ツバメやハクチョウなどは、適した環境を求めて渡りをする、いわゆる渡り鳥として知られている。
夏に日本を訪れる鳥は夏鳥。冬に日本を訪れる鳥は冬鳥といわれ、バードウォッチャーの季節の風物詩でもあるわけだ。
昆虫のブログなのに鳥の話かい?と感じた方も多いかもしれないが、今回紹介するのはそんな渡り鳥のように渡りをする昆虫なのである。その名もウスバキトンボ。
トンボが渡りをするなんてにわかには信じがたいが、ウスバキトンボは東南アジア等の暖かい所で生まれたものが、はるばる海を越えて日本にやってくるのだ。
ちなみにウスバキトンボは日本のみならず、世界各国様々なところに移動するため、世界的に見て分布域はかなり広い。
見た目は別段特別なところがない、普通のトンボのように見える。薄い羽の黄色いトンボということで、その和名が名付けられた。
よく見かけるアキアカネやナツアカネのような、いわゆる赤とんぼより一回り大きい。
前述の渡りをする習性から、南の方から順に見られるようになっていく。関東でよく見られるのは大体7月から秋口にかけてだ。
そして、南の方で生まれるということは、寒さに弱いトンボということにもなる。実際水温が4度以下になるとヤゴや卵が死んでしまうといわれており、すなわち池の水に氷が張るような地域では冬を越すことができない。
ということはウスバキトンボは、寒くなる前に生まれた土地に帰るに違いない、と思ったそこのあなた。それは大きな検討違いである。
日本に来たウスバキトンボは、そのまま日本帰るとこもなく全滅してしまうのだ。
いやいや待てと。日本に来たやつは全滅してしまう。それじゃ渡るだけ無駄足じゃないかと誰もが思うことだろう。それが実は逆であり、そうした移動をするからこそ、ウスバキトンボは子孫を残し続けることができたと言える側面もあるようである。
これはどういうからくりかというと、例えば1ヶ所に留まり続けた場合、気候変動等で環境が変わった場合に絶滅してしまう可能性がかなり高い。しかし、様々な所に移動するという性質を持っていれば、そうした環境の変化が起こっても、また適した環境を探し出せる可能性が高い。すなわち、子孫を残せる可能性が高くなるということなのである(ちなみに生まれた所に留まる者もいるので、かなり臨機応変な生態をしているなと感心する)
実はウラナミシジミやイチモンジセセリ等、こうした移動の性質を持つ昆虫は存在するので、昆虫界どは割と採用されている戦略だったりする。
そんなこんなで、渡りをするという仰天な生態を持つウスバキトンボ。日本で見られる彼らはみな旅人(人ではないか)
一見すると普通のトンボだが、ロマン溢れる生態をしているので、見かけた時は、是非とも思いを馳せていきたい所である。
【ウスバキボント】
トンボ目トンボ科
成虫は5月~10月頃にかけて出現
体長44m~54mm
全国に分布
水辺周辺に多く生息
昆虫を捕食
渡りをするトンボ。お盆頃に群れて飛んでいることがよくある。
mushisagashi.hatenablog.jp
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