長い冬が終わり、春の陽気が感じられるようになる頃、昆虫たちも暖かい気候に触発されて活発に動き始める。そんな春の代表的な昆虫は、チョウやミツバチ、テントウムシ等がお馴染みだ。
そんな中、人知れず初春に活動の最盛期を迎えるのが、今回紹介するコガタルリハムシだ。
コガタルリハムシは10mmにも満たない小型の甲虫(ハムシ)の仲間で、ギシギシを食べるために、別名ギシギシハムシとも呼ばれている。
完全な黒というよりは青みがかった光沢をしており、小さいながらも美しさのある昆虫だ。
生態は中々風変わりで、初春に冬眠から目覚めた者が繁殖活動を行い、そうして生まれた代が春の終わりから初夏頃に成虫へと成長し、そのまま夏→秋→冬と目立った活動を行わずに土中に潜み、来春に冬眠から覚めて繁殖するという、サボりまくりな一生を過ごす。
すなわちコガタルリハムシは、甲虫類の少ない初春から活動しはじめ、逆に甲虫類の最盛期と言える初夏から夏にかけては姿を消すという、なんともあまのじゃくな生態をしている昆虫なのだ。
ちなみに繁殖期を控えたメスのお腹は卵でパンパンに膨れ上がりすごいことになる。オスと比べるとその差は歴然で、破裂してしまわないかと心配になってくる。
なんとも体が重そうな感じだが、交尾のためにオスが上に乗った状態で歩き回るという、パワフルな一面を覗かせる。
そうして交尾を済ませたメスは、そのままギシギシ等の葉っぱの裏に卵を産み付ける。
幼虫もギシギシやスイバ等の葉を食べるので、親子共々、それらの植物に依存して暮らしていくというわけだ。
すなわちコガタルリハムシを見つけたいのであれば、ギシギシやスイバ等の葉を見つければいいわけで、それさえ見つけてしまえば、あとは時間の問題だ。一足早い春を迎えたコガタルリハムシがお出迎えしてくれるはずである。
ちなみにハムシの仲間は、文字通り葉を食べる甲虫の仲間なので、食べる葉の種類によっては害虫という扱いになる。
スイカやキュウリ等を食べるウリハムシや、ダイコンやハクサイを食べるキスジノミハムシ等々は、農家さんにとって天敵と言うべき存在として知られている。
ところがこのコガタルリハムシは、その食欲をしかしてギシギシを除草するために活かせないかと画策されたこともあるようだ。
実際あまりうまくいかなかったようだが、食べる葉の種類によって善か悪か決められてしまうのも、なんだか気の毒な気がしないでもない。
とまあ各々色々な事情があるわけだが、コガタルリハムシは身近なところでも見られる昆虫なので、河川敷なりに散歩に行けば見つけることができるだろう。
あなたもコガタルリハムシで春の訪れを感じてみてはいかがだろうか。
【コガタルリハムシ】
甲虫目ハムシ科ハムシ亜科
成虫は3月~6月頃にかけて出現
体長5mm前後
北海道から九州にかけて分布
ギシギシやスイバの生える草原に生息
幼虫、成虫共にギシギシやスイバ等の葉を食べる
春のみに出現するハムシ。幼虫は集団で葉を食べるため、枯れてしまう事もある