カブトムシやクワガタムシ、カミキリムシやテントウムシ等、甲虫の仲間には人気者が多く、昆虫採集の主役たちが集まっている。
そんな甲虫の中で、名前に「死」を冠したなんとも不吉な者が存在する。それがシデムシだ。
今回はシデムシの中でも最も普通種であるオオヒラタシデムシを紹介していこうと思う。
そもそも昆虫に興味がない方からしたら、シデムシとはなんぞやという感じだろう。
前述の通り甲虫の仲間で、漢字で書くと「死出虫」
なぜこんな漢字を書くのかというと、主な食事が動物の死体だからである。
もちろんオオヒラタシデムシも例に漏れず、小動物の死体を主な食料としている。
時に大勢で群がって食べていることもあるので、おそらく昆虫嫌いの方は発狂ものなのではないだろうか。
そんな生態なのでオオヒラタシデムシの主戦場は地表だ。基本的に見かける時は地べたを這っていることがほとんどである。
形態的な話をしておくと、メスはお尻が長く突出しているので見分けるのは容易である。
また、よく似たヒラタシデムシという種も存在するのだが、北海道にしか生息していないようで、埼玉のベッドタウンに住んでいる私には中々縁遠い存在のようである。
また、言及しておかなければいけないのは幼虫の姿だ。
これがもうなんだか三葉虫のようなすごい見た目なのだ。こんなキャタピラー感満載の姿で地べたを這っていくものだから、これは無理な方は絶対に無理だろう。
ちなみにこの幼虫は、はじめのうちは土中で親が用意してくれた、愛情たっぷりの肉団子を食べて育つが、やがて自立して自らエサを求めて地表を歩き回るようになる。
その頃には親と一緒に仲睦まじく食事する事もあるので、なんとも微笑ましい限りである(違うか?)
とまあ、ここまで記事をお読みになった方は「オオヒラタシデムシ良いところなくねえか?」と思ったことだろう。
確かに死体に群がり、幼虫がキャタピラー感満載だと、気味悪がられるのも無理はないかもしれない。しかし、それはすなわちオオヒラタシデムシが分解者として重要な役割を担っているという事でもある。彼らが動物の死体を食料として土に還元することで、自然界はうまいこと循環しているというわけなのだ。そう考えると彼らの生態も不気味ではなく、大きな意義があると言えよう。
自然界の一員としてせっせと活動しているオオヒラタシデムシ。彼らがただ地上を這っているだけではないとわかると、なんだか見方も変わってこないだろうか。
是非とも身近な分解者のオオヒラタシデムシを探して、その働きに思いを馳せてみよう。
【オオヒラタシデムシ】
甲虫目シデムシ科シデムシ亜科
成虫は4月~10月頃にかけて出現
体長18mm~23mm
北海道から九州にかけて分布
雑木林の地表等に多く生息
小動物の死体等を食べる
最も普通種のシデムシ。幼虫はキャタピラー感あるフォルムをしている。