昆虫散歩道

昆虫をあれこれ撮影してあれこれ語ります

ウラナミアカシジミ・・・止まらないとわからない大胆な模様

独特な模様をしているウラナミアカシジミ。しかし大胆な模様だ

参考までにアカシジミ。波ありとなしでここまで違う

前回の記事でアカシジミの記事を書いたのだが、そう来たのであればウラナミアカシジミの記事を書く他はないだろう。それくらいアカシジミとウラナミアカシジミは対になる存在であると言える。

 

ウラナミアカシジミもアカシジミ同様、ゼフィルスと呼ばれるシジミチョウの仲間の1種である。
ゼフィルスとはなんぞやと言うと、ミドリシジミ亜科に属する蝶の中で、樹上性があり、主に初夏から夏にかけて活動し、卵で冬を越す種類のことを指す
日本には25種類が確認されており、美しい羽を持つ者が多く、愛好家からの人気も高い一群だ。

そんなゼフィルスに属するウラナミアカシジミも例に漏れず、5月の終わり頃から活動をはじめ、卵で冬を越すというサイクルで生活している

 

基本的な生態はアカシジミとほぼ同じである。
日中はあまり活動的でなく、葉の上等でじっとしていることが多い
そして夕方になって日が傾く頃に活動のピークを迎え、樹上をチラチラと飛ぶ個体が目立つようになる

日中はこんな感じでじっとしている

食草もアカシジミ同様ナラ科のクヌギやコナラ等であるため、そのような木々が生えている雑木林や森林で、両種はしばしば混成する。
しかし、アカシジミと違ってより若い木々を食草として好む傾向があり、生息地としては、定期的に手入れを行っている雑木林が適していることになる。故に現在の管理放棄された里山環境とは相性が悪く、各地で数が少なくなっている。
かつて木炭が燃料の主流だった際は、常に雑木林の更新が行われ、若木を好む本種が大発生するというような事があったようであるが、今では中々そこまでの光景を目にすることは珍しくなってしまったわけだ。

 

アカシジミにはカシワアカシジミやムモンアカシジミ等似た種類が存在し、見分け方を覚えないといけないが、ウラナミアカシジミの裏面の模様は独特で、他の蝶と見間違うことはない。もちろん和名の由来もこの模様から来ているわけだが、しかしあのアカシジミに大胆な模様を付けたものである。ウラナミと名の付くチョウはいくらか存在するが、こんなにも黒い模様をあしらっている者はそうそういない。

こちらはウラナミシジミ。控えめに波模様といった感じ

羽の形が少し独特で、前の羽の下側が出っ張っており、個体によっては少し不恰好に感じることもある
かくいう私もウラナミアカシジミを撮影していて、真横から撮っているはずなのに「あれ?真横じゃない、、、?」と思うことがあるので、たまに私の脳内をバグらせてくれるというわけである。

なんかアンバランスな感じがしません?

そんなこんなでウラナミアカシジミは、初夏を彩るゼフィルスとして我々を楽しませてくれる。
また、飛んでいる姿はアカシジミと変わりがないので、波ありか波なしかを注視しながら楽しむのがマストだ。
皆さんも、ウラナミアカシジミを探しに出掛けてみよう。

 

【ウラナミアカシジミ

チョウ目シジミチョウ科ミドリシジミ亜科

成虫は5月~6月頃にかけて出現

前翅長16mm~23mm

北海道から四国にかけて分布

クヌギやコナラが生える雑木林等、特に若木を中心としたところに多く生息する

食草はナラ科のクヌギ、アベマキ、コナラ等

裏面の黒い模様が特徴のゼフィルス。夕方に活動のピークを迎える。

 

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アカシジミ・・・都市部でも探せば見つかる身近なゼフィルス

可憐な羽のアカシジミ。身近なゼフィルス代表だ

シジミチョウというと小型の蝶の一群であり、可憐な羽の持ち主も多く、愛好家の方々を楽しませてくれる存在である。
そして、その中でもとりわけ人気が高い「ゼフィルス」と呼ばれる一群が存在する。
そんなゼフィルスの中で、鮮やかな赤い羽の持ち主が今回紹介するアカシジミである。

 

アカシジミの紹介の前にゼフィルスの話をしておくと、前述の通りシジミチョウの仲間の一群で、樹上性が高く森林や雑木林を主な生息地としている
語源はギリシャ神話の神から来ており、美しい種類も多いことから愛好家からの人気も高い。
初夏頃に活動をはじめ、ブナ科の植物を食草としている種類が多いのも特徴だ。

 

その事を踏まえてアカシジミを見ていくと、5月の終わり頃に出現し、ブナ科のクヌギやコナラ等を食草にしているという、典型的なゼフィルスライクな生態をしている。

ゼフィルスの中でも割と身近な種類で、都市部でもまとまった雑木林があれば見ることができる。


日中は不活発で木陰等でじっとしていることが多く、夕方頃になると活発に樹上を飛んでいる姿をよく目にするようになる。
図鑑では、早朝以外はあまり下に降りてこないとの記載が多いが、個人的には割と日中に下草付近で見かけることも多いので、場所によりけりなのだろうか。

日中は基本やる気がない。良い子がお家に帰る頃活発になる

アカシジミには、見た目がそっくりなカシワアカシジミという種類が存在するのだが、これは北海道や東北、中国山地の一部にしか生息していない希少種で、埼玉のベッドタウン在住の私には到底縁がない。
ここらでアカシジミと対の存在として語られるのは、ウラナミアカシジミである。
ウラナミアカシジミは文字通り、羽の裏の模様が独特で波のように見えるため、アカシジミとはすぐに見分けがつく。ただ、飛んでいる所は別種に見えないので、止まったところを確認する必要がある。
生態もアカシジミと似ているため混在している所も多い。波ありが波なしか、どちらか予想しながら観察するのも中々乙なものである。

ウラナミアカシジミ。しかし大胆な黒い波である

ちなみに同じシジミチョウの仲間であるベニシジミは、和名の意味がまったく同じで言葉だけ入れ替えたような感じになっているが、見た目も生態もまったく異なっているので、混同しないように(どちらが先に和名が付けられたのかはわからないが、もうちょっと違う和名を付けようとは思わなかったのかと思わなくもなくもない)

ベニシジミ。ただ言い方を変えただけで和名の意味が一緒である

アカシジミが活動を開始する時、それはすなわち蝶愛好家のハイシーズン突入を意味する。
私も例に漏れず、アカシジミを見つけるとテンションが上がってしまい、ついつい何枚も写真を撮ってしまうわけである。それだけの魅力がアカシジミにはあるということなのだ。
初夏の雑木林を赤く彩るアカシジミを、あなたも探してみてはいかがだろうか。

 

【アカシジミ

チョウ目シジミチョウ科ミドリシジミ亜科

成虫は5月~6月頃にかけて出現

前翅長16mm~22mm

北海道から九州にかけて分布

クヌギやコナラが生える雑木林でよく見られる

食草はブナ科のコナラやクヌギ

ゼフィルスの1種。都市近郊でも雑木林があれば見ることが出来る。

 

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オオイシアブ・・・長老マジかっけえっす

なんちゅう長老感のあるアブ

初夏になり木々の葉が青々としてくる頃。多くの昆虫も活発に活動しはじめ、雑木林は賑わいを見せるようになってくる。
そんな季節に現れるはじめる大型で貫禄のあるアブが、今回紹介するオオイシアブである。

 

まずオオイシアブの特筆すべき点は、その見た目である。
明らかに他のアブに比べて大型(というよりもはやゴツい)とてもじゃないがアブとは思えない。
そんな体でにぶい羽音を立てながら飛んでくるため、スズメバチでも飛んできたのかと思わされる程だ

 

そして、止まってからわかるそのユーモア溢れる容姿顔周りに長めの毛が生えているため、まるで長老のような風貌だ
全体的な配色はマルハナバチのそれに近いものがあり、擬態をしているのではないかと思われる

こちらはコマルハナバチ。配色がまったく一緒

そんなゴツい体つきに長老感溢れる顔つきのアブ。さぞかし人間にとって危険な存在ではないかと思われるかもしれないが、オオイシアブは自発的に人間に襲いかかって、刺してくるといったことはない

 

実はアブの中でも人間に襲いかかってくるのは、動物の血を吸う種類に限られる
要するにオオイシアブは動物の血を吸うことはないので、故に人間に危害を加えることはないということだ(無理やり捕まえると刺される可能性はあるので、採集は自己責任でお願いします)

 

そんなオオイシアブはムシヒキアブという仲間の1種である。ムシヒキアブの仲間は他の昆虫を捕らえて食べるという、獰猛な一面を持つアブでもある
オオイシアブも例に漏れず、果敢に狩りをする。大型であるが故に、少々大きい獲物にも襲いかかって補食する。
硬い羽で覆われている甲虫も、オオイシアブの狩りの対象となり、硬い羽に覆われていてもお構いなしに捕らえて、体液を吸いとってしまう。

コメツキムシを捕らえたオオイシアブ。もはやかっけえ

狩りの仕方も中々狡猾で、葉っぱの上や遊歩道のフェンス等の見晴らしの良いところに陣取って待ち伏せをして、通りがかった獲物を捕らえる
そのため我々人間からしても、わかりやすい所に止まる確率が高いので、割と観察がしやすいアブだと言える。

見晴らしのいい岩の上に止まるオオイシアブ。いや、かっけえな

大型のアブであり、しかも長老のようなルックスをしているオオイシアブだが、獲物を探している際の動きは大きさのわりに中々俊敏で、辺りを確認しているのか知らないが、頻繁に向きを変えたりしているところをよく見かける。この辺りはさすがハンターと言ったところだ。

 

そんなこんなで強烈な個性と存在感で雑木林を闊歩するオオイシアブ。もし現れたら目に留まることは間違いない。
その貫禄の姿がかっけえので、是非とも探してみていただきたい。

 

オオイシアブ】

ハエ目ムシヒキアブ科

成虫は5月~9月頃にかけて出現

体長15mm~26mm

本州から九州にかけて分布

雑木林の林縁等に多く生息

幼虫は朽ち木の中でコガネムシの幼虫等を捕食する

毛深い見た目が特徴的なアブ。甲虫類等他の昆虫を捕食する。

 

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トホシテントウ・・・こんな幼虫からこんな成虫になるとはね

星が大きいトホシテントウ。細かい毛が生えている

一般的にテントウムシは、アブラムシを食べる存在であり、ガーデニングが趣味の方や、農家の方にしてみたら、益虫という位置付けとなっている。
ところが、そんなテントウムシ界の常識とはちょっと事情が変わってくるのが、今回紹介するトホシテントウだ。

 

なぜ事情が変わってくるのかというと、トホシテントウは肉食ではなく草食だからである。
ということはすなわち、人間にとっては害虫になってしまうということなのである。
もっともトホシテントウはウリ科のマメチャヅルやカラスウリ等を食べるため、農作物への被害はそれほどないようである。

 

ところが、仲間のニジュウヤホシテントウのせいで、どうも害虫扱いされているような気がするのは私だけだろうか。
ニジュウヤホシテントウはトホシテントウと同じマダラテントウ亜科に属するテントウムシで、トホシテントウと同じく草食性である。
問題は食べる植物の種類で、ナスジャガイモなど、ナス科の植物を食べるため、そりゃあもう農家さんの天敵である。
同じ仲間であるために、昆虫図鑑ではよく両種が並んで紹介されていたりするので、子どもの頃の私は、てっきりトホシテントウもニジュウヤホシテントウ並の害虫だと思っていた。実際の被害状況は気にするほとでもないらしいので、皆さんは勘違いしないように。

こちらはオオニジュウヤホシテントウ。星多いねー

見た目的には他のテントウムシと違い、あまりツヤがなく細かい毛が生えているのが特徴である。
和名の通り10個の黒い点があり、またその黒点が大きいため、なんとも存在感がある。顔はなんともつぶらな瞳でかわいい顔をしている。

こうして見るとかわいい顔をしている

模様がきれいにハートになっている個体。かわいいなおい

さて、成虫はちょっと変わった生態ではあるが、テントウムシとしてまあおかしいところはそれほどない。しかし、問題は幼虫である。成虫の姿からは似ても似つかない、わけのわからないトゲトゲの見た目をしている。

幼虫。何を思ってこんなにトゲトゲになったのか

あまりに奇抜な見た目なので、はじめて見た時は100度見くらいしてしまった
ちなみにこんな見た目だが毒があるわけではなく、硬いトゲということもなく刺さる心配もないので、触ってもまったく危険はない
しかしこんなトゲトゲがテントウムシになるのだから、昆虫の世界は常識など通じないとんでもない世界である。

 

こんな感じでトホシテントウは、幼虫も成虫も魅力たっぷりの昆虫だ。害虫というほどでもないので、安心して愛でることができる。
トホシテントウを見かけたら、そんな魅力に思いを馳せてみてはいかがだろうか。

 

【トホシテントウ】

甲虫目テントウムシ

成虫は5月~9月頃にかけて出現

体長6mm~9mm

北海道から九州にかけて分布

雑木林の林縁等に多く生息

ウリ科のマメチャヅル等を食べる

草食性のテントウムシ。ツヤがなく表面に細かい毛が生えている。

 

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ルリシジミ・・・親子とも様々な物を食する身近な青いシジミチョウ

爽やかな青がのぞくルリシジミ

メスは青の範囲が狭い

シジミチョウの仲間と言うと小さなチョウの仲間で、気に留めてないと目立たないチョウであるが、可憐な羽や仕草で、人気の高い一群と言えよう。
そんなシジミチョウの中で、身近に生息する青いシジミチョウ3トップが存在する。それはヤマトシジミツバメシジミ、そして今回ご紹介するルリシジミだ。

 

ルリシジミ春から秋までの長い期間見られるチョウで、冬以外であればいつでも会うことができる。

 

見た目としては先ほどご紹介した3トップの一角、ヤマトシジミとよく似ており、はじめの内はどちらか見分けることが中々難しいだろう(ちなみにツバメシジミは後ろの羽に尾状突起と呼ばれる尻尾があり、加えてオレンジのワンポイント模様があるため、見分けるのは容易である)
羽の模様や色味など違いがあるが、1番分かりやすいのは複眼の色だろう。ルリシジミが黒いのに対して、ヤマトシジミはくすんだなんとも言えない色をしている

ツバメシジミ。後羽のオレンジとしっぽが特徴的

ヤマトシジミ。目の色がなんともいえない色だ

さて、似ているヤマトシジミとの見分け方がわかったところで一件落着、といきたいところだが、実はヤマトシジミよりももっと似ている種類が存在する。それがスギタニルリシジミだ。
これに関してはもはやほとんど同じような模様をしており、見分けるのは非常に難しい

スギタニルリシジミ。さあさあこんがらがってきたぞ

後羽の下の方にある黒点がくっつかないのがルリでくっつくのがスギタニルリという見分け方があるが、ここが分離するスギタニルリもいるし、分離しないルリも存在するので、なんとも悩ましい(詳しくは下の画像参照)
後は、色味がルリの方が明るくスギタニルリの方が暗いという違いがある。これは実際に見てみると明らかに違いがわかるので、フィールドワークで見分け方を掴む方が手っ取り早いだろう。
もっともスギタニルリは山地性が強く、都市部近郊にはほとんど生息していないので、埼玉のベッドタウンに住んでいる私が近所で見かけるのはほぼ間違いなくルリである。

ルリとスギタニルリの見分け方。例外も普通にあるっておい

生息場所の話をすると、ヤマトやツバメが拓けた草原を好むのに対して、ルリは雑木林やその林縁にも好んで生息する傾向にある
ヤマトやツバメはカタバミシロツメクサ等、背の低い植物を主な食草としているのに対して、ルリはマメ科やミズキ科、タデ科等の様々な種類の植物を食草としているため、様々な所に出没するというわけだ。
この辺りの融通が効くところも、ルリシジミが身近なチョウである所以だろう。

 

また、成虫においてもいろんな物を食するグルメで、各種花はもちろんのこと、路上で吸水する事も多い他、時には獣糞も訪れるという、かわいらしい見た目からは想像も付かない食性をしている
要するにルリシジミは幼虫から成虫まで、様々な物を食して生きているたくましいチョウなのだ。

獣糞を訪れるルリシジミ。お食事中の方すみません

身近な所に存在して我々を迎えてくれるルリシジミ。かわいくもたくましいこのチョウは、昆虫観察をすれば必ず会う機会があるだろう。
是非ともルリシジミに触れて、昆虫観察の第一歩を踏み出したいものである。

 

【ルリシジミ

チョウ目シジミチョウ科ヒメシジミ亜科

成虫は3月~10月頃にかけて出現

前翅長12mm~19mm

北海道から九州にかけて分布

雑木林の林縁や草原等様々な場所で見られる

食草はマメ科、ミズキ科、ブナ科等様々な植物

身近な青いシジミチョウ代表選手。食草が幅広く様々な環境に適応している。

 

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マドガ・・・小さくもおしゃれに決めるきれいな蛾

中々きれいな模様をしたマドガ。林縁の花をよく訪れる

一般的にガというとチョウに比べて地味なイメージを持つ方が多いだろう。しかしそんなガの仲間で、黒地に白と金色の斑点を散りばめるという、なんともきれいな羽を持った者が存在する。それが今回紹介するドガである。

 

ドガ羽を開いても2cmに満たない小さなガである。基本的にそれくらいのサイズのガは目立たない者が多いが、マドガは明らかに一線を画する羽をしている。
和名の由来は白い斑点模様が窓に見えるかららしいが、しかし実際に見てみると、そこまで窓には見えないような気がするが、それは言わないお約束である(黄色やら金色やらの模様が美しいので、それを和名に入れた方が・・・おっと誰か来たようだ)

 

雑木林やその周辺を基本的な住みかとしており、花の蜜を吸っているのをよく目撃する
花の蜜を吸っている際は夢中なのか、ヘドバンをするがごとく体を振るわせていたりする
中々派手な格好をしているが珍しい種類というわけでもなく、都市部近郊でもまとまった雑木林があれば生息している印象だ。
そんな日本では割と身近な種類であるマドガだが、日本固有種であるために海外では見ることができないようである(似たような者は存在するらしいので、興味がある方はぜひ海外に行ってみよう)

 

ガというと夜行性で、灯火を訪れたりする印象を持つ方も多いと思うが、ドガは昼行性である。そのためマドガに出会いたければ、日の高い時間帯に雑木林を歩くことだ。
小さいながらもキレイで存在感があるので、意外と見つけるのは容易である。

 

ドガのオスとメスはとてもよく似ており、一見すると区別がつかない。
実は見分け方は触覚の形で、上半分が櫛状になっているのがオスで、そうなっていないのがメスということになる。しかし、これは写真を撮って拡大するか、採集して虫眼鏡等で確認するなどしないと、よほど視力に自信がない限りは、肉眼で違いを区別することはほぼほぼ不可能だ。

また、お尻が細長く伸びているのがオスで、伸びていないのがメスという見分け方もある。こちらの方がわかりやすいが、それでも基本的に小さい蛾なので、肉眼で見分けるのは中々に難しいだろう。

オスのマドガ。ちなみに上の画像はメスである

ちょっとわかりづらいが、オスは触覚の上半分がちょっとギザギザしている

お尻の先はオスの方が細長く伸びている

こんなにも美しさに振れたマドガだが、幼虫はカメムシっぽい匂いを発するという。
カメムシの匂いを発するような芋虫が、なんとも美しいガになるというのだから、昆虫の世界は奥深いものである。

 

とにかくマドガは、小さくも美しい蛾なので、見かけるとテンションが上がること請け合いである。
小さいが故に、中々観察するのが難しいかもしれないが、是非ともじっくり観察していただきたい。
きっとあなたも、マドガの虜になることだろう。

 

【マドガ

鱗翅目マドガ科マドガ亜科

成虫は5月~9月頃にかけて出現

開張14mm~17mm

北海道から九州にかけて分布

雑木林や林縁等に多く生息

食草はボタンヅル

小さくも美しい蛾。林縁の花をよく訪れる。

クヌギカメムシ・・・紅葉するのは木々だけではない

シュッとした印象のクヌギカメムシ

日本には四季があり、その季節その季節で様々な景観を楽しむことができる。皆さんもご存知の通り、木々の葉っぱは初夏にかけて緑が深くなり、秋には紅葉で赤やら黄色やらに色付くわけであるが、そんな木々と同じように体色を変化させる昆虫がいる。それが今回紹介するクヌギカメムシだ。

 

一般的なカメムシに比べてシュッとした体型をしているのが特徴だ。文字通りクヌギの葉を食べるため、クヌギの木の幹にいることを目にすることが多い

前述の通り初夏にかけて成虫になり緑色になるが、秋になると全体的にオレンジ色に変化するという、まさに紅葉と同じルートを辿る
そして、そんな紅葉が進んだ時期に交尾をして、クヌギの木の幹に卵を産み付けるという生活を送る
この時期のメスはお腹が異様にパンパンになっており、いかにもたくさん卵を産みますよ感がひしひしと伝わってくる。

12月の終わり頃でも見かけることがあるので、寒くなってきて昆虫がいなくなり、心まで寒くなってくる昆虫好きの心に寄り添ってくれる存在だ。

12月に撮影したメスの写真。節々が赤くお腹も出っ張っている

前述のように、クヌギカメムシの卵は木の幹に産み付けられ、しかも同じ木にかなり大量に産み付けられることもあるため、生息地にいくと簡単に見つけられる。
緑色の数の子のような感じで、なんとも言えない見た目をしている。
幼虫はまだ寒い時期から孵化し、最初のうちはこのゼリー状の卵を食べる。そして、暖かくなり新芽が出る頃に植物の汁を吸う生活にシフトする
なんでもこの卵塊は幼虫が成長するのに必要な栄養があるだけでなく、その後の植物の汁を吸う生活へとシフトするために必要な細菌が含まれているらしく、クヌギカメムシにとってはめちゃくちゃ重要なまさにミラクルゼリーなのである。

クヌギカメムシの卵。緑の数の子と人は呼ぶ(私だけか)

生まれるとこんな感じ。すごい集合体

そんなクヌギカメムシだが、実はかなりそっくりなラクヌギカメムシサジクヌギカメムシという別種が存在する。
パッと見で見分けることはほぼ不可能で、裏の気門を見る必要があるここに黒い点が並んでいればクヌギカメムシで、黒い点がなければヘラクヌギカメムシかサジクヌギカメムシのどちらかである(ちなみにヘラクヌギカメムシとサジクヌギカメムシの見分け方は生殖器の形等で見分ける)
いずれにせよ、この3種類を別種と解明したことがただただすごいと私は思う。

クヌギカメムシは黒い気門が並ぶ。他の2種類はこれがない

木々と同じように体色を変化させ、成長過程も癖のあるクヌギカメムシ。かなり個性的なカメムシだが、いるところにはたくさんいるので、ちゃんと探すと結構目立つ存在だ。
あなたもクヌギカメムシで、季節の変化を感じてみてはいかがだろうか。

 

クヌギカメムシ

半翅目クヌギカメムシ

成虫は5月~12月頃にかけて出現

体長12mm前後

本州から九州にかけて分布

クヌギの生える雑木林等に生息

クヌギ等の葉を汁を吸う

文字通りクヌギの幹にいることが多いカメムシ。紅葉のように体色が変化する。