初夏になり木々の葉が青々としてくる頃。多くの昆虫も活発に活動しはじめ、雑木林は賑わいを見せるようになってくる。
そんな季節に現れるはじめる大型で貫禄のあるアブが、今回紹介するオオイシアブである。
まずオオイシアブの特筆すべき点は、その見た目である。
明らかに他のアブに比べて大型で(というよりもはやゴツい)とてもじゃないがアブとは思えない。
そんな体でにぶい羽音を立てながら飛んでくるため、スズメバチでも飛んできたのかと思わされる程だ。
そして、止まってからわかるそのユーモア溢れる容姿。顔周りに長めの毛が生えているため、まるで長老のような風貌だ。
全体的な配色はマルハナバチのそれに近いものがあり、擬態をしているのではないかと思われる。
そんなゴツい体つきに長老感溢れる顔つきのアブ。さぞかし人間にとって危険な存在ではないかと思われるかもしれないが、オオイシアブは自発的に人間に襲いかかって、刺してくるといったことはない。
実はアブの中でも人間に襲いかかってくるのは、動物の血を吸う種類に限られる。
要するにオオイシアブは動物の血を吸うことはないので、故に人間に危害を加えることはないということだ(無理やり捕まえると刺される可能性はあるので、採集は自己責任でお願いします)
そんなオオイシアブはムシヒキアブという仲間の1種である。ムシヒキアブの仲間は他の昆虫を捕らえて食べるという、獰猛な一面を持つアブでもある。
オオイシアブも例に漏れず、果敢に狩りをする。大型であるが故に、少々大きい獲物にも襲いかかって補食する。
硬い羽で覆われている甲虫も、オオイシアブの狩りの対象となり、硬い羽に覆われていてもお構いなしに捕らえて、体液を吸いとってしまう。
狩りの仕方も中々狡猾で、葉っぱの上や遊歩道のフェンス等の見晴らしの良いところに陣取って待ち伏せをして、通りがかった獲物を捕らえる。
そのため我々人間からしても、わかりやすい所に止まる確率が高いので、割と観察がしやすいアブだと言える。
大型のアブであり、しかも長老のようなルックスをしているオオイシアブだが、獲物を探している際の動きは大きさのわりに中々俊敏で、辺りを確認しているのか知らないが、頻繁に向きを変えたりしているところをよく見かける。この辺りはさすがハンターと言ったところだ。
そんなこんなで強烈な個性と存在感で雑木林を闊歩するオオイシアブ。もし現れたら目に留まることは間違いない。
その貫禄の姿がかっけえので、是非とも探してみていただきたい。
【オオイシアブ】
ハエ目ムシヒキアブ科
成虫は5月~9月頃にかけて出現
体長15mm~26mm
本州から九州にかけて分布
雑木林の林縁等に多く生息
幼虫は朽ち木の中でコガネムシの幼虫等を捕食する
毛深い見た目が特徴的なアブ。甲虫類等他の昆虫を捕食する。