平地の自然公園等、木が多めの所にいけば大体生息している身近なチョウに、サトキマダラヒカゲという者が存在する。サトキマダラヒカゲはやや大型のジャノメチョウで、夕刻時に活発にバタバタと素早く飛ぶチョウである。そんなサトキマダラヒカゲと比べて、だいぶスリムなのが、今回ご紹介するヒメキマダラヒカゲである。
画像をご覧になればおわかりの通り、細長い羽をしているので、どことなくシュッとしている印象だ。大きさもサトキマダラヒカゲよりも一回り小さいので、余計にコンパクトな印象を受ける。
模様もサトキマダラヒカゲに比べると落ち着いており、どことなく上品さを感じる装いとなっている。
飛び方も比較的ゆったりとしており、余裕のある風情を感じる。
そんなヒメキマダラヒカゲだが、サトキマダラヒカゲと大きく異なるのが、分布域である。サトキマダラヒカゲが平野部にも広く生息しているのに対して、ヒメキマダラヒカゲは山地でないと生息していない。北海道では平野部でも見られるようだが、本州以南では基本的に標高1000m以上の地域に分布している。
つまり、埼玉県南部のベッドタウンに住んでいる私からしてみたら、そうそう見かけることのないチョウと言えよう。
ただ逆にいうと、山地に行くとそこまで珍しいチョウということもなく、ササの生えた樹林帯であれば、見つけるのは難しくない。
また、もう1点サトキマダラヒカゲと決定的に違うのが、羽を開いて止まることがあるという点である。
サトキマダラヒカゲは羽を開いて止まることがないが、ヒメキマダラヒカゲは、場合によっては半開きや全開などを使い分けるので、採集したりしなくても羽の表の模様を観察することができる。表の羽は裏よりも濃い茶色いで、黄色の斑点が絶妙な美しさを醸し出している。こちらもやはりサトキマダラヒカゲよりも控え目な模様だ。
ヒメキマダラヒカゲは、花を好んで訪れる習性がある。基本的に森林性の高いジャノメチョウの仲間は花を好んで訪れる者は少ないので、少し変わった食の好みを持っているといえよう。そうした花を好んで訪れるところにも、どこかヒメキマダラヒカゲにスマートさを感じる所以である。
スマートな見た目でお上品な装いのヒメキマダラヒカゲ。標高の高いところに生息しているので、避暑がてら探しにいくのもいいだろう。あなたも山の涼しい空気に触れながら、ヒメキマダラヒカゲを見つけてみてはいかがだろうか。
【ヒメキマダラヒカゲ】
チョウ目タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科
成虫は6月~9月頃にかけて出現
前翅長25mm~34mm
北海道から九州にかけて分布
笹の生えた樹林帯に多く生息
食草はイネ科のササ類等
羽が細身なのが特徴。高標高地を主な生息地とする。
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