我が国にはチャバネセセリなるチョウが存在するのだが、昆虫に興味がなければ中々知られていない存在だろう。チャバネセセリはセセリチョウの仲間で、とても小さく素早く飛ぶのが特徴である。
そんな小さなチャバネセセリに、さらに「コ」が頭に付いたチョウが存在する。それが今回紹介するコチャバネセセリというわけだ。
和名からさぞかし小さなセセリチョウなのだろうと思われるかもしれないが、正直チャバネセセリと同じくらいの大きさである。
形態としてはチャバネセセリと違って羽の脈が黒く出るので、チャバネセセリと見分けるのは容易だ(鱗粉がかすれて見分けにくい個体もいるのでその辺は注意が必要である)
全体的に茶色のチョウなので、地味で目立たない系であることは否めないが、よく見かけるセセリチョウ代表のイチモンジセセリやチャバネセセリと比べると、ちょっと装飾が豊かであり、なんだかおしゃれな感じがする。
飛んでいる姿はいわゆるセセリチョウといった感じで、飛び方も素早い。しかし、長時間飛び続けるという感じでもなく割とすぐに止まる。
セセリチョウお得意の羽を半開きにするジェット機みたいな独特の止まり方も披露してくれるので(私はセセリ止まりと呼んでいる)THEセセリチョウの1種といった感じだ。
図鑑では、都市部にも比較的多く生息しているとの記載が多いが、私が住む埼玉南部のベッドタウン周辺ではあまり見かけることがない。
しかし、少し自然の多い地域に足を運ぶと、そこらじゅうで飛んでいるのを見かけるほどで、ファーストチョイスになっていることも珍しくない。
早い者は4月の終わり頃から発生し、チャバネセセリやイチモンジセセリ等、同系統の他のセセリチョウに先駆けて出現する。GW頃に見かける者はだいたいコチャバネセセリである。
チョウの仲間よろしく花で吸蜜する姿をよく目にするが、コチャバネセセリは中々のグルメなようで、花以外にも様々な物に集まる。
地面で吸水するのもよく見かけるし、それ以上に好きなのが動物の糞である。複数匹集まることもザラで、特に山地で動物の糞が落ちていようものなら、高確率で集まっている姿を目撃する。
動物の糞に集まるのなんてハエくらいじゃないの!?チョウなのにそんな動物の糞に集まるなんて・・・と思った方も多いかもしれないが、実は動物の糞には、結構色んなチョウが集まったりする。特にタテハチョウの仲間は動物の糞好きが多く、集まっているのを目撃するのは普通も普通である。
なぜこんなに動物の糞に集まるのかと言えば、実は糞を摂取することで繁殖力を高めることができるようであるが、詳しく書くと長くなりそうなので、気になった方は調べてみると面白い事を知ることができるだろう。
ちょっとおしゃれでフライング気味に出現して色んな物を食するコチャバネセセリ。
せっかちそうに飛んではどこかに止まってまた飛んでを繰り返している。そんなコチャバネセセリを追ってみると色々なシチュエーションに遭遇することだろう。
是非ともコチャバネセセリを探してみよう。
【コチャバネセセリ】
成虫は5月頃と7月~8月頃にかけて出現
前翅長14mm~19mm
北海道から九州にかけて分布
雑木林の林縁等に多く生息
食草はタケ科のササ類等
羽の脈がはっきり現れるセセリチョウ。花の他に吸水や獣糞にもよく集まる。