アゲハの仲間は大型で目立つ存在であり、昆虫に興味がなくても目に付く事が多いのではないだろうか。
その中でも黒いアゲハチョウ、すなわちクロアゲハは、人々に広く知られているチョウの1種と言って差し支えないだろう。
しかし、ジャコウアゲハと言われると、いまいちピンと来ない方も多いのではないか。今回はそんなジャコウアゲハを紹介していこうと思う。
パッと見クロアゲハと変わらないが、羽が縦長で尾状突起(後ろ羽のしっぽ)もジャコウアゲハの方がかなり長い。そして、体が赤いのが最大の特徴である。
ちなみにメスはオスに比べてかなり薄い色をしており、クロアゲハとは似ても似つかない感じになっている(というより、オスとすらだいぶ違う感じだ)
さらに幼虫は、もはやアゲハチョウの仲間のそれとは思えない容姿をしている。
しかしとてもチョウの幼虫とは思えない見た目だ。なぜこんな見た目になってしまったのかよくわからないが、まあ独特な路線を突き進んだものである。
名前の由来は香料の麝香(じゃこう)から来ている。オスが麝香のような匂いを発することが名前の由来となっているというわけだ(ちなみに麝香とは、ジャコウジカのオスから取ることのできる香料の事である)
雑木林等でもちょこちょこ見かけるが、主戦場は河川敷等の草原だ。とりわけ食草であるウマノスズクサが生えている所が生息地で、そうした所ではあちこちで飛び回っている姿を見ることができるだろう。
アゲハの仲間は素早く飛び回る種類が多いが、ジャコウアゲハはふわふわと飛んでいる事が多い。比較的止まることも多く、カメラマン的には写真が撮りやすいアゲハチョウと言える。
前述の通り食草はウマノスズクサである。
このウマノスズクサには毒があり、そんな物を食草としているジャコウアゲハは、なんと体内に毒を溜め込んでいるのだ。そうすることによって、鳥等の天敵からの補食を逃れているわけである。
そして、そんな有毒のジャコウアゲハに擬態する者も多い。クロアゲハやアゲハモドキ等が、ジャコウアゲハに擬態をしているとされている。
こうした有毒種に似せた擬態をベイツ型擬態と呼び、多くの生物が採っている生存戦略でもある。
そんな有毒のジャコウアゲハだが、刺したりなんだりと危害を加えるわけではないので、安心していただきたい。
草原を優雅に飛び回るジャコウアゲハは存在感抜群だ。
クロアゲハだと思っていたものがクロアゲハでないとなると、新たな発見があって面白い。
ふわふわ飛んでいるジャコウアゲハを追いかけて、その違いを確かめてみてはいかがだろうか。
【ジャコウアゲハ】
チョウ目アゲハチョウ科アゲハチョウ亜科
成虫は4月~10月頃にかけて出現
前翅長42mm~60mm
本州から南西諸島にかけて分布
河川敷の草原等拓けたところに多く生息
食草はウマノスズクサ科のウマノスズクサ等
草原をふわふわと飛ぶアゲハチョウ。体内に毒を有している。
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