昆虫散歩道

昆虫をあれこれ撮影してあれこれ語ります

シオヤアブ・・・かわいい顔して昆虫界最強クラスのアサシン

林縁でおなじみシオヤアブ。目がカービィっぽい

時に昆虫という存在は、人々に嫌われることも珍しくない。台所の使者であるゴキブリや吸血鬼のカ。悪臭発生機のカメムシ等は、常に駆除の対象となるような嫌われ昆虫たちである。
そして、アブも人の血を吸い、しかもその瞬間がとてつもなく痛いので、嫌われ昆虫の仲間入りをしていると言えよう。
しかし、そんなアブの中で、なんともかわいらしい顔つきをしているのが、今回紹介するシオヤアブである。

 

まあまずは画像をじっくり見ていただきたい。なんともかわいい目をしていると思わないか?
この顔つきはまるであの大人気キャラクター、カービィのようなルックスだ。
しかもお尻に白いポンポンが付いているという、なんともかわいいに寄せた作り。ちなみに白いポンポンが付いているのはオスだけで、メスは先細りのお尻になっている

メスはお尻の白いポンポンがない

そんなアブっぽくないかわいらしい見た目で、なんとも平和な昆虫なのかと思ったそこのあなた。あなたはまだシオヤアブの本性を知らない。
実はシオヤアブは、昆虫界最強という称号を得ている。それはなぜか。ひとえにシオヤアブが、獰猛なハンターだからである。
そうはいってもシオヤアブの体長は3cmほど。昆虫界最強と名乗っていいほど強そうには見えない。ところがそんな体格でありとあらゆる昆虫を補食する。時にはトンボやスズメバチ、カマキリ等、いやいやパワーバランス逆だろうとツッコミたくなるような者まで、獲物として捕らえてしまう
ちなみにカメムシテントウムシ等、臭いで撃退する系の面々も、シオヤアブにとっては関係なし。例えるなら、スポーツマンNo.1決定戦室伏広治状態である。
しかもシオヤアブがすごいのは、小さい体格にも関わらず、毒等の飛び道具を使うことはなく、体のどこかが伸縮したり、罠を仕掛けたりすることなども一切ない。そう、己の体を目一杯使って狩りをするというわけだ。

 

基本的な狩りの仕方は、適当なところで待ち伏せをして近くを通りがかった者に襲いかかって口吻をぶっ刺して仕留めるという非常にシンプルなもの(やり口がマフィアのそれと一緒)
その狩りの方法故に目がとても良いようである。
また、その獰猛な性格故に、フィールドワークをしていれば、お食事中のシオヤアブに会うことは難しくない。

お食事中のシオヤアブ。よく見る光景である

逆光でアサシン感マシマシ

ただし、一応補足しておくと、シオヤアブが強いのはあくまで奇襲の場合であって、正面からやりあうと強くないという意見も多々ある。まあサイズがサイズだけに、カマキリ等とやりあったら普通に負けそうな気はする。

 

さて、ここで皆さんも気になるだろう。そんな獰猛な性格のアブ。それはそれは危険なのではないかと。
ところがどっこい、シオヤアブは自ら人間を襲うことはない、大人しいアブである(いや、大人しいは語弊があるか?)
要するに人間を襲うアブは血液を欲しているアブであり、シオヤアブは人間の血液などまったく興味がないので、襲いかかってくることなどないということだ。
ただし、無理やり捕まえたりすると刺してくることがあるようだ。しかもめちゃくちゃ痛いらしい。どれくらい痛いかは刺されたことがないのでわからないが、興味がある方は捕まえて確かめてみよう!

 

とまあ、自ら危害を加えてくる系でないとわかったところでシオヤアブを見てみると、かわいい顔がとても愛らしい存在である。
そして、顔に似合わず昆虫界最強というギャップ萌え。こんなに魅力的な昆虫も中々いない。
ぜひともシオヤアブを見つけて、そのギャップに魅了されていただきたい。

 

【シオヤアブ】

ハエ目ムシヒキアブ科シオヤアブ亜科

成虫は6月~9月頃にかけて出現

体長23mm~30mm

北海道から沖縄にかけて分布

林縁の日当たりの良い場所等に多く生息

幼虫はコガネムシの幼虫を捕食する

他の昆虫を狩る獰猛なアブ。オスのお尻の白い毛が特徴的。

 

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