昆虫散歩道

昆虫をあれこれ撮影してあれこれ語ります

オオモンクロクモバチ・・・えげつない生態をしているハンター

オレンジの差し色が特徴的なオオモンクロクモバチ
ハチというと多くの方は、ミツバチスズメバチといったハニカム構造の巣を作るヤツらを想像するのではないだろうか。彼らは高度な社会性を持っており、普段から巣という社会の一員として暮らしている。
しかし、すべてのハチがそのような社会性を持っているかというと、そんなことはない(なんなら社会性を持つハチの方が圧倒的に少数派である)
今回は社会性を持たない狩りバチの1種オオモンクロクモバチをご紹介していこうと思う。
 
ルックスは画像をご覧の通り、基調となる黒い体に、鮮やかなオレンジ模様の差し色が特徴的で、もちろん和名もここから付けられている。
 
せわしなく歩いたり飛んだりを繰り返していることが多く中々カメラに収まってくれない落ち着きのないハチだ。
 
前述の通り狩りバチの1種なのだが、そもそも狩りバチという存在が、昆虫に興味がない方からしてみたら馴染みが薄いといえよう。彼らは文字通り、他の昆虫等を捕えるという生態をしているのだが、ちょっと特殊なのが、自分自身が食べるために狩りをするわけではないという点だ。ではなぜ狩りをするのかというと、幼虫のエサのために狩りをする
そして、これが中々エグい話ではあるのだが、彼らは狩った昆虫等をすぐに殺したりすることはないではどうするのかというと、お尻の毒針で神経を麻痺させて、生かしたまま体が動かないという状態で獲物を巣に運ぶのだ。そうすることによって獲物が腐ることなく、新鮮な状態を保てるので、それを幼虫が食べてすくすく育つという算段なのだ。こう聞くとかなりえげつない生態をしているハチだ。
 
そして、勘のいい方は気付いたかもしれないが、オオモンクロクモバチは名前の通り、クモを狩りの対象としている。普通に考えたらクモの方が他の昆虫を捕食する存在で、立場が上のように感じるが、オオモンクロクモバチ相手にはどうにも分が悪いようである。
クモを狩ったオオモンクロクモバチは、前述の通り地面に巣穴を掘ってその中に麻痺状態のクモを連れ込みそこに産卵するそれを生まれてきた幼虫が食べて成長しやがて成虫になっていくいうサイクルを繰り返していくのだ。
しかし、生かさず殺さずじわじわと食べられていくクモを思うと、なんとも言えない感情になる話である。

クモを運搬中。しかしえげつない生態
もう1つ名前つながりの話をすると、クモバチはベッコウバチという別の呼び方があり、個人的には子どもの頃持っていた図鑑の表記がほとんどベッコウバチだったので、そちらの方がなじみがある。
故にオオモンクロクモバチも、オオモンクロベッコウという別の呼び方があるのだが、どちらも同じハチのことを指しているので、誤解しないように気を付けよう。
 
社会性のない単独行動をするハチとして、驚きの生態をしているオオモンクロクモバチ。割と身近なところでも見られるハチなので、みなさんも是非とも探し出して、そのハンターぶりに思いを馳せてみてはいかがだろうか。
 
【オオモンクロクモバチ】
ハチ目クモバチ科ナミクモバチ亜科
成虫は5月~9月くらいにかけて出現
体長12mm~21mm
北海道から九州にかけて分布
雑木林の林縁等に多く生息
幼虫はクモを食べる
クモバチの代表種。文字通りクモを狩り幼虫のエサにする。