春になり暖かな陽気が続くと、チョウたちが一斉に活動をはじめるようになる。そんな中でもモンシロチョウは、春先一番に活動をはじめるチョウである。しかし、そんなモンシロチョウだと思われていたチョウは、実は違うチョウかもしれない。今回は春先にモンシロチョウと混同されがちなチョウ、ツマキチョウをご紹介していこうと思う。
中々聞きなじみのないチョウだと思うが、そこまで珍しいチョウというわけではなく、河川敷や林縁の草原等で割と普通に見かけるチョウである。モンシロチョウとの最大の違いは、やはり羽の形であり、前羽の先端が尖ったような形をしている。そして、その尖った先端が何やらオレンジっぽくなっている。このカラーリングが和名の由来となっており、ツマキチョウの「ツマ」は漢字で表すと「褄」。すなわち物の端という意味がある。要するに羽の端っこが黄色いチョウで「ツマキチョウ」という和名が付けられたというわけだ。
しかし、ここが黄色いのはオスだけで、メスは普通に白いので雌雄の見分けはすぐにつく。
しかし、こんなにモンシロチョウと違う特徴があるのなら、見間違えることなどないだろうと思う方が多いかと思うが、これが飛んでいると中々見分けが付かない。ツマキチョウはモンシロチョウと比べて小ぶりで直線的に飛ぶ傾向にあるが、慣れるまでは見分けるのは中々難しいだろう。
しかもツマキチョウは、比較的ゆっくり飛んでいる事が多いのだが、なぜか中々止まってくれなかったりする。そのためひらひら飛び去っていく白い姿を、モンシロチョウだと思い込んでしまう事も多いだろう。ツマキチョウを判別したければ、モンシロチョウだと決めつけるのは禁物だ。
全体的に白いので、特段保護色感はないが、寝る時等羽を閉じてコンパクトになると、かなりの保護色を発揮する。こうなると中々見つけるのは難しくなるので、この姿を見る事ができたらラッキーかもしれない。
そしてツマキチョウの大きな特徴といえば、成虫が春にしか出現しない点だ。出現期は3月〜5月で、私が住んでいる埼玉県南部だと、5月の下旬にはほぼ見ることはない。そのためツマキチョウを見ようと思ったら、きちんと春にフィールドワークをしておかなければならない。
こうした春だけ出現するチョウの事を
スプリングエフェメラル(春のはかない命の意)といい、
これらのチョウを観察することによって、
チョウ好きの1年が幕を開けると言っても過言ではない。
期間限定で尖った羽を披露してくれるツマキチョウ。草原にこのチョウが舞うとき、チョウシーズンの到来となるわけである。
みなさんもツマキチョウを探しに行って、新年度のスタートを感じてみてはいかがだろうか。
【ツマキチョウ】
チョウ目シロチョウ科シロチョウ亜科
成虫は3月~5月頃にかけて出現
前翅長20mm~30mm
北海道から九州にかけて分布
日当たりの良い林縁や草原に多く生息