バッタの仲間はトノサマバッタやショウリョウバッタ、オンブバッタやイナゴ等々、中々有名どころが揃っている。そんな中で、一般的にそんなに知名度が高くないのが今回紹介するクルマバッタだ。
知名度としてはあれだが、立派ないかにもバッタという風貌をしている。
バッタ界の雄であるトノサマバッタにサイズ感では劣るものの、体高は負けず劣らず、なんならトノサマバッタよりも立派な感じさえ受ける。
そんなクルマバッタが知名度が低い要因としては、他のバッタに比べて数が少ないというのもあるのではないか。
トノサマバッタやショウリョウバッタ等に比べると、住む場所を選ぶ印象がある。
我らが埼玉県では準絶滅危惧種という位置付けになっており、より珍しい種であることが伺える。
実際に私が住んでいる近所の河川敷ではほとんど見ることがなく、ちょっと頑張って遠出をすると、はじめて見ることができる。
私がクルマバッタをよく見かけるポイントは、あまり草の背丈が高くない河川敷の草地で、そこでは道端に顔を出すこともしばしばある。逆に丈の高い草が生い茂ったようなところではあまり見かけない印象がある。
おそらくなのだが、ある程度定期的に管理される広い草原を好むのではないだろうか。それであれば、数が多くないのもうなずける。
この辺りが昆虫の難しいところで、普通の感覚からすると、人の手の入っていない所の方が自然が豊かで、昆虫がたくさんいるようなイメージを受ける方も多くいらっしゃるだろう。
しかし実際は、適度に人の手が入った所の方が、多くの昆虫を育むといったことがよくある。
実際に、里山のような人の暮らしと密接に関わる半自然的な環境は、多くの昆虫たちが生息する楽園となっている。
そういった意味では、人間の暮らしが昆虫の暮らしをも左右していると言っても過言ではないということなのだ。
話が逸れてしまったが、私がクルマバッタをよく見るポイントは、頻繁に草刈りをして、草の背丈が低いような所なので、探してみたい人はそうした場所に狙いを定めてみるといいかもしれない。
また、平地よりも丘陵地や山地の方に多いという話も聞くので、住んでいるところによっては、身近な存在となっていることもあるかもしれない。
さて、クルマバッタと言えば語らなければいけないのは、よく似たクルマバッタモドキの存在だろう。
クルマバッタモドキは文字通り、クルマバッタによく似た種類で、共生していることも多いが、クルマバッタよりも数自体は多く、色んなところで見ることができる。
酷似しているとされる両種だが、クルマバッタモドキの方がなんというか線が細いので、そこまで見分けにくいとは個人的には感じていない。
野球選手で例えるなら、高卒1年目で線が細いのがクルマバッタモドキ、ベテラン10年目で体が出来上がっているのがクルマバッタと言ったところだ。
ただ、写真で見るとサイズ感が分かりにくいので、見分ける難易度が格段に上がる。
胸部が盛り上がっているのがクルマバッタで、平らなのがクルマバッタモドキだとか、胸部のクの字の模様がはっきりしているのがクルマバッタモドキ。目の線がはっきりしているのがクルマバッタモドキ、はっきりしていないのがクルマバッタといった見分け方がある。
ちなみにクルマバッタという名前は、羽の黒い模様が、飛んだ時に車輪のように見えるから名付けられたらしい。中々考えられた名前である。
蝶のようにフワフワと飛んでいる者もいるので、他のバッタとはまた違った趣もある。
あまり知られてはいないかもしれないが個性的なバッタなので、昆虫探しを楽しくしてくれる存在であることは間違いない。
【クルマバッタ】
バッタ目バッタ科
成虫は7月~11月頃にかけて出現
体長40mm~60mm(メスの方が大きい)
日本全国に分布
背丈の低い草原に多く生息
イネ科の植物を食べる
大型のバッタ。生息域がやや局所的。