昆虫散歩道

昆虫をあれこれ撮影してあれこれ語ります

モモブトカミキリモドキ・・・後ろ足だけ過剰に筋トレしたの?

足が異様に太いモモブトカミキリモドキ。そこだけ鍛えすぎだろ

カミキリムシといえばいかつい顔がかっこいい、人気の甲虫だ。種類によって様々な模様をあしらい、我々昆虫好きの目を楽しませてくれる。しかしそんなカミキリムシには、似て非なる別物である、カミキリモドキという者が存在する。今回はカミキリモドキの仲間であるモモブトカミキリモドキを紹介していこうと思う。

モモブトカミキリモドキは4月頃になると続々と現れる、1cmにも満たない甲虫だ。かなり小さいので中々目に止まらないかもしれないが、都市部近郊でも割と生息している、いわゆる普通種といえる存在だ。

小さいのでわかりにくいが、ちゃんとカミキリムシライクないかつい顔をしているので、カミキリモドキと言われるのも納得である。

 

カミキリモドキの仲間は甲虫であるにもかかわらず羽が柔らかく、かつ有毒種であることが多い。モモブトカミキリモドキも例外ではなく、体内にカンタリジンという毒を持っているので、不用意に触ったり潰したりしない方が賢明である。

拓けた草原よりは日当たりの良い林縁のようなところを主な生息地としているので、雑木林や樹林公園みたいな所に行くとよく目にする存在である。

和名の由来はもちろん後ろ足が太いところから来ている。画像を見ていただければわかると思うが、なんとまあ立派なフトモモだろうか。きんに君も真っ青の鍛えっぷりである。
しかし、そんなフトモモを誇るのはオスだけで、メスはまったく太くない。それどころか、なんならかなり貧弱な感じすら受ける足をしている。私が持っているポケット図鑑には、モモブトカミキリモドキがしっかりと載っているのだが、もしオスもこんなような足だったら、スルーされていたのではないかと邪推してしまう(色も青みがかった黒一色なので、足が太くなかったら本当に特徴がない昆虫だっただろう)

こちらはメス。いや足貧弱すぎだろ

そんなモモブトカミキリモドキであるが、フィールドワークをしていると目に付くことが多い。それはなぜかというと、前述のように春先から活動しはじめる点がひとつある。春先は昆虫が多くなく、特に甲虫は少ないので、余計に目に付く存在だ。
また、花の上にいることがとても多いのも、よく目に付く一因といえる。これは食べ物が花の花粉だからである。そのため、タンポポハルジョオンといった、春を代表する花の上に鎮座していることが多い。だからこそ、小さな存在であるが、我々の目によく止まるともいえよう。

タンポポに来たモモブトカミキリモドキ。なんちゅう特等席

三つ巴の争いに発展?

春も早めに登場するモモブトカミキリモドキ。自慢の足で花から花へと渡り歩く様子は春の風物詩ともいえよう。春の暖かい陽気にモモブトカミキリモドキを見つけて、その足の太さに驚いてみてはいかがだろうか。

 

【モモブトカミキリモドキ】

甲虫目カミキリモドキ科

成虫は4月~6月頃にかけて出現

体長5.5mm~8mm

北海道から九州にかけて分布

林縁等に多く生息

幼虫はススキの茎や朽ち木の中で育つ

足が異様に太い甲虫。メスの足はまったく太くない

ギフチョウ・・・チョウ好きの心をくすぐり続ける春の女神

春のチョウといったらやっぱりギフチョウ。その姿はまさに春の女神

 春と言えばチョウが飛びはじめる季節。色とりどりの羽を駆使してあちこちを飛び回る姿は、なんとも可憐なものである。そんな可憐なチョウの中でも、ひときわ存在感がありチョウ好きの人気を欲しいままにしているのが、今回紹介するギフチョウだ。


一般的な知名度が高いわけではないが、チョウ好きであれば知らない者は存在しない。
なぜそこまで人気なのかといえば、要因はいくつかある。
 
ひとつは生息地が限られている点だ。
ギフチョウ西日本を中心に分布しているが、どこでも生息しているようなチョウではない(北海道、四国、九州には生息していない)
基本的には日当たりの良い林床等に生息しており、植物が生い茂りすぎたところや、逆にあまりに拓けたところには生息していない。よく管理された里山環境が減った現在では、生息地が狭まるのは必定といえよう。
関東では神奈川県の一部に生息地があるのみと言われており、埼玉県南部に住んでいる私からしたら、かなり縁遠い存在である。そのため多くの自治体が天然記念物に指定しており、力を入れて保護活動を行っている。
ちなみに和名のギフチョウは、はじめて学会に発表された個体が岐阜県産だったことに由来する(それ以前はダンダラチョウと呼ばれていた)
日本固有種のため、世界でも日本にしか生息していない。
 
また、成虫が出現するのが春のみという点も、そのレア度を上げているといえよう。地域によって異なるが、ギフチョウが出現するのは大体3月下旬から5月頃にかけてであり、まさに春限定。そんな春しか見られないギフチョウスプリングエフェメラル(春のはかない命の意味)と呼ばれ、チョウ好きの春の幕開けを告げるチョウともいえる。

ギフチョウといえばカタクリ。最高の組み合わせである
そしてやはり、見た目にも美しい羽が、チョウ好きの心をくすぐる。
この羽が地域によって変異があり、そうした違いを楽しむのも、チョウ好きのマストとなっている。
生息地が限られていて出現期間も短い、可憐な見た目に地域差が表れるともなれば、そりゃ人気が出るのは必然といえよう。

長野県白馬村産のイエローバンド。後羽の縁が黄色くつながるのが大きな特徴
そんなギフチョウにはそっくりな対になるヒメギフチョウという種が存在する。
西日本を中心に分布するギフチョウに対し、ヒメギフチョウ東日本を中心に分布する関東では群馬県の一部にしか生息しておらず、やはり私にとっては、中々簡単に見られるチョウではない。
両者はかなり明確に分布域を分けており、数ヶ所を除いて同じところに生息しているということはないこのギフチョウヒメギフチョウの分布の境目をリュードルフィアラインと呼ぶ。

こちらはヒメギフチョウギフチョウそっくり

ちなみに、よく似た両者は前羽先端付近の模様や、後羽の縁付近の模様で見分けられる詳しくは画像をご参照いただきたい。

見分け方その1。微妙な違いである

見分け方その2。こっちの方がわかりやすい
ギフチョウのオスは中々えげつない生態をしており、交尾をしたメスが他のオスと交尾できないように、受胎曩という粘り気のある物質をお尻の先に付けてしまう
ただでさえ数が少ないのだから、そんなことしたら余計に少なくなってしまうのではないかと心配になるが、それによって子孫を繋いで来たのだから、余計なお世話なのだろう。
 
春の訪れを告げる特別なチョウであるギフチョウ見つけるのは簡単ではないが、見つけたときの感動は何物にも代えがたい。
みなさんもギフチョウ探しにチャレンジして、その感動を味わってみてはいかがだろうか。
 
チョウ目アゲハチョウ科ウスバアゲハ亜科
成虫は3月~5月頃にかけて出現
前翅長27mm~36mm
本州(秋田県から山口県)に分布
雑木林の林縁や日当たりの良い林床等に多く生息
春を代表するチョウの1種。各所で保護活動が行われている。

ツマキチョウ・・・羽の先端を尖らせた春限定のチョウ

羽先が尖るツマキチョウ。春限定のチョウだ

参考までにモンシロチョウ。丸くなったなあ

春になり暖かな陽気が続くと、チョウたちが一斉に活動をはじめるようになる。そんな中でもモンシロチョウは、春先一番に活動をはじめるチョウである。しかし、そんなモンシロチョウだと思われていたチョウは、実は違うチョウかもしれない。今回は春先にモンシロチョウと混同されがちなチョウ、ツマキチョウをご紹介していこうと思う。

 
中々聞きなじみのないチョウだと思うが、そこまで珍しいチョウというわけではなく、河川敷や林縁の草原等で割と普通に見かけるチョウである。モンシロチョウとの最大の違いは、やはり羽の形であり、前羽の先端が尖ったような形をしている。そして、その尖った先端が何やらオレンジっぽくなっているこのカラーリングが和名の由来となっており、ツマキチョウのツマ」は漢字で表すと「褄」。すなわち物の端という意味がある。要するに羽の端っこが黄色いチョウで「ツマキチョウ」という和名が付けられたというわけだ。
しかし、ここが黄色いのはオスだけで、メスは普通に白いので雌雄の見分けはすぐにつく。

メスのツマキチョウ。羽先が白い
しかし、こんなにモンシロチョウと違う特徴があるのなら、見間違えることなどないだろうと思う方が多いかと思うが、これが飛んでいると中々見分けが付かないツマキチョウはモンシロチョウと比べて小ぶりで直線的に飛ぶ傾向にあるが、慣れるまでは見分けるのは中々難しいだろう。
しかもツマキチョウは、比較的ゆっくり飛んでいる事が多いのだが、なぜか中々止まってくれなかったりするそのためひらひら飛び去っていく白い姿を、モンシロチョウだと思い込んでしまう事も多いだろう。ツマキチョウを判別したければ、モンシロチョウだと決めつけるのは禁物だ。
 
全体的に白いので、特段保護色感はないが、寝る時等羽を閉じてコンパクトになると、かなりの保護色を発揮するこうなると中々見つけるのは難しくなるので、この姿を見る事ができたらラッキーかもしれない。

羽を閉じて休息すると、中々の保護色だ
そしてツマキチョウの大きな特徴といえば、成虫が春にしか出現しない点だ。出現期は3月〜5月で、私が住んでいる埼玉県南部だと、5月の下旬にはほぼ見ることはない。そのためツマキチョウを見ようと思ったら、きちんと春にフィールドワークをしておかなければならない。
こうした春だけ出現するチョウの事をスプリングエフェメラル(春のはかない命の意)といい、これらのチョウを観察することによって、チョウ好きの1年が幕を開けると言っても過言ではない。
 
期間限定で尖った羽を披露してくれるツマキチョウ。草原にこのチョウが舞うとき、チョウシーズンの到来となるわけである。
みなさんもツマキチョウを探しに行って、新年度のスタートを感じてみてはいかがだろうか。
 
【ツマキチョウ】
チョウ目シロチョウ科シロチョウ亜科
成虫は3月~5月頃にかけて出現
前翅長20mm~30mm
北海道から九州にかけて分布
日当たりの良い林縁や草原に多く生息
春先だけ出現するチョウ。飛んでいるとモンシロチョウと見分けが付きにくい。

 

mushisagashi.hatenablog.jp

クロウリハムシ・・・目立たずとも身近なところに生息する存在

黒い羽とオレンジの顔とお腹が特徴的なクロウリハムシ

甲虫の仲間は実に種類が多く、大小様々は者が存在する。そんな甲虫の中に、ハムシという者が存在する。中々昆虫に興味がない方からしたら、聞き慣れない存在かもしれないが、実は身近な所に生息している者も多い。今回はそんな身近なハムシの仲間、クロウリハムシを紹介していこうと思う。

そもそもハムシとはどんな昆虫なのかというと、漢字で表すと葉虫」すなわち葉を食べるからその名が付いた昆虫だ。基本的に小型な昆虫で、クロウリハムシは10mmにも満たない大きさだ。一般的な知名度のなさは、この辺りの目立たなさが一因かもしれない。
そして、ハムシの仲間にはイタドリハムシクルミハムシ等、食べる葉の種類がそのまま和名になっている者が多いのも特徴だ。

こちらはイタドリハムシ

こちらはクルミハムシ。みんな小さいな存在

さて、ここでピンと来た方も多いだろう。そう、クロウリハムシはウリ科の植物を食べるというわけだ。そして、クロ」ウリハムシということは、黒くないウリハムシも存在するということだ。
実際ウリハムシは、クロウリハムシの黒い部分をオレンジにしたような感じだ。
ウリハムシクロウリハムシも、身近に見られるハムシではあるが、個人的な体感でいくと、クロウリハムシの方がより身近な存在だと感じる。畑や林縁はもちろん、時には住宅街の一角でも見られることがあるので、みなさん気付かないだけで、知らず知らずのうちにクロウリハムシを目撃しているはずだ。

こちらはウリハムシクロウリハムシの羽がオレンジになった感じ

そして、さらに勘のいい方は気付いたかと思うが、クロウリハムシは文字通りウリ類を食べるほか、ダイズなんかも食べるため、要するに害虫という立ち位置になってしまう(もちろんウリハムシも同じような食性なので、害虫ということになってしまう)
加えて幼虫はウリ類の根を食べるという生態をしているため、どちらにしても害虫という立ち位置からは逃れようがない。
クロウリハムシが葉を食べた後は、独特な丸い食痕ができてしまうので、農家さんからしたら中々厄介な存在である。この辺は葉を食す昆虫の運命というか、やむを得ない部分といえよう(食する葉の種類で害虫かどうかが決まってしまうのは、なんとも言えないような気もするが)

クロウリハムシの食痕。葉っぱが丸っぽい痕になってしまう

まあそんな害虫のレッテルを張られてしまっているクロウリハムシであるが、よくよく見ればかわいらしい顔をしているではないか。
小さな昆虫でもよく観察してみると、様々な発見があったりもする。クロウリハムシを見つけたときは、1度レッテルをはがして、新たな魅力を見つけてみてはいかがだろうか。

 

クロウリハムシ

甲虫目ハムシ科ヒゲナガハムシ亜科

成虫は4月~9月頃にかけて出現

体長6mm~7mm

本州から沖縄にかけて分布

畑や林縁等に多く生息

幼虫はウリ類等の根を食べる

黒い羽が特徴的なハムシ。住宅街でも時折見られる身近な存在。

ウラギンシジミ・・・明らかに他のシジミチョウと一線を画すシジミチョウ

 

真っ白な裏面が特徴的なウラギンシジミ

昆虫は実に多くの種類が存在し、時に見分けるのが難しい者もかなり多い。そして、昆虫好きは日夜それらの判別をするために頭を悩ませているものである。

しかし中には、明らかに他の種類と違うために、まったく悩まずに種を判別できる者も存在する。今回紹介するウラギンシジミは、まさに見分けるのが簡単なチョウだ。
 
文字通りシジミチョウの仲間であるが、羽の形や模様、体の感じまで他のシジミチョウとまったく似ていない日本国内には似ている種が存在しないため、一撃でウラギンシジミと判別できる。
 
そんな形態的な特徴でいくと、やはり1番目につくのは和名の由来にもなっている羽の裏面だろう。まさに白一色といった感じになっており、なんとも独特だ。そして羽の先がとがっているような感じになるのも、他のシジミチョウにはない特徴である。体の感じもなんとも言えない独特なフォルムをしており、不思議な感じすら受ける。
加えて他のシジミチョウと比べても一回り大きいので、とことん我が道を突き進んでいると言えよう。
実際日本に近縁の種は存在せず、シジミチョウ科ではなくウラギンシジミ科とする向きもあるほどで、いかに独自の路線を取っているかがわかる。
 
さて、そんな形態的に珍しいウラギンシジミであるが、実際には珍しいチョウということはまったくなく、都市部でもある程度木があれば普通に生息している
割と身近な存在ではあるが、林縁を素早く飛んでいることが多いので、中々追いかけるのが大変なチョウだ。
 
オスとメスの見分け方は極めて簡単で、表の羽の模様がオレンジならオス。白ならメスといった具合に一目で判断できる羽を閉じている場合は、、、まあこれはまた時間があるときに解説しよう)

こちらがオス

こちらがメス。なにこの色違い

花を訪れるという記載もあるが、個人的にはウラギンシジミが花で吸蜜している姿はほとんど見たことがない。その代わりに動物の糞や果実等を訪れて吸っている姿をよく目にする花をあまり訪れないシジミチョウというのも中々珍しいので、食性でも一線を画している存在と言えよう。
 
そしてウラギンシジミの大きな特徴として、成虫越冬するという点がある。なので春先の早い時期から晩秋まで、長い期間成虫を見ることができ、なんなら暖かい日であれば、冬にその姿を目撃することもある意外と植木のような場所で越冬してあることもあるので、冬に生息地を訪れた際には、気にして見てみると春を待つ個体に遭遇する可能性があるかもしれない。

冬眠中のウラギンシジミ。春を待っている
そんなこんなで様々な点で他のシジミチョウとは異なるウラギンシジミ。活発に飛び回っており追うのは大変だが、独自路線で我々を楽しませてくれる。
みなさんもウラギンシジミを見つけて、その独自性を味わってみてはいかがだろうか。
 
【ウラギンシジミ
チョウ目シジミチョウ科ウラギンシジミ亜科
成虫は6月~翌年の春頃にかけて出現
前翅長19mm~27mm
本州から南西諸島にかけて生息
林縁等に多く生息
食草はマメ科のフジやクズ等
独特な形態のシジミチョウ。成虫で越冬する。

オオモンクロクモバチ・・・えげつない生態をしているハンター

オレンジの差し色が特徴的なオオモンクロクモバチ
ハチというと多くの方は、ミツバチスズメバチといったハニカム構造の巣を作るヤツらを想像するのではないだろうか。彼らは高度な社会性を持っており、普段から巣という社会の一員として暮らしている。
しかし、すべてのハチがそのような社会性を持っているかというと、そんなことはない(なんなら社会性を持つハチの方が圧倒的に少数派である)
今回は社会性を持たない狩りバチの1種オオモンクロクモバチをご紹介していこうと思う。
 
ルックスは画像をご覧の通り、基調となる黒い体に、鮮やかなオレンジ模様の差し色が特徴的で、もちろん和名もここから付けられている。
 
せわしなく歩いたり飛んだりを繰り返していることが多く中々カメラに収まってくれない落ち着きのないハチだ。
 
前述の通り狩りバチの1種なのだが、そもそも狩りバチという存在が、昆虫に興味がない方からしてみたら馴染みが薄いといえよう。彼らは文字通り、他の昆虫等を捕えるという生態をしているのだが、ちょっと特殊なのが、自分自身が食べるために狩りをするわけではないという点だ。ではなぜ狩りをするのかというと、幼虫のエサのために狩りをする
そして、これが中々エグい話ではあるのだが、彼らは狩った昆虫等をすぐに殺したりすることはないではどうするのかというと、お尻の毒針で神経を麻痺させて、生かしたまま体が動かないという状態で獲物を巣に運ぶのだ。そうすることによって獲物が腐ることなく、新鮮な状態を保てるので、それを幼虫が食べてすくすく育つという算段なのだ。こう聞くとかなりえげつない生態をしているハチだ。
 
そして、勘のいい方は気付いたかもしれないが、オオモンクロクモバチは名前の通り、クモを狩りの対象としている。普通に考えたらクモの方が他の昆虫を捕食する存在で、立場が上のように感じるが、オオモンクロクモバチ相手にはどうにも分が悪いようである。
クモを狩ったオオモンクロクモバチは、前述の通り地面に巣穴を掘ってその中に麻痺状態のクモを連れ込みそこに産卵するそれを生まれてきた幼虫が食べて成長しやがて成虫になっていくいうサイクルを繰り返していくのだ。
しかし、生かさず殺さずじわじわと食べられていくクモを思うと、なんとも言えない感情になる話である。

クモを運搬中。しかしえげつない生態
もう1つ名前つながりの話をすると、クモバチはベッコウバチという別の呼び方があり、個人的には子どもの頃持っていた図鑑の表記がほとんどベッコウバチだったので、そちらの方がなじみがある。
故にオオモンクロクモバチも、オオモンクロベッコウという別の呼び方があるのだが、どちらも同じハチのことを指しているので、誤解しないように気を付けよう。
 
社会性のない単独行動をするハチとして、驚きの生態をしているオオモンクロクモバチ。割と身近なところでも見られるハチなので、みなさんも是非とも探し出して、そのハンターぶりに思いを馳せてみてはいかがだろうか。
 
【オオモンクロクモバチ】
ハチ目クモバチ科ナミクモバチ亜科
成虫は5月~9月くらいにかけて出現
体長12mm~21mm
北海道から九州にかけて分布
雑木林の林縁等に多く生息
幼虫はクモを食べる
クモバチの代表種。文字通りクモを狩り幼虫のエサにする。

シロオビノメイガ・・・草原に行けば大体いる案外身近なガ

文字通り白い帯模様が特徴的なガ。意外と身近な存在だ

近所の河川敷に行くと、モンシロチョウやモンキチョウ等のよく知られた代表的なチョウが舞っていたりする。では、河川敷を舞っている代表的なガというと、みなさんは何を思い浮かべるだろうか。昆虫に興味がない方からしたら、河川敷を舞うガなど気にしたこともないという方が多いかもしれない。私的観測でいくと、河川敷を代表するガは、今回紹介するシロオビノメイガだ。


和名の通り、白い帯模様が特徴的なので目に付くことも多いだろう。小さいガの割にははっきりとした模様である。

夏頃から出現し秋に発生の最盛期を迎える少し遅咲きのガと言えよう。
ガの仲間ではあるが昼行性で、普通に昼間草原に行けば見つけることができる(ちなみに夜灯火に来る性質もある)

飛翔力はそれほど高くないようで、草むらを掻き分けるとパタパタと飛び立ちすぐにどこかに止まる
しかし、案外と警戒心が強いのか、近付こうとすると逃げてしまうことが多いそれでもやっぱり近くには止まるので、撮影しようと思うと追っては飛ばれ追っては飛ばれを繰り返すことがよくある。

止まる時は葉の裏等に隠れるように止まることが多いのも特徴だ。そのため正面からの姿をなかなか拝めなかったりする。きっと恥ずかしがり屋さんなのだろう。うんうん。

止まる時は葉や草の裏に止まることが多い

そんなこんなで身近な所に普通に生息しているシロオビノメイガだが、こうなってくると少々厄介な問題が起こるのも常というもの。その問題とは何かと言うと、害虫問題である。

ガの仲間は幼虫が農作物を食い荒らしてしまう者が少なくないため、たびたび問題になっている場合がある。
シロオビノメイガの食草は、アカザ科ウリ科ヒユ科等幅広く、色んなものを食することがわかる。
中でもアカザ科であるほうれん草への食害は有名で、園芸の本やサイト等にたびたび名前が上がってくる常連さんである。昆虫好きな私からすると、こうした悪行で名が広まっているのはなんとも心苦しいものだが、それはあくまで第三者の立場だから言えることであって、当事者の方々はそうも綺麗事は言っていられないところであろう。

とまあ最後はなんとも言えない話になってしまったが、シロオビノメイガはかなり身近な草むらに存在しているので、少し目を凝らせばあなたの周りにも飛んでいることだろう。こうした一見目立たない小さな存在に目を向けることは、昆虫観察を面白くしてくれること請け合いである。
みなさんもシロオビノメイガを探して、身近なガの面白さに触れてはいかがだろうか。
 
【シロオビノメイガ】
鱗翅目ツトガ科ノメイガ亜科
成虫は6月~11月頃にかけて出現
開帳21mm~24mm
北海道から沖縄にかけて分布
河川敷等の草原に多く生息
食草はアカザ科やウリ科、ヒユ科植物
白いラインが特徴的なガ。草原でよく見られる身近な存在。