昆虫散歩道

昆虫をあれこれ撮影してあれこれ語ります

イチモンジセセリ・・・幼き日の大論争の答えを今導き出さんとす

イチモンジセセリ。めちゃくちゃ飛ぶのが速い

幼い頃の私は昆虫採集が好きな少年だった。

その中でも特に蝶が好きで、近所にいる蝶でわからない種類など存在しないという程であった。
そんな私にはイチモンジセセリを巡った印象深い思い出がある。
 
それは私がまだ小学生だった頃。家の近所で飛び交うイチモンジセセリを捕まえて観察していたら、近所に住む友人がやってきた。
私が「蝶を捕まえた」と意気揚々と話しかけたら、友人は訝しげな顔をして
 
「いやいや、蛾じゃん」
 
と言い放ったのだ。
 
当然私は納得がいかない。なぜなら幼き日の私は昆虫図鑑をボロボロになるまで読み漁り、クラスの誰よりも昆虫に詳しく、特に蝶に関してはその辺の蝶で知らないものはないという自負があったからだ。
必死にこれはイチモンジセセリという種類でれっきとした蝶なんだと、冤罪を晴らすかのごとく熱弁したが、結局その友人は最後まで蛾であると信じて止まなかった
 
大人になった今、改めてその友人にこの場を借りて物申したい。
 
「その気持ちもわかる。」
 
だってなんか茶色いし、胴体太いし、普通の人は蝶=アゲハチョウとかモンシロチョウとかのイメージだから、なおさらそう思っても仕方がない。
 
そもそも分類上は蝶も蛾も鱗翅目という、大きな括りでは同じ仲間なのだ。なのでまあ、イチモンジセセリも広義には蛾と同じということになる。
 
イチモンジセセリと言えば個人的にお気に入りなのはその止まり方だ。
前羽を立てて止まる独特な止まり方セセリチョウの仲間に多く見られる。なんだかジェット機みたいでかっこいい。私は個人的にセセリ止まり」と呼んでいる。
というかそんな止まり方して羽は大丈夫なのだろうか。毎回心配になるが、ずいぶんと羽が柔軟なのねと感心する。

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前翅を立てて止まる、必殺「セセリ止まり」
しかしこのイチモンジセセリには似ている種類が多すぎてもはや何がなんだか私にはよくわからない。チャバネセセリやらオオチャバネセセリやらミヤマチャバネセセリやら・・・図鑑とにらめっこしても、毎回どこが違うのかと問い詰めたくなる。
野外で正確に見分けるのは難関大学に合格するくらい難しいのではないか。「んなおおげさな」と思った人はぜひとも挑戦してみてほしい。

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チャバネセセリとオオチャバネセセリ。詳しい見分け方はまた後日ゆっくり語りたい
少し真面目に生態を語ってみると、イネ科カヤツリグサ科の植物を食草としている。そのため農家さんからしてみたら害虫という扱いになる。
そういえば小学生の頃、教育実習で育てていたイネに薄緑色の芋虫が付いていたことを思い出すが、今にして思えば完全にこやつのお子様である。
 
後はこの蝶は長距離の渡りをすることでも有名である。アサギマダラウラナミシジミ等渡りをする蝶は結構いるが、その小さな体のどこにそんなパワーがあるのかと、いつも不思議に思う。
 
とにかくこの蝶も、その辺を歩けば簡単に見つかる蝶の代表格だ。探索に出かけた際は高確率でお出迎えされることになるので、そのつもりで覚悟しておいてほしい。
 
 
成虫は6月~10月頃にかけて出現
前翅長15mm~21mm
北海道から九州にかけて分布するが、北海道にはあまり生息していない
様々なところに生息し、水田や河川敷の草原はもちろん市街地でも見られる
食草はイネ科やカヤツリグサ科の各種植物
移動性の高い蝶で、定着しているのは関東以西と言われている