シジミチョウというと小型の蝶の一群であり、可憐な羽の持ち主も多く、愛好家の方々を楽しませてくれる存在である。
そして、その中でもとりわけ人気が高い「ゼフィルス」と呼ばれる一群が存在する。
そんなゼフィルスの中で、鮮やかな赤い羽の持ち主が今回紹介するアカシジミである。
アカシジミの紹介の前にゼフィルスの話をしておくと、前述の通りシジミチョウの仲間の一群で、樹上性が高く森林や雑木林を主な生息地としている。
語源はギリシャ神話の神から来ており、美しい種類も多いことから愛好家からの人気も高い。
初夏頃に活動をはじめ、ブナ科の植物を食草としている種類が多いのも特徴だ。
その事を踏まえてアカシジミを見ていくと、5月の終わり頃に出現し、ブナ科のクヌギやコナラ等を食草にしているという、典型的なゼフィルスライクな生態をしている。
ゼフィルスの中でも割と身近な種類で、都市部でもまとまった雑木林があれば見ることができる。
日中は不活発で木陰等でじっとしていることが多く、夕方頃になると活発に樹上を飛んでいる姿をよく目にするようになる。
図鑑では、早朝以外はあまり下に降りてこないとの記載が多いが、個人的には割と日中に下草付近で見かけることも多いので、場所によりけりなのだろうか。
アカシジミには、見た目がそっくりなカシワアカシジミという種類が存在するのだが、これは北海道や東北、中国山地の一部にしか生息していない希少種で、埼玉のベッドタウン在住の私には到底縁がない。
ここらでアカシジミと対の存在として語られるのは、ウラナミアカシジミである。
ウラナミアカシジミは文字通り、羽の裏の模様が独特で波のように見えるため、アカシジミとはすぐに見分けがつく。ただ、飛んでいる所は別種に見えないので、止まったところを確認する必要がある。
生態もアカシジミと似ているため混在している所も多い。波ありが波なしか、どちらか予想しながら観察するのも中々乙なものである。
ちなみに同じシジミチョウの仲間であるベニシジミは、和名の意味がまったく同じで言葉だけ入れ替えたような感じになっているが、見た目も生態もまったく異なっているので、混同しないように(どちらが先に和名が付けられたのかはわからないが、もうちょっと違う和名を付けようとは思わなかったのかと思わなくもなくもない)
アカシジミが活動を開始する時、それはすなわち蝶愛好家のハイシーズン突入を意味する。
私も例に漏れず、アカシジミを見つけるとテンションが上がってしまい、ついつい何枚も写真を撮ってしまうわけである。それだけの魅力がアカシジミにはあるということなのだ。
初夏の雑木林を赤く彩るアカシジミを、あなたも探してみてはいかがだろうか。
【アカシジミ】
成虫は5月~6月頃にかけて出現
前翅長16mm~22mm
北海道から九州にかけて分布
クヌギやコナラが生える雑木林でよく見られる
食草はブナ科のコナラやクヌギ等
ゼフィルスの1種。都市近郊でも雑木林があれば見ることが出来る。