昆虫散歩道

昆虫をあれこれ撮影してあれこれ語ります

ゴイシシジミ・・・チョウの常識を完全無視した白黒のかわいい使者

ササに止まるゴイシシジミ。これがなかなかかわいい
チョウというと成虫は花の蜜や樹液などを吸い、幼虫は葉や草等の植物を食べるのが一般的である。しかし、そんなチョウの常識を真っ向から否定してしまう者が存在する。それが今回ご紹介するゴイシシジミである。
 
ゴイシシジミは日本のシジミチョウ科の中では、唯一のカニアシシジミ亜科(アシナガシジミ亜科)に分類されるチョウである。また。分類のみならず見た目も日本では似た種類が存在せず一発でゴイシシジミだという事がわかる。
 
名前の由来はもちろん黒点が散りばめられた羽の模様から来ている。この和名の付け方には個人的にセンスを感じるのだが、一方で表には碁石模様は存在せず、黒基調の地味な感じとなっている。表裏ともモノトーンの装いとなっており、見る方によっては地味だと感じるかもしれない。

半開きで止まる個体。表はかなり地味だ
ちなみにオスとメスでは前羽の尖り具合に違いがあるオスの方が尖っていて、メスは丸みを帯びている。もっともこれは他のチョウでも結構見られる雌雄の違いなので、割と応用が効く見分け方でもある。

雌雄の見分け方。他のチョウにも応用が効くことも

さて、ここまで分類的なところや、見た目について語ってきたわけだが、一体ゴイシシジミの何がチョウの常識を真っ向から否定してしまうのかというと、幼虫がアブラムシを食べるという点である。可憐なチョウの仲間としてはにわかには信じがたい話であるが、ゴイシシジミの幼虫はまるでテントウムシのような食性をしているというわけだ。
終齢幼虫のみ肉食のように、半肉食性のチョウは他にもいるが、純粋な肉食性となると日本のチョウの中では唯一であり、あまりにも尖りまくった生態であるといえよう。
また、成虫も花の蜜ではなく、アブラムシの分泌液をエサとするという変わった食の好みを持っている。つまり彼らは、幼虫も成虫もアブラムシが必要不可欠ということになる。
それゆえ、そうしたエサとなるアブラムシが生息する笹藪の周辺が生息地であり、ササ類を食草とするクロヒカゲやヒメキマダラヒカゲ等とよく混生している。

産卵するゴイシシジミ。アブラムシがいるところが産卵場所だ

個人的には、小さな体で葉の上にちょこんと乗ってる感じがめちゃめちゃかわいいと感じている。飛び方もゆったりでちらちらと飛んでおり、そんなところもかわいさ度を上げているポイントだ。

日本では他に類を見ない特徴を持ちまくっているゴイシシジミ個性に個性を重ねた上で、さらにかわいいという付加価値も付けてしまっては、探しにいかない手はない。
みなさんもゴイシシジミを探して、その個性の一端を垣間見てはいかがだろうか。

 

【ゴイシシジミ

チョウ目シジミチョウ科カニアシシジミ亜科

成虫は5月~10月頃にかけて出現

前翅長10mm~17mm

北海道から九州にかけて分布

笹薮のある雑木林等に多く生息

幼虫はササやタケにつくアブラムシを食べる

肉食性のシジミチョウ。黒点の模様が特徴的。