にシフトする。
なんでもこの卵塊は幼虫が成長するのに必要な栄養があるだけでなく、その後の植物の汁を吸う生活へとシフトするために必要な細菌が含まれているらしく、クヌギカメムシにとってはめちゃくちゃ重要なまさにミラクルゼリーなのである。
そんなクヌギカメムシだが、実はかなりそっくりなヘラクヌギカメムシとサジクヌギカメムシという別種が存在する。
パッと見で見分けることはほぼ不可能で、裏の気門を見る必要がある。ここに黒い点が並んでいればクヌギカメムシで、黒い点がなければヘラクヌギカメムシかサジクヌギカメムシのどちらかである(ちなみにヘラクヌギカメムシとサジクヌギカメムシの見分け方は生殖器の形等で見分ける)
いずれにせよ、この3種類を別種と解明したことがただただすごいと私は思う。
木々と同じように体色を変化させ、成長過程も癖のあるクヌギカメムシ。かなり個性的なカメムシだが、いるところにはたくさんいるので、ちゃんと探すと結構目立つ存在だ。
あなたもクヌギカメムシで、季節の変化を感じてみてはいかがだろうか。
成虫は5月~12月頃にかけて出現
体長12mm前後
本州から九州にかけて分布
クヌギの生える雑木林等に生息
クヌギ等の葉を汁を吸う