昆虫散歩道

昆虫をあれこれ撮影してあれこれ語ります

キリギリス・・・有名だけど意外と姿を目撃する者は少ない?

草むらの鳴く虫代表。夏って感じがするよね

アリとキリギリスといえば、知らない方がいないくらい有名な寓話だ。
働き者のアリと怠け者のキリギリスを対比的に描いた物語はあまりにも有名なお話といえよう。
さて今回はそんなキリギリスをご紹介していこうと思うわけだが、果たしてキリギリスは本当に怠け者なのだろうか?そんなキリギリスの真実に迫っていこう。

 

知名度だけであれば抜群のキリギリスだが、実際に見たことがある方は案外少ないのではないか
その要因としては、そこまで身近な存在でない事が上げられる。私は埼玉南部のベッドタウンに住んでいるが、周辺でキリギリスはまず見かけない。ある程度自然が豊かなところまで赴かないと生息していないのが、キリギリスの実状といえよう。

また、基本的に背丈が高めの草むらの中に潜むように暮らしているため、中々目に止まる所に現れない。鳴き声は聞こえど、姿を見るにはかなり注意深く草と草の間を探さないとダメなので、家の近くに生息地があるような方でも、昆虫に興味がなければ素通りしてしまうことだろう。 

基本は草むらの中の方。何見てんのよ!?

体つきはかなり立派で、他のキリギリス科の仲間と比較してもさすがの貫禄といったところか。その体つき故に草の隙間をのそのそ歩いてることが多く、草の先端に行くと草が重さに耐えられず、結局元の位置に戻ってしまうというかわいらしい様子もよく目撃する。

 

鳴き声は短めに「ギィー」と鳴き、次のギィーまでに「チョン」という謎の短い声が入るという、ちょっと独特な感じになっている。
アリとキリギリスではキリギリスは何も考えずにただ楽しく歌を歌って過ごしているという設定になっているが、実際はそんなに気楽なものではない。キリギリスが鳴く主な理由は、無論メスへのアプローチのためである。彼らは次世代に子孫を残すために、頑張って鳴いているというわけで、種の存続にとって極めて重要な役割を果たしていることになる(セミ同様鳴くのはオスだけである)
ちなみに働きアリの中には2割ほど働かずにサボっている者がいるらしいので、必ずしもアリの方が働き者のというわけでもない(これにはちゃんと理由があるのだが、今回はキリギリス回なので、また別の機会に語ってみようと思う)

 

メスは鳴く機能がない分、お尻に産卵のための管(まんま産卵菅という)が付いており、故に雌雄の見分けは容易だ。メスは鳴かないので、鳴き声である程度場所がわかるオスに比べて、見つける難易度がかなり高くなっている。

メス。お尻に産卵管がついているのですぐメスだとわかる

実は他の昆虫を襲って食べる肉食性の一面を持ち、セミなんかも補食する事があるほどである(植物を食べることもあるので、正確な食性は雑食である)
キリギリスの足はトゲトゲになっているのだが、これは捕らえた獲物を逃がさないためのものらしい(怖ぇ・・・)

 

そんなキリギリスであるが、実はニシキリギリスヒガシキリギリスという、完全な別種に分けられるというのはあまり知られていないところだろう。
ニシキリギリスは近畿から西に、ヒガシキリギリスは青森から岡山に分布しているようで、故に、私が埼玉県で撮影したキリギリスは、正確にはヒガシキリギリスということになる。
さらにもっと言うと、正確にはもっと細かく分けるのがマストらしいのだが、ここまで来るともう私が理解できる領域をはるかに越えてしまっているので、特に語れることもない(おいおい)

 

とまあ、キリギリスが怠け者でないことがわかったところで(無理矢理繋げてやがる)やはり思うのはキリギリスは見かけるとテンションが上がるということだ。だってなんか立派だし。体高があるってだけでなんか興奮するし。
そして、真夏の真っ昼間に鳴いているので、夏の風物詩でもある。
セミとはまた違った夏の風物詩を堪能することが、何よりの楽しみなのである。

 

【キリギリス】

バッタ目キリギリス科キリギリス亜科

成虫は7月~11月頃にかけて出現

体長30mm~40mm

本州から九州にかけて分布

日当たりのいい草原や河川敷等に多く生息

様々な植物や昆虫を食べる

日本を代表する鳴く虫。草の中にいるので姿を見るのが難しい