日本を代表するセセリチョウとしてもっとも身近で有名なのは、おそらくイチモンジセセリだろう。
そんなイチモンジセセリに瓜二つな蝶が、今回紹介するチャバネセセリである。
この2種類はにわかには別種とは信じがたい姿形をしており、しかも食草も同じイネ科やカヤツリグサ科と被っており、そうなると当然生息しているところも被ってくるため、よく混在している。
つまりはどちらか片方しか知らなかった場合は、判別を誤っている可能性が非常に高くなる。
ただ、数としてはイチモンジセセリの方が多く、チャバネセセリはあまり多くない印象だ、私の肌感だと7:3~8:2ほどだろうか。
また、私が住んでいる埼玉県では、チャバネセセリは秋の蝶という印象だ。なので関東でチャバネセセリを見たいと思ったら秋に散策することをおすすめする。
肝心の見分け方としては、後ろ羽裏側の斑点模様を見るといい。
これが小さく放射状に4個散りばめられているのがチャバネセセリ。
一方のイチモンジセセリは班紋が大きく、名前の通り一直線に真っ直ぐ並んでいるような形になる。
これが最もわかりやすく確実な見分け方だが、慣れてくると飛んでいるところでなんとなく違いがわかってくるようになる。
なんというか、チャバネセセリの方が全体的に色が薄く、こじんまりとした印象を受ける。
まあもっとも、確実に見分けるにはやはり羽の模様を見る必要があるので、止まったところを観察するなり捕まえるなりすることが1番良い。
ところでセセリチョウと言えば、特徴的なのがその止まり方だ。
他の蝶では見られないジェット機のような止まり方だが、例に漏れずチャバネセセリも日光浴等する際にジェット機止まりを披露する。個人的にこれがかっこよくてめちゃくちゃ好き。
また、飛ぶ速さも並外れており、草原をものすごい速さで横切っていく。この辺りもまるでジェット機を思わせる。
ただ、止まるのも比較的早く、粘っていれば簡単に止まったところを見ることができるだろう。この辺りは短距離スプリンターと言ったところか。
ただ、関東で見られるチャバネセセリは、実は西の方から移動しているのではないかと言われている。
チャバネセセリは元々温暖な気候を好み、暖かくなるにつれて徐々に北上してくる。そのため関東では夏前にはあまり見かけることがなく、盛夏から秋にかけて数が増えるというカラクリだ。
つまりチャバネセセリは、スプリンターのように素早く飛んでいると思ったら、長距離の移動もできるスーパーオールラウンダーな蝶なのだ。
ちなみにこれはイチモンジセセリにも見られる習性で、見た目から好み、習性まで何から何まで似すぎな両種である。
小さく褐色で目立たず、しかも隆盛を極めるイチモンジセセリにそっくりという、何かと不遇な扱いを受けやすいチャバネセセリ。
しかし、その小さな体で旅をしてきたのかと思うと、まったく驚きである。
秋のチャバネセセリの驚くべき能力に思いを馳せてみてはいかがだろうか。
【チャバネセセリ】
成虫は5月~11月頃にかけて出現
前翅長13mm~21mm
本州から南西諸島にかけて分布
日当たりの良い草原や田畑、林縁等に多く生息
食草はイネ科、ササ科、カヤツリグサ科の各種
各地で見られる普通種。イチモンジセセリによく似ている