昆虫散歩道

昆虫をあれこれ撮影してあれこれ語ります

ハラビロカマキリ・・・我こそ主役と言わんばかりのカメラ目線

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樹上が主戦場のハラビロカマキリ

雑木林を歩いていると、オオカマキリやチョウセンカマキリよりも丸っこく、緑が鮮やかなカマキリをよく目にする。それが今回紹介するハラビロカマキリだ。

 

イメージ的にカマキリというと草原のようなところに生息している印象を持つ方が多いかもしれないが、ハラビロカマキリ主戦場が木の幹なので、雑木林等の木が多いところでよく見かける
林道などの木を歩いている輩がいたら、大体ハラビロカマキリだ。
ちなみに周囲に雑木林がまったくない、我が家の玄関先で見たことがあるのだが、ヤツがなぜそこにいたのか未だに不明である。

また、ハリガネムシに寄生されることが多いのも本種である。

 

そんな生態をしているからか、ハラビロカマキリ卵を木の幹や壁面のようなところに産み付けることが多い。カマキリの卵というとオオカマキリように、草や木の枝に産み付ける丸いヤツを思い浮かべる人が多いと思うが、ハラビロカマキリの卵は縦長で、壁面にベターっとくっついている

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ハラビロカマキリの卵。壁面にベタっとくっつく

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こちらはオオカマキリの卵。カマキリの卵と言ったらこれだろう

基本的にTHEカマキリといった容姿をしているので、詳しくない人からしてみれば同じに映るかもしれないが、前述の通りオオカマキリやチョウセンカマキリと比べて全体的に太く、体色も鮮やかな緑とわかりやすいので(褐色等の個体もいる)比較的見分けはしやすい種類と言える。

しかし近年、中国から外来のムネアカハラビロカマキリなるものが移植し、勢力を広げているという。文字通り胸部の裏側が赤いこと等で見分けられるのだが、パッと見ハラビロカマキリとの違いがまったくわからないレベルで酷似しているので、見分けるには捕まえないと難しいようである。
ムネアカは無印よりも体が一回り大きく、両種が競合した場合ムネアカが勢力を広げてしまうという。
私が活動しているところでは、ムネアカはほとんど見ないので、まだ移植していない、もしくは移植していても少数なのだろう。
生態系のことを考えると、現在のように広まらないことが望ましい。

 

ところでカマキリというと、昆虫界隈でも人気の高い昆虫だ。
というのも私がSNSでカマキリの画像やら動画やらを投稿すると、いつもよりもいいねの数が多くなったりする
やはりシュッとしたフォルムに他の昆虫とは明らかに違うかっこいい鎌状の前足を持つために、心踊る人が多いのだろう。

しかし、私的カマキリ最大の魅力は、なんとも言えないつぶらな瞳だ。
この黒ポチが複眼にあることによって、なんとなくちょっと間抜けなかわいらしい顔に見える。

ちなみにこれは「偽瞳孔」と呼ばれるもので、主に物の動きを捉える役割を持つと言われているらしい。

また、カマキリは人間が雑に近付いてもあまり逃げないので、そう言った意味でもベストショットが撮りやすいし、採集勢からしてみたら捕まえる難易度がかなり低い
特にハラビロカマキリは、好奇心なのか警戒心なのかわからないが、撮影をしてるとかなりの確率でカメラ目線を決めてくれる
しかもオオカマキリ等の他のカマキリと違って、木の幹にいることが多いため、被写体としてこれほど良い昆虫は他にないと言っても過言ではない

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見事なカメラ目線。「何見てんのよ」という意思表示かもしれない

かっこよさとひょうきんさを兼ね備えたハラビロカマキリは、いわば秋の昆虫観察の王様と言っても過言ではない。
雑木林でたたずむ彼らを是非とも探しに行ってみよう。

 

ハラビロカマキリ

カマキリ目カマキリ科

成虫は8月~11月頃にかけて出現

体長50mm~70mm

本州以南に分布

林縁の樹上や草地に多く生息

昆虫等を捕食

樹上性が強いカマキリ。他のカマキリに比べ全体的に体が太い