着替えてカメラの準備をして、さあ撮影に繰り出そうかと玄関の扉を開けると、コンクリの隙間から生えている草の周りをちらちらと飛んでいる。家を飛び出してから見つけるまでのその時間わずかに5秒。
あまりに家の目の前で見つかるので、もはや家族の一員と言っても過言ではないのではないか。
要するにこの蝶は、出会わない方が難しいレベルの蝶である。
かくいう私も親の顔よりも見たというレベルでよく見ている蝶の1種だ。
秋に最盛期を迎えるという話だが、個人的には年がら年中見られるから、特段秋に増えるという感覚もない。
ただ、どうも北海道には生息していないらしく、やや暖かい地方が好きなようだ。
なんとも小さくどこにでもいる蝶なのであまり気に止めることもないが、よくよく見てみると水色の羽が爽やかで、なんともきれいな姿をしている。
ただこれはオスだけで、メスは濃いグレーのちょっと地味な色合いをしている。
さて、ここで私がいつも思っていることは、ルリシジミとの見分け方が難しいということである。
蝶に興味がない方からしたら、どちらも同じように見えることは必至だ。
生活圏も結構被っており、せめてここがきちんとわかれていればまだ見分けやすかったろうにと思う。
見分けるコツとしては、ヤマトシジミの方が灰色がかった色をしていて、ルリシジミの方が白くて明るい色をしているという点がある。
また、複眼が黒いのがルリシジミで、ヤマトシジミはなんとも言えない色をしている。
あとは、斑紋の形がヤマトシジミの方がはっきりしていて、ルリシジミは薄く小さいという見分け方もあるが、個人的には複眼で見分けるのが一番手っ取り早く確実だと推したい。
さらには似ている種類で、スギタニルリシジミなるヤツもいて、私はもう頭がクラクラしてきている。(実はもっと似ている種類で、シルビアシジミというのもいるが、ウチの方ではほぼ見かけないので割愛する。)
生息場所をヒントに見分けるとするならば、雑木林の上を素早く飛んでいたら基本的にはルリシジミだ。
というのもヤマトシジミはカタバミというクローバーみたいな雑草を食草にしており、その周辺を生活圏にしているため、雑木林の上の方には用がないので、わざわざ飛んでくることがない。
一方でルリシジミの幼虫はバラ科、マメ科、ブナ科等、色々なものを食するグルメで、木にも用事があるために雑木林の周辺でもよく飛んでいる。
とにかく言えるのは、ヤマトシジミもルリシジミも身近にいてかわいらしくてちょっと本気を出して羽を開いたら結構きれいだということだ。
珍しいヤツを見つけた時はもちろん嬉しいが、こうした身近な蝶に遊んでもらうことも、昆虫観察の醍醐味である。
【ヤマトシジミ】
成虫は3月~11月頃にかけて出現
前翅長9mm~16mm
本州から南西諸島にかけて分布
人家周辺や草原等、カタバミがあるところならどこでも発生する
食草はカタバミ
生息地であればどこにでもいると言っても過言ではないほどポピュラーな蝶の一種