カメムシというと、一般的には嫌な臭いを放ち、イネなどの植物の汁を吸う害虫であり、時に家の中にまで侵入してくるという虫嫌いの方からしてみたら、地獄のような虫であろう。
しかしそんなカメムシの中で、ひときわまばゆい輝きを放つ者が存在する。それが、今回ご紹介するアカスジキンカメムシだ。
まあ何がすごいって、その見た目があまりにもすごい。画像をご覧いただければお分かりの通り、黄緑色を基調として赤い模様が入り、それだけでも派手なのに、そこからさらに光沢を纏っているというとんでもない見た目だ。
あまりにド派手なので、南国の昆虫のような風情すら漂っているが、南国の昆虫というわけではなく、本州から九州の丘陵地や山地を中心に生息している。
加えてアカスジキンカメムシは、他のカメムシと比べても大型で、その存在感はピカイチである。さらにさらに、体高も他のカメムシよりも立派であり、まるで甲虫の仲間のようなフォルムをしている。
そんな見た目から昆虫愛好家からの人気も高く、「宝石」と形容詞されることもある。
また、アカスジキンカメムシは、幼虫も独特な見た目をしている。なんと白黒なのだ。まるでパンダのような配色で、幼虫にしても他のカメムシと一線を画すような見た目をしているが、ここまで成虫と幼虫の見た目が違うと、にわかには同じ種類とは思えない。ちなみにこの白黒の幼虫は終齢幼虫なのだが、親が大きければ子も大きく、他のカメムシの成虫よりも目立つほどの存在感がある。なぜここまで見た目が違うのかは謎だが、親と子で2度おいしいと考えたら、昆虫好きとしては万々歳である。
ちなみにアカスジキンカメムシは、カメムシ独特の嫌な臭いもほとんどしない。きれいな見た目で臭いも大丈夫となると、もはやカメムシのアイデンティティなど持ち合わせていないようである。
ちなみに食性は他のカメムシ同様植物の汁を吸う。ミズキやフジ、クヌギなどの落葉樹から、スギやヒノキのような針葉樹まで、幅広い木の汁を吸う。その食性から森林性の高いカメムシで、他のカメムシがよくいる河川敷や農耕地といった拓けたところには、基本的に生息していない。
アカスジキンカメムシは件の終齢幼虫で越冬をし、初夏頃に成虫へと羽化する。なので成虫の美しい姿を拝みたい方は、初夏以降に狙いを定めるといいだろう。
ド派手な見た目で圧倒的存在感を放つアカスジキンカメムシ。その姿を一目見れば、あなたも虜になること間違いない。アカスジキンカメムシを探して、その魅力に取り憑かれてみてはいかがだろうか。
【アカスジキンカメムシ】
半翅目キンカメムシ科
成虫は5月~8月頃にかけて出現
体長17mm~20mm
本州から九州にかけて分布
森林周辺や雑木林等に多く生息
ミズキやフジ等、様々な樹木の汁を吸う
光沢と模様が美しいカメムシ。幼虫は姿が大きく異なる。