一般的にテントウムシは、アブラムシを食べる存在であり、ガーデニングが趣味の方や、農家の方にしてみたら、益虫という位置付けとなっている。
ところが、そんなテントウムシ界の常識とはちょっと事情が変わってくるのが、今回紹介するトホシテントウだ。
なぜ事情が変わってくるのかというと、トホシテントウは肉食ではなく草食だからである。
ということはすなわち、人間にとっては害虫になってしまうということなのである。
もっともトホシテントウはウリ科のマメチャヅルやカラスウリ等を食べるため、農作物への被害はそれほどないようである。
ところが、仲間のニジュウヤホシテントウのせいで、どうも害虫扱いされているような気がするのは私だけだろうか。
ニジュウヤホシテントウはトホシテントウと同じマダラテントウ亜科に属するテントウムシで、トホシテントウと同じく草食性である。
問題は食べる植物の種類で、ナスやジャガイモなど、ナス科の植物を食べるため、そりゃあもう農家さんの天敵である。
同じ仲間であるために、昆虫図鑑ではよく両種が並んで紹介されていたりするので、子どもの頃の私は、てっきりトホシテントウもニジュウヤホシテントウ並の害虫だと思っていた。実際の被害状況は気にするほとでもないらしいので、皆さんは勘違いしないように。
見た目的には他のテントウムシと違い、あまりツヤがなく細かい毛が生えているのが特徴である。
和名の通り10個の黒い点があり、またその黒点が大きいため、なんとも存在感がある。顔はなんともつぶらな瞳でかわいい顔をしている。
さて、成虫はちょっと変わった生態ではあるが、テントウムシとしてまあおかしいところはそれほどない。しかし、問題は幼虫である。成虫の姿からは似ても似つかない、わけのわからないトゲトゲの見た目をしている。
あまりに奇抜な見た目なので、はじめて見た時は100度見くらいしてしまった。
ちなみにこんな見た目だが毒があるわけではなく、硬いトゲということもなく刺さる心配もないので、触ってもまったく危険はない。
しかしこんなトゲトゲがテントウムシになるのだから、昆虫の世界は常識など通じないとんでもない世界である。
こんな感じでトホシテントウは、幼虫も成虫も魅力たっぷりの昆虫だ。害虫というほどでもないので、安心して愛でることができる。
トホシテントウを見かけたら、そんな魅力に思いを馳せてみてはいかがだろうか。
【トホシテントウ】
甲虫目テントウムシ科
成虫は5月~9月頃にかけて出現
体長6mm~9mm
北海道から九州にかけて分布
雑木林の林縁等に多く生息
ウリ科のマメチャヅル等を食べる
草食性のテントウムシ。ツヤがなく表面に細かい毛が生えている。