昆虫界の夏の風物詩といえば、やはりその王道はセミで間違いないだろう。
なにせセミは大きな声で鳴くので、昆虫に興味がない方であっても、いやでも耳に入ってくるものである。
そんなセミの中でも、お盆過ぎに最盛期を迎える遅咲きの者といえば、やはりツクツクボウシであろう。
ツクツクボウシは、昆虫に興味がなくても知っている方が多いのではないだろうか。
何より特徴はその鳴き声である。和名の通り「ツクツクボウシ♪」と鳴くので、とても目立つ存在だ。アブラゼミやミンミンゼミのようなシンプルな感じではないので、聞くたびに不思議な音色だなと感心する(時々ちょっと鳴くのが下手なヤツがいるのが、かわいいポイントである)
身近な存在でもあるので、ツクツクボウシが鳴き出したら、夏もそろそろ終わりかあと感じる方も多いのではないか。
地域によって差はあれど、実際ツクツクボウシの最盛期は、お盆過ぎから9月のはじめ頃である。
中には10月頃に鳴いている者がいたりと、かなり遅咲きの存在だ(しかし10月頃に現れて、恋のお相手は存在するのだろうか)
形態的な話をすると、アブラゼミやミンミンゼミ等、他の代表的なセミに比べて細身でシュッとしている。
故に脱け殻も、他のセミに比べて小さめで細くなる。写真だとわかりにくいが、実際フィールドワークで見てみると違いが明らかだ。
体色はミンミンゼミやヒグラシに近いだろうか。羽が透明なのはセミ界においてはマストである。
ツクツクボウシは鳴き声か著名なセミであるが、実際に姿を目撃したという方は意外と少ないのではないだろうか。基本的にツクツクボウシは、木の高い所にいることがほとんどで、高い木を見上げて鳴き声を追わないと、中々見つけられない。しかもアブラゼミ等に比べて警戒心が強めなので、余計に間近で見かけることは少ない。
また体色がかなり保護色をかましているので、声はするのに中々姿を捉えられない事がしょっちゅうである。
そんなツクツクボウシは前述の通り、お盆過ぎから最盛期を迎えるセミである。それはすなわち、夏休みの終わりが残りわずかであることの知らせでもある。故に、小学生の私に強烈なノスタルジーを感じさせるセミでもあったわけだ(昆虫少年だった私が、夏好きだったのは言うまでもあるまい)
ツクツクボウシが鳴き出すと、人生の終了。憂鬱な日常がまた訪れると考えると、なんとも聞きたくない声でもあったわけだ。
とまあなんだか最後にひどいことを言ってしまったが、やはりツクツクボウシの独特な鳴き声は、日本の残暑を賑やかにする素敵な声なわけである。
小学生をセンチメンタルにするその声を聞いて、過ぎ行く夏に思いを馳せてみてはいかがだろうか。
【ツクツクボウシ】
成虫は7月~10月頃にかけて出現
体長29mm~31mm
北海道から沖縄にかけて分布
雑木林等に多く生息
様々な木の汁を吸う
鳴き声が特徴的なセミ。お盆過ぎに最盛期を迎える。