昆虫を探しに繰り出す時、やはり花が咲いている所は外せない。チョウやハチなど様々な昆虫が集まってくるいわば楽園だ。
そんな楽園に、一見するとハチやアブっぽい黄金虫が飛んできたら、それはきっとコアオハナムグリだ。
個人的感覚だと平野部から山地までどこにでもいる、ハナムグリの中でも最も普通種と言って良いのではないだろうか。普通種らしく北海道から南西諸島まで幅広く生息し、成虫が見られるのも春から秋と長い。
小さく知名度も低いので目立たない存在だが、かなり身近な昆虫であることは間違いない。
コガネムシの仲間というと多くの人が黄金のメタリックなボディを想像すると思うが、コアオハナムグリのカラーリングは艶消しグリーンだ。
よく見ると表面に細かい毛が生えていて、とことんマット仕様にこだわっている。こうした細かい毛が生えている点も、ハチやアブに見えるポイントだ。
花をよく訪れるコアオハナムグリは、この細かな毛が花粉で粉っぽくなっている様子をよく見る。
ちなみにハナムグリの漢字は「花潜り」と書き、文字通り花に潜るようにしている様子から名付けられたというわけだ。
コアオハナムグリも例外ではなく、花に潜っている様子をよく観察できる。
また、樹液に来ることもある。私は樹液ではほぼ見たことがないのだが、カブトムシやクワガタムシ、チョウなどに気をとられて、いることに気付いていないのかもしれない。
幼虫はコガネムシの仲間らしく、朽ち木や腐植物等を食べる。
花粉を媒介する存在として、重要な役割を果たしているのは確かだが、花粉を食べる際に大あごで子房を傷つけてしまうため、果樹園の人からすると害虫という位置づけになってしまう。実はコガネムシの仲間は、一般的に悪い印象で語られることはあまりないが、農作物の害虫とされているものが多く、成虫が葉を食したり、幼虫が草の根を食したりするために、農家さんの悩みの種となっている。
前述の通り、艶消しグリーンをしているコアオハナムグリだが、騙されてはいけないのは、茶色っぽい色の輩も存在するという事だ。
そんなこととは露知らず、はじめて茶色いヤツを見つけた時に、「何か新種がいるぞ!」とテンションが上がった事を思い出すが、なんてことはないコアオハナムグリの色違いであった。
ポケモンの色違いであれば、出現率は中々に低いが、コアオハナムグリの色違いは割とよく見かけるので、別段珍しいというわけではなさそうだ。
それでも花に必死に頭を突っ込んでいる姿は中々にかわいいものである。それはグリーンだろうが茶色だろうが変わることはない。
花が咲いているところがあったら、ぜひとも目を凝らして、コアオハナムグリを探してみてほしい。
【コアオハナムグリ】
甲虫目コガネムシ科ハナムグリ亜科
成虫は4月~10月頃にかけて出現
体長10mm~16mm
北海道から南西諸島にかけて分布
日当たりの良い草原や雑木林周辺等に生息
幼虫は朽ち木や腐植物を食べる
花の周辺をちらちらと飛んでいる。大きさ的にハチやアブに見えることもある。