昆虫散歩道

昆虫をあれこれ撮影してあれこれ語ります

オオチャバネセセリ・・・白点と丸っこいフォルムが見分けるポイント

地味な色合いのオオチャバネセセリ。丘陵地や山地に多い

セセリチョウそれは小さくて素早く飛び回るチョウの仲間である。そんなセセリチョウには、他の種類と見分けるのが中々難しい者が結構存在している。
今回紹介するオオチャバネセセリも、他にそっくりの者が存在するセセリチョウである。

形態は画像の通り、基本となる茶色い基準色に小さな白い点が入るという、シンプルで地味な感じになっている。おそらく昆虫に興味がない方からしたら、本当にチョウなのか!?と疑いたくなってくるのではないか。

そんなオオチャバネセセリと似ているチョウとして挙げられるのはイチモンジセセリチャバネセセリミヤマチャバネセセリである。いずれも茶色一色といったセセリチョウで、パッと見で見分けるのは中々難しい。詳しい見分け方は後述したいと思う。

身近なところで見られるイチモンジセセリやチャバネセセリに比べて、生息場所を選ぶ傾向にある。
私が住んでいる埼玉でいうと、平野部で見られるのは本当に稀で、丘陵地から山地がメインの生息地だ。逆に山地では、メインで見かけるセセリチョウといった印象だ。
明るい林縁や農地周辺を素早く飛んで、花を訪れたりしているところをよく見かける。

オオチャバネセセリという名前ではあるが、正直チャバネセセリより大きいという印象はなく、ほとんど同じくらいの大きさである(というより、前述の4者はすべてほぼ同じくらいの大きさである)

そしてやはり、前羽を立てて止まる独特の止まり方を披露してくれるこの止まり方は個人的にすごくお気に入りで、ジェット機みたいでかっこいいなと毎回思う。

セセリチョウ独特の前羽を立てる止まり方を、本種も披露する

さて、いよいよ4種の見分け方を詳しく見ていきたいと思うが、わかりやすいのは後羽裏の斑点である。オオチャバネセセリは、この斑点がジグザグの配列になるのが最大の特徴だ。
他3種の特徴は画像を参照して、違いを確認していただくと、見分けられるようになるはずである(しかしどれもよく似ているので、頭が痛くなりそうな話でもある)
あとは、オオチャバネセセリは他3種と比べて全体的に丸みがあるので、慣れてくるとフォルムでなんとなくわかるようになってくる(ちなみに例外的な個体もいるので注意が必要である)

4種の見分け方。細けえー

そんなこんなでややこしい話ではあるが、イチモンジセセリやチャバネセセリよりもレアなチョウなので、じっくり観察して見つけてみると、結構テンションが上がるチョウでもある。
よく見極めないとわからない辺りも、より昆虫観察を楽しくしてくれる。そして、それが見極められるようになった時、昆虫観察の沼がやってくるわけだ。
みなさんもオオチャバネセセリを見極めて、昆虫観察の面白さに触れてみてはいかがだろうか。

 

【オオチャバネセセリ】

チョウ目セセリチョウセセリチョウ亜科

成虫は6月~9月頃にかけて出現

前翅長16mm~21mm

本州から九州にかけて分布

樹林の林縁等その周辺に多く生息

食草はササ科のタケ類、イネ科のススキ等

丘陵地や山地を代表するセセリチョウイチモンジセセリ等とよく似ている。

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ムラサキシジミ・・・美しい表面を見るには念を送る必要があるのか!?

なんとも美しい表羽を披露するムラサキシジミ

シジミチョウの仲間は小さく可憐で、蝶愛好家の中でも人気が高い者が多い。
今回紹介するムラサキシジミも、その羽の美しさから中々の人気を誇るシジミチョウだ。

和名の通り紫色の模様が特徴で、発色の良い表の羽は印象的でとても美しい。
この紫色の模様はオスの方がやや広い範囲に及んでおり、メスは範囲がやや狭く、色味も薄くどちらかというと青っぽい感じになる

こちらはメス。紫の範囲がオスより狭く、色味も薄くなりがち

そんな美しいムラサキシジミだが、そんな羽の色をしているのは表だけ裏面はなんとも地味な感じとなっている。枯れ葉に止まったところをご覧いただくとわかりやすいが、かなりの保護色を発揮している。
シジミチョウの仲間でここまで枯れ葉ライクな裏面をしている者は珍しいのだが、これはひとえに、ムラサキシジミが成虫で越冬することが1つの要因として上げられよう。基本的に成虫で越冬する系の昆虫は、枯れ葉や枯れ枝等にカモフラージュできるような模様をしているので、そんな昆虫を見つけたら、成虫越冬するのか、、、!?と予想してみるのも面白い(もちろん成虫越冬でなくても保護色を発揮する昆虫は山ほど存在する)
ちなみに成虫越冬するために、冬でも暖かい日は成虫を見られる事がある

表面と打って変わって裏面はなんとも地味な感じ

こんなんもう枯れ葉じゃん

食草がブナ科アラカシやスダジイクヌギやコナラ等その食性から樹上性がやや高く、食草周りをヒラヒラとせわしなさげに飛んでいることが多い。
故に美しい羽の表面を、中々いい感じの所で見ることができないもどかしさを感じることも多い。
中々羽を開いてくれないことも多く、私はいつも念を送っているのだが、それも届かずに終わったしまうことがあまりにも多い。
日が当たりはじめる頃等が、表を見る狙い目となるので、タイミングが重要だ。

もうちょい低いところで止まってくれるとありがたいんですがねえ

身近な所にも生息していると記されることが多いが、個人的にはそこまで身近なチョウだとは感じないのは私だけだろうか。
昆虫は地域や環境によって生息数も変わってくるので、私が住む地域がたまたまムラサキシジミには適していなかったのかもしれない。

また、幼虫がかなり変わった生態をしている。
ムラサキシジミの幼虫は、アリが好む蜜を分泌してアリをおびき寄せ、自身を護衛させるのだ。
まさかの用心棒を雇うという荒業を見せるムラサキシジミだが、これはあくまでも「相利共生」の関係で、アリが蜜を得られる代わりに護衛をする、と考えられてきたのだが、最近の研究でどうも、ムラサキシジミが分泌した蜜でアリを操っている可能性があるということがわかってきたようである。
いやはやまったく別種の昆虫であるアリを操っているとは、なんとも恐ろしい生態をしているものである。

そんな一風変わった生態を披露するムラサキシジミその表の模様を見るために念を送るのもまた乙なものである。
みなさんもムラサキシジミを探しに出かけてみてはいかがだろうか

 

【ムラサキシジミ

チョウ目シジミチョウ科ミドリシジミ亜科

成虫は6月~翌年3月頃にかけて出現

前翅長14mm~22mm

本州から南西諸島にかけて分布

常緑樹の林等に多く生息

食草はアラカシ、スダジイ等のブナ科常緑樹、クヌギ、コナラ等のブナ科落葉樹

表の紫が美しいシジミチョウ。裏面は枯れ葉のような地味な色をしている。

アメンボ・・・身近な割に案外知られていない生態

アメンボ赤いなあいうえお(まあアメンボは赤くないけど)

アメンボといったら、おそらく日本人で知らない者はいないと言っていいほどに有名な昆虫であろう。水面を浮きながら移動する様子は、よく忍者などに例えられたりする
アメンボ赤いなあいうえおでもおなじみだ。
しかしその実、詳しい生態をご存知の方は少ないのではないか。
今回はそんなアメンボを深掘りしていこうと思う。

まず触れていきたいのは、アメンボの名前の由来だ。諸説あるが、持つと飴のような匂いを発することから、飴のような匂いの棒のような虫→あめんぼう→アメンボと呼ばれるようになったという。
ちなみにアメンボはカメムシの仲間であり、なるほどそう考えると匂いを発するというのも納得である(もしアメンボの発する匂いがカメムシのような悪臭だったら、もっと嫌われていたであろう)

次にアメンボが水に浮く仕組みをお話したい。アメンボの足先には無数の毛が生えており、そこに足から分泌される油分を付着させることで水をはじくことで、浮いていることができる。科学的な用語でいうと、表面張力を利用して浮いているのだ。
ということは要するに、表面張力を失うとアメンボは浮くことができなくなってしまう例えば油分の多い液体(牛乳とか)であるとか、台所洗剤が混ざった水なんかだと、アメンボは浮かべなくなってしまうので、注意が必要だ(?)
ちなみにそんなアメンボを観察していると、単独でいる個体よりもペアでいる個体の方が多いように感じることがある。水面を見ると至るところであちちあちちなので、リア充爆発しろと叫びたくなること請け合いである。

背負いアメンボは水辺でよく見る光景だ

そんな水に浮くのが特技のアメンボだが、それだけでなくきちんと飛ぶこともできる大雨後の水溜まりにアメンボがいるのも、飛べるからに他ならない。
もっともアメンボに限らず、タガメゲンゴロウ等の水性昆虫は基本的に飛ぶことができるので、むしろマストな能力である。

そしてアメンボの生態であまり知られていないのは、その食性ではないだろうか。
アメンボは主に、水面に落下した昆虫を補食し、口吻を刺してその体液を吸うという、なんともサイコな生態をしている(ちなみにカメムシの仲間は、草食肉食問わず口吻をぶっ刺して食事をするので、この辺りもカメムシの仲間と言われて納得である)
時に大きい昆虫が浮いている場合は、かなりの数が群がって食事している光景を目撃することもあるこれは慣れていない方からしてみたら中々ホラーな情景ではないだろうか。
アメンボというと、なんとなくかわいらしい昆虫のように扱われることも多いが、実は死肉を貪るハイエナのような一面も持ち合わせているというわけだ。

水面に落ちたトンボに群がるアメンボ。なんかハイエナっぽい

そんなこんなでアメンボの生態について語ってきたわけだが、アメンボはとにかく私たちの身近な所でも多く見られる存在だ。流れのない池や沼などに行けば、見かけないということはまずないだろう。故に観察しやすい昆虫でもある。
みなさんも身近なアメンボの奥深さに触れてみてはいかがだろうか

 

【アメンボ】

半翅目アメンボ科

成虫は4月~10月頃にかけて出現

体長11mm~16mm

日本全国に分布

池や沼、流れの緩やかな場所に生息

水面に落下した昆虫を捕食

言わずと知れた水面に浮かぶ昆虫。飴のような匂いを発することが名前の由来

ウスバキトンボ・・・はかない最期を迎える旅するトンボ

ウスバキトンボ。赤とんぼの色素が薄くなったような見た目だ

ツバメやハクチョウなどは、適した環境を求めて渡りをする、いわゆる渡り鳥として知られている。
夏に日本を訪れる鳥は夏鳥。冬に日本を訪れる鳥は冬鳥といわれ、バードウォッチャーの季節の風物詩でもあるわけだ。
昆虫のブログなのに鳥の話かい?と感じた方も多いかもしれないが、今回紹介するのはそんな渡り鳥のように渡りをする昆虫なのである。その名もウスバキトンボ

トンボが渡りをするなんてにわかには信じがたいが、ウスバキトンボは東南アジア等の暖かい所で生まれたものが、はるばる海を越えて日本にやってくるのだ。
ちなみにウスバキトンボは日本のみならず、世界各国様々なところに移動するため、世界的に見て分布域はかなり広い。

見た目は別段特別なところがない、普通のトンボのように見える。薄い羽の黄色いトンボということで、その和名が名付けられた。

よく見かけるアキアカネやナツアカネのような、いわゆる赤とんぼより一回り大きい。
前述の渡りをする習性から、南の方から順に見られるようになっていく関東でよく見られるのは大体7月から秋口にかけてだ。

お盆頃になると群れて飛んでいることもよくある

そして、南の方で生まれるということは、寒さに弱いトンボということにもなる。実際水温が4度以下になるとヤゴや卵が死んでしまうといわれており、すなわち池の水に氷が張るような地域では冬を越すことができない
ということはウスバキトンボは、寒くなる前に生まれた土地に帰るに違いない、と思ったそこのあなた。それは大きな検討違いである。
日本に来たウスバキトンボは、そのまま日本帰るとこもなく全滅してしまうのだ。

いやいや待てと。日本に来たやつは全滅してしまう。それじゃ渡るだけ無駄足じゃないかと誰もが思うことだろう。それが実は逆であり、そうした移動をするからこそ、ウスバキトンボは子孫を残し続けることができたと言える側面もあようである。
これはどういうからくりかというと、例えば1ヶ所に留まり続けた場合、気候変動等で環境が変わった場合に絶滅してしまう可能性がかなり高い。しかし、様々な所に移動するという性質を持っていれば、そうした環境の変化が起こっても、また適した環境を探し出せる可能性が高い。すなわち、子孫を残せる可能性が高くなるということなのである(ちなみに生まれた所に留まる者もいるので、かなり臨機応変な生態をしているなと感心する)
実はウラナミシジミイチモンジセセリ等、こうした移動の性質を持つ昆虫は存在するので、昆虫界どは割と採用されている戦略だったりする。

ウラナミシジミ。関東では南部の一部しか土着していないという

そんなこんなで、渡りをするという仰天な生態を持つウスバキトンボ。日本で見られる彼らはみな旅人(人ではないか)
一見すると普通のトンボだが、ロマン溢れる生態をしているので、見かけた時は、是非とも思いを馳せていきたい所である。

 

【ウスバキボント】

トンボ目トンボ科

成虫は5月~10月頃にかけて出現

体長44m~54mm

全国に分布

水辺周辺に多く生息

昆虫を捕食

渡りをするトンボ。お盆頃に群れて飛んでいることがよくある。

 

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ゴマダラカミキリ・・・カミキリムシの代表格といったらコイツで決まり

カミキリムシといったらやっぱコイツっしょ(私見

皆さんは、カミキリムシというとどんな昆虫を想像するだろうか。それぞれ思い思いのカミキリムシ像がおありだろうが、私の中でカミキリムシというと真っ先に浮かぶのは今回紹介するマダラカミキリだ。

なぜゴマダラカミキリが真っ先に浮かぶのかというと、まずその大きさである。
実はカミキリムシの仲間は、小さい種類が結構多い2cmに満たないような種類もザラで、大きい種類と小さい種の差が結構激しい。
ゴマダラカミキリはまあまあ大型な部類に入るので、見かけると存在感がある。そのため個人的には、ゴマダラカミキリはTHEカミキリムシといった風情を感じるのだ

こちらは体長2cmに満たないラミーカミキリ。これくらいの大きさはマストである

また、和名にもなっているまだら模様の美しさもより一層存在感を高めている。
さらにゴマダラカミキリは、そこまで珍しい種類ではないので、割と身近な所でも観察できる。ここまで条件が揃っていれば、カミキリムシ代表を名乗っていても、まったく違和感はないだろう。

こうしてみると中々かっけえな

長い私見であったが、生態的な話をしておくと、初夏から夏頃に出現し、昼夜問わず活動する。
問題は食料で、様々な木々の葉や樹皮を食べる要するにゴマダラカミキリは、果樹の害虫という位置付けになってくる。
時にゴマダラカミキリのせいで木が枯れてしまうこともあるようなので、農家さんからしてみたらかなり厄介な存在と言えよう。特に柑橘類の重大な害虫として知られており、農家さんは対応に腐心しているというわけだ。

さらに厄介なのが幼虫である。ゴマダラカミキリの幼虫は生木の内部で木を食べるのだつまりゴマダラカミキリは、外からも中からも木を食べるというダブルパンチを食らわす、とんでもない昆虫なのだ。
ちなみにカミキリムシが木に穴を開けたり、木から脱出したりすることによって、樹液が出る事があるので、カブトムシやクワガタムシ等、樹液を主な食料にしている昆虫からしてみると、ありがたい存在だと言えよう。

こんな光景が見れるのもゴマダラカミキリのおかげかも・・・

さらに大きな問題となっているのが、外来種ツヤハダゴマダラカミキリの存在だ。
ツヤハダゴマダラカミキリゴマダラカミキリとよく似た存在で、主に中国等に生息していたものが、日本に上陸を果たしている私はまだ目撃したことはないが、今後分布域を拡大して、生態系に大きな影響を与える可能性も十分に考えられるので、注意が必要だ。

なんとも後ろ向きな論調になってしまったが、私はゴマダラカミキリが好きである。やはり大型のカミキリムシよろしく、とてもかっこいい。見かけただけでもテンションが上がる昆虫の1種である。

その立派な姿を拝み、カミキリムシのかっこよさに触れてみよう。

 

ゴマダラカミキリ

甲虫目カミキリムシ科フトカミキリ亜科

成虫は5月~8月頃にかけて出現

体長25mm~35mm

北海道から沖縄にかけて分布

雑木林や果樹園等に多く生息

幼虫は様々な成木の材部を食べる

比較的大型のカミキリムシ。都市部でも見かけることがある。

 

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キスジホソマダラ・・・黄色い模様が特徴的なガっぽくないガ

黄色い模様が特徴のキスジホソマダラ。ガっぽくない容姿だ

チョウは日本に約250種類ほどが生息しているのだが、ガはなんと日本に5000種類以上存在していると言われており、かなり種類が多い事がわかる。故に様々な形態の者が存在するのは必然というもの。今回は、そんなガの仲間の中でも、パッと見ガっぽくないキスジホソマダラを紹介していこうと思う。

ガの仲間にしてはかなり羽が細長くどちらかというとハチのような雰囲気すら感じる何も知識がない方が見たら、ガとは思わないのではないだろうか。

キスジホソマダラはマダラガ科のガなのだが、このような羽の形はマダラガ科の特徴であるため、見分ける際の参考にすると役に立つかもしれない(もっともガは種類がめちゃめちゃ多いので、一筋縄ではいかないのよねこれが)

特徴はやはり和名の由来にもなっている黄色い模様だ。この黄色い模様が美しいので、小さいガではあるものの、存在感は中々のものがある。微妙に青みがかった光沢があるのも美しい。

オスとメスを見分けるのは簡単で、触覚を見れば一発でわかる櫛状なのがオスで、線状なのがメスだ(もっとも小さいガなので、肉眼では中々区別が付きにくいかもしれないが)
ちなみにこの見分け方はガあるあるで、なんでもメスが発するフェロモンを察知するために、オスの触覚はこんな形状をしているんだとか。そう考えると、オスが櫛状の触覚をしているのも納得というものである。

メスは触覚が櫛状になっていない。これはガあるあるだ

多くのガは夜行性だが、キスジホソマダラは昼行性で、昼間花を訪れたりしている。この辺りもガっぽくないポイントだ。
ただ、夜に灯火にやってくることもあるようなので、完全にガの心を忘れたわけではないようである。

そんなキスジホソマダラだが、私が住んでいる埼玉南部、東京のベッドタウンで見ることはほとんどない。ある程度自然が豊かな所に行ってはじめてお目にかかることのできる印象だ。
逆に山地では、多くのキスジホソマダラが群がって花を訪れたりすることが珍しくないほど、たくさん生息していたりする。確実に見たい方は、6月~7月辺りに山の方に繰り出すといいだろう。きっと大勢でお出迎えしてくれる。

山地ではよく花に群がっていたりする

ガっぽくないけどガであるキスジホソマダラ。そんなキスジホソマダラは、小さいながら美しい模様を携えて飛んでいる。
是非ともその美しさに触れて、新たなガの形を体感してみてはいかがだろうか。

 

【キスジホソマダラ】

鱗翅目マダラガ科クロマダラ亜科

成虫は5月~9月頃にかけて出現

開帳16mm~24mm

北海道から九州にかけて分布

雑木林の林縁等の多く生息

食草はイネ科のススキやササ等

黄色い模様が特徴的なガ。山地では群れていることもしばしばある。

ジャコウアゲハ・・・ふわふわと独自路線を突き進むアゲハチョウ

草原をふわふわ飛ぶジャコウアゲハ

こちらはクロアゲハ。違いはずばり、体の色と尾状突起の長さだ

アゲハの仲間は大型で目立つ存在であり、昆虫に興味がなくても目に付く事が多いのではないだろうか。
その中でも黒いアゲハチョウ、すなわちクロアゲハは、人々に広く知られているチョウの1種と言って差し支えないだろう
しかし、ジャコウアゲハと言われると、いまいちピンと来ない方も多いのではないか。今回はそんなジャコウアゲハを紹介していこうと思う。

パッと見クロアゲハと変わらないが、羽が縦長で尾状突起(後ろ羽のしっぽ)もジャコウアゲハの方がかなり長い。そして、体が赤いのが最大の特徴である。

ちなみにメスはオスに比べてかなり薄い色をしており、クロアゲハとは似ても似つかない感じになっている(というより、オスとすらだいぶ違う感じだ)

こちらはオス

こちらはメス。かなり羽の色が薄い

さらに幼虫は、もはやアゲハチョウの仲間のそれとは思えない容姿をしている
しかしとてもチョウの幼虫とは思えない見た目だ。なぜこんな見た目になってしまったのかよくわからないが、まあ独特な路線を突き進んだものである。

お馴染みのアゲハの幼虫はこんなだが・・・

ジャコウアゲハの幼虫はこんな感じ。あまりに独自路線すぎる

名前の由来は香料の麝香(じゃこう)から来ている。オスが麝香のような匂いを発することが名前の由来となっているというわけだ(ちなみに麝香とは、ジャコウジカのオスから取ることのできる香料の事である)

雑木林等でもちょこちょこ見かけるが、主戦場は河川敷等の草原だ。とりわけ食草であるウマノスズクサが生えている所が生息地で、そうした所ではあちこちで飛び回っている姿を見ることができるだろう。

アゲハの仲間は素早く飛び回る種類が多いが、ジャコウアゲハふわふわと飛んでいる事が多い比較的止まることも多く、カメラマン的には写真が撮りやすいアゲハチョウと言える。

前述の通り食草はウマノスズクサである。
このウマノスズクサには毒がありそんな物を食草としているジャコウアゲハは、なんと体内に毒を溜め込んでいるのだ。そうすることによって、鳥等の天敵からの補食を逃れているわけである。
そして、そんな有毒のジャコウアゲハに擬態する者も多い。クロアゲハアゲハモドキ等が、ジャコウアゲハに擬態をしているとされている。
こうした有毒種に似せた擬態をベイツ型擬態と呼び、多くの生物が採っている生存戦略でもある。

そんな有毒のジャコウアゲハだが、刺したりなんだりと危害を加えるわけではないので、安心していただきたい。
草原を優雅に飛び回るジャコウアゲハは存在感抜群だ。
クロアゲハだと思っていたものがクロアゲハでないとなると、新たな発見があって面白い。
ふわふわ飛んでいるジャコウアゲハを追いかけて、その違いを確かめてみてはいかがだろうか。

 

ジャコウアゲハ

チョウ目アゲハチョウ科アゲハチョウ亜科

成虫は4月~10月頃にかけて出現

前翅長42mm~60mm

本州から南西諸島にかけて分布

河川敷の草原等拓けたところに多く生息

食草はウマノスズクサ科のウマノスズクサ

草原をふわふわと飛ぶアゲハチョウ。体内に毒を有している。

 

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