私が住んでいる埼玉南部の住宅街周辺は、基本的にはヤマトシジミが多く、見かける小さなシジミチョウは大体がヤマトシジミだが、8月終わりから9月にかけて、なんだかヤマトシジミよりも大きくて素早く飛ぶ蝶が現れる。それがウラナミシジミだ。
関東では基本的に秋にならないと見られないが、西の方に行くと春から秋まで長い期間見られる。なぜこのような違いがあるのかというと、ウラナミシジミが比較的暖地性の種であるために、関東以上北では冬を越せないからである。
私が持っている古い図鑑では、房総半島南部が土着の北限との記載があるが、もしかしたら近年の温暖化で、もう少し北方で越冬するものも少しはいるような気もする。
ここで「おかしいぞ?」と思った方がいるはずだ。
冬を越せない地域になぜ生息しているのか。その答えはウラナミシジミの生態にある。
実はウラナミシジミは、渡りをする蝶なのだ。
すなわち真相は、春から夏にかけて繁殖をして誕生した新ウラナミシジミが、遠路はるばる足を運んでいるというわけだなのだ。
なんと北海道の南部まで見られるというアグレッシブさを発揮する。あんなに小さな体でよくもそんなに移動ができるものだと関心する。
ここでまた疑問に思った方がいるだろう。なぜ冬を越せないのにわざわざ渡りをするのか。
それはどうも、渡りをした方がより子孫を繁栄させられる可能性が高くなるかららしい。
どういうことかというと、例えば今生息しているところが気候変動等によって住めなくなってしまったとする。そうなると移動性のある種というのは、また新たに適応できる場所を探し出せるのだ。
ウスバキトンボやイチモンジセセリ等もこうした戦略を取っており、案外昆虫界ではメジャーな作戦の1つなのかもしれない。
ところでこのウラナミシジミという蝶は一言にまとめて言うと超かわいい。
シジミチョウの仲間は得てして小さくてかわいらしいのだが、このウラナミシジミは別格のかわいさだ。(このブログには大いに主観が混ざることにご留意ください)
まず、ウラナミシジミという名の由来になった裏羽の模様が中々おしゃれだ。
また、後羽にあるしっぽ(尾状突起と言われる)も中々チャーミング。シジミチョウの仲間あるあるの、止まったときに後羽をすりすりする動きも、例に漏れずやってくれる。
このすりすりは、天敵に頭はこっちですよーとアピールするためのもので、騙された捕食者はそちら目掛けて攻撃してしまうために、後は羽だけしか残らないという算段なのだそうだ。
実際かなり捕食者を欺けるらしく、我々にかわいいところを見せるためにやってるわけではないので勘違いしないように。
そして極めつけは、羽を広げたところがめちゃくちゃキレイだというところだ。
オスは表羽が少し紫掛かった水色になるのだが、よく見ると光沢があり、光加減によってきらめきが変わるのだ。
特に日の光が当たった時の美しさは特筆もので、身近な所にこんな蝶がいるのかと大感動したものである。
一方のメスは青い部分が少なく、全体的に濃いグレーのような装いをしている。これはこれで落ち着いた美しさがある。
このようにウラナミシジミは、かわいいときれいを高い水準で両立してしまうという、なんともハイブリットな蝶なのだ。
身近な所でこんな蝶が見れるという環境に感謝しなければならない。
【ウラナミシジミ】
成虫は、定着地では4月~11月、関東では主に8月~11月頃見られる
前翅長13mm~18mm
北海道南部以南に分布するが、越冬できるのは房総半島南部以南とされている
日当たりの良い河川敷や耕作地でよく見られる
食草はマメ科各種
関東では夏の終わりごろにかけてよく見られるようになる。渡りをする蝶としても有名