幼い頃の私は昆虫採集が好きな少年だった。
その中でも特に蝶が好きで、 近所にいる蝶でわからない種類など存在しないという程であった。
そんな私にはイチモンジセセリを巡った印象深い思い出がある。
私が「蝶を捕まえた」と意気揚々と話しかけたら、 友人は訝しげな顔をして
「いやいや、蛾じゃん」
と言い放ったのだ。
当然私は納得がいかない。 なぜなら幼き日の私は昆虫図鑑をボロボロになるまで読み漁り、 クラスの誰よりも昆虫に詳しく、 特に蝶に関してはその辺の蝶で知らないものはないという自負があ ったからだ。
大人になった今、改めてその友人にこの場を借りて物申したい。
「その気持ちもわかる。」
だってなんか茶色いし、胴体太いし、普通の人は蝶= アゲハチョウとかモンシロチョウとかのイメージだから、 なおさらそう思っても仕方がない。
イチモンジセセリと言えば個人的にお気に入りなのはその止まり方 だ。
というかそんな止まり方して羽は大丈夫なのだろうか。 毎回心配になるが、ずいぶんと羽が柔軟なのねと感心する。
しかしこのイチモンジセセリには似ている種類が多すぎて、 もはや何がなんだか私にはよくわからない。 チャバネセセリやらオオチャバネセセリやらミヤマチャバネセセリ やら・・・図鑑とにらめっこしても、 毎回どこが違うのかと問い詰めたくなる。
そういえば小学生の頃、 教育実習で育てていたイネに薄緑色の芋虫が付いていたことを思い 出すが、今にして思えば完全にこやつのお子様である。
とにかくこの蝶も、その辺を歩けば簡単に見つかる蝶の代表格だ。 探索に出かけた際は高確率でお出迎えされることになるので、 そのつもりで覚悟しておいてほしい。
【イチモンジセセリ】
成虫は6月~10月頃にかけて出現
前翅長15mm~21mm
北海道から九州にかけて分布するが、北海道にはあまり生息していない
様々なところに生息し、水田や河川敷の草原はもちろん市街地でも見られる
食草はイネ科やカヤツリグサ科の各種植物
移動性の高い蝶で、定着しているのは関東以西と言われている