ひらひらと舞う黄色い蝶と言えば、その代表は間違いなくモンキチョウだろう。しかし私の肌感では黄色い蝶でもっともお馴染みなのはキタキチョウだ。
おそらく蝶に興味がない方からしてみれば、キタキチョウなんて聞いたことすらないだろう。しかし、実は多くの方が目撃している黄色い蝶の約7割はキタキチョウだ(私の主観調べ)
というのもキタキチョウは開けた草原や雑木林の周辺。時には住宅街の一画にも現れるという神出鬼没っぷりを発揮する。
ちなみに私は新宿の高田馬場の住宅地で見かけたことがあり、こんなところにもいるのかと謎に感心したという経験がある。
一方のモンキチョウはというと、開けた草原でないと中々お目にかかる事はないという、ややセレクティブな一面を持っている。
これに加えてキタキチョウは、春から秋までの長い期間普通に見られるので、そんな所も身近度が増している要因だ(成虫で冬眠するので、頑張れば冬にも見ることはできる)
要するにキタキチョウは、いつでもどこでも見るとこができる蝶ということになる。
そんな身近な蝶なので、蝶に詳しくない方がキタキチョウを見てモンキチョウと勘違いするのは定期なのだ。なので、間違えていたからと言って恥じることはない。誰もが通る道なのである。
ちなみに私が子どもの頃はキタキチョウではなくただ単にキチョウと呼ばれていた。(キチョウなのに全然貴重じゃないというしょうもない駄洒落は、昆虫少年であれば誰でも通った道であろう)
これがいつの間にか頭に「北」がついて呼ばれるようになり、今に至るというわけだ。
これは南西諸島のみに住んでいる者と本種が別種であるとされたために、こうした変更があったのだ。
ちなみに南西諸島版は今まで通りに「キチョウ」と呼ばれるらしいが(実際のところはミナミキチョウ呼びの方が主流)どうせなら分布の広いキタキチョウをそのまま無印キチョウにしてもらって、南西諸島版をミナミキチョウにする方が良かった気がするのは私だけだろうか。
まあ名前が変わっても同一人物否、同一蝶物なので、特に何かが変わったということでもない。いつの時代も身近にいてモンキチョウとよく勘違いされるのは本種である。
ところでこのキタキチョウはふわふわと飛んでいる割に中々止まらなかったり、止まっても、近付くとすぐに逃げてしまうことが多い。写真を撮っている身としてはなんとももどかしい蝶である。
いい写真を撮りたくて粘ったあげくに、結局撮れずに「まあいいか」となるのがいつものパターンだ。
もっともそれくらいの警戒心がないと野生では生きていけないのだろう。
実際に大勢で飛んでいることもあるし、モンキチョウよりも黄色が濃いような感じも受けるので、鮮やかさではむしろ勝っている感すらある。まさに身近な昆虫界を彩っている重要な存在だと言えるのだ。
これからも、その可憐な黄色い羽で私たちを楽しませてくれるだろう。
【キタキチョウ】
チョウ目シロチョウ科モンキチョウ亜科
ほぼ1年中見られる
前翅長18mm~27mm
本州から南西諸島にかけて分布
林縁や草原、住宅街等あらゆるところで見られる
身近で見られる蝶。成虫で越冬する。