草原を彩る昆虫と言えば、パッと思い浮かぶのはやはり蝶だろう。彼らはそれぞれ個性的で可憐な羽を携えて飛び回っているために、我々の目にも止まりやすい。
そんな蝶の中で、小さくて素早く飛ぶので目を凝らさないと見失ってしまいそうな者がいる。それが今回紹介するベニシジミだ。
ベニシジミは草原さえあればどこにでもいるようないわゆる普通種だが、前述の通り、アゲハチョウやモンシロチョウと比べてとても小さく、かつ素早く飛ぶので、気にしていないと中々その存在に気付かないだろう。故に身近な存在であるが、一般的な知名度はそこまで高くない印象だ。
名前の通り赤い羽がトレードマークで、日本に同じような模様の蝶は他に存在しないので、誰でも容易に見分けることができる。昆虫観察の入門種としてはもってこいの蝶であると言えよう。
また、素早く飛ぶので見失いそうになると述べたが、反面長時間飛び続けるということはほとんどないので、飛んでる前で粘っていれば、そのうちどこかに止まってくれるだろう。
それでいて、よく映える可憐な羽の模様。どこまでも初心者に優しい蝶である。
ベニシジミは、例えばその辺の河川敷の土手なんかに行けばかなりの確率で見つけることができるわけだが、なぜそこまで身近な所にいるのかと言えば、ギシギシやスイバといった植物を食草としている点が大きい。
これらの植物は河川敷に行けばどこでも生えているので、故にそれを食草にしているベニシジミも身近にたくさん見られるというのも合点がいく。
それに加えて、春から秋までの長い期間成虫が見られるので、観察しようと思えばいつでも観察できる(私の経験では、3月から活動を始める者を見たことがあるし、12月に入ってからもまだ活動している者を見たことがある)
表の赤が鮮やかに出るのが特徴だが、夏型は全体的に赤がかすれたような模様になり、春型と比べると地味な色合いをしている。
基本的に長い期間見られ、季節型が存在するチョウは、夏型の方が落ち着いた色合いになる者が多い(例えばアゲハチョウは夏型の方が黄色い部分が狭くなるし、キタテハは秋型の方がオレンジが鮮やかに出る)
ということはすなわち、ベニシジミの最盛期は春だと言えよう。事実、冬が終わり陽気が暖かくなると、草原をせわしなく飛び回っているのをよく目にする。
ベニシジミは身近な所にいつでも見られるので、蝶愛好家の方々からはあまり人気がない。
しかし、私は大好きな蝶である。なぜならめちゃくちゃかわいいからだ。
羽の模様もさることながら、触覚や顔も中々キュートで、とにかく全体的にかわいい。
身近な種だが、見かけるとついつい追いかけてしまうのは、そのかわいさ故の事だ。
春の陽気が感じられるようになったら、是非ともベニシジミを探しに行ってみよう。可憐な羽で我々を迎えてくれるはずである。
【ベニシジミ】
成虫は3月~11月頃にかけて出現。
前翅長13mm~19mm
北海道から九州にかけて分布
日当たりの良い草原等でよく見られる
食草はタデ科のスイバやギシギシ等
草原を代表するシジミチョウ。鮮やかな赤い羽がチャームポイントだ