昆虫散歩道

昆虫をあれこれ撮影してあれこれ語ります

ラミーカミキリ・・・美しい水色と個性豊かにあしらう黒色の模様

ライトブルーが美しいラミーカミキリ。小型のカミキリムシだ

昆虫には当然和名というものが付けられており、各々生態なり見た目なりの特徴を表現した名前が付けられている。そして、和名には基本的に漢字が当てられているものだが、漢字がない和名を付けられた者も存在したりする。ラミーカミキリはそんな昆虫の1種だ。

 

そもそも、ラミーとはなんぞやというところだが、イラクサ科の植物の1種で、要するにラミーカミキリラミーを食べるからラミーカミキリという名が付けられたわけである。昔富士通のパソコンに入っていた「ラミィの大冒険」とは関係ないので間違えないように(誰も間違えねえよ)

 

水色を基盤として黒の模様が入っており、とても美しい
体長は大きくとも2cm弱とかなり小型で、飛んでいるところはなんだかハチを思わせる
小型だからか身軽なようで飛ぶ頻度は高く、近付くとそそくさと飛んで逃げてしまうことが多い。

 

模様には結構個体差があり、小さいカミキリムシなので目を凝らさないといけないが、各々の違いを楽しむのも中々面白い。

模様には個体差がある。これを楽しむのもまた一興

カミキリムシというと木に穴を空けて産卵し、その木の中で幼虫が育つ事でお馴染みだが、ラミーカミキリイラクサ科のカラムシ等の茎の中で育つ
故にそうした植物に依存して育つのか、カラムシの群落ではかなりの数が見られるが、そうでない所では中々見かけないような印象がある。

 

実は幕末の頃日本にやってきた外来種であるとされている。これはどうやら、繊維の原料となるラミーを輸入した際に移入してきたようである。
また、元々温暖な地域を生息域としているので、寒い地域には生息していない(具体的には冬季の平均気温が4℃の地域が北限のようである)
昔の図鑑では西日本にしかいないという記載がされているものも見かけたが、現在は私が住んでいる埼玉県でも普通に見られるようになっている
皆さんお察しの通り、近年の温暖化の影響で分布を北へと拡大させており、東北地方でも目撃例があるようである

 

超個人的な話ではあるが、ラミーカミキリは子どもの頃かなり印象に残っていたカミキリムシである。それは前述のように和名にラミーと名付けられており、図鑑の中でも明らかに異彩を放っていたからだ。
子どもの頃はまだ関東に生息していなかったのか、実物を見たことはなかったが、とにかくラミーってなんだよ!とツッコんでいたのを覚えている。
そして、大人になってはじめてラミーカミキリを見たときに感じたのは「ちっせえ!!!」だった。
和名とカミキリムシという印象だけで、まあまあゴツい種類を想像してしまっていた私が悪い話であるが、それにしても小さくて、なんだか拍子抜けしてしまったわけだ。
ツマグロオオヨコバイの記事でも言及したが、どうも私は図鑑と実物のギャップにショックを受けやすい体質のようである。

 

そんな小さなラミーカミキリだが、美しいカラーリングで我々を楽しませてくれる存在であることに間違いはない。
最近は関東でも見られるようになって、埼玉在住の私でも身近な存在になってきている。
ラミーカミキリを探して、思い思いの装飾を楽しんでみてはいかがだろうか。

 

ラミーカミキリ

甲虫目カミキリムシ科フトカミキリ亜科

成虫は5月~7月頃にかけて出現

体長8mm~17mm

本州から九州にかけて分布

雑木林やその林縁の草地に多く生息

幼虫はラミーやカラムシ等の茎等を食べる

水色が美しいカミキリムシ。幕末頃日本にやってきた外来種とされている。

 

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オオシオカラトンボ・・・光る黒い目と水色の体は一人前の証

オスのオオシオカラトンボ。目が黒いのが特徴

参考までにシオカラトンボ。目が青っぽく体も細め

シオカラトンボというと、日本中のあらゆる所に生息するポピュラーなトンボであり、昆虫に詳しくない方でも知名度が高いのではないだろうか。
そんなシオカラトンボより大型で存在感のあるトンボが今回紹介するオオシオカラトンボである。

 

シオカラトンボよりも水色が濃く、複眼が黒いので比較すると結構イカつい印象を受ける。
体格もシオカラトンボよりしっかりしているので、水辺を飛び回っている姿は中々貫禄がある。


シオカラトンボのように住宅街真ん中に現れるようなことはほとんどないが、都市部周辺でも自然多めの公園の池等に行けば普通に生息している
分布も北海道から南西諸島まで生息しており、実は結構身近な存在だと言えよう。

 

オオシオカラトンボの水色の体色は粉を吹いている故なのだが、これは成熟した個体の証でもある。実は未成熟のオスはまったく違う体色をしており、ほぼほぼメスと同じような感じになっている。なので、未成熟個体はオスかメスか非常にわかりづらい
お尻の突起の形で見分けられるので、細かくてわかりにくいがなんとか観察してみよう。
ちなみにメスは成熟してもそのままの体色なので、分岐点はオスの粉ふきという事である。

未熟オス。色が全然ちげえ

メス。メスは未熟も成熟もこんな色

雌雄はお尻で見分けられる。中々細かい

実はトンボが成熟するにつれて体色が変わるのはごくごく普通の事であるので、結構ややこしかったりする。赤とんぼとしておなじみのアキアカネなんかも未熟と成熟でだいぶ色が異なっている。
しかし、成熟しているかどうかが一目でわかってしまうというのはなんとも恥ずかしいような気がする。人間は特に見た目で未熟かどうかがわからないので、いやあよかったよかった(?)

アキアカネも成熟と未成熟でこれほど違う

そんなオスのオオシオカラトンボは中々漢気溢れるようで、メスが産卵しているところを見守るように飛んで護衛したりする
奥さんを守っているなんてなんて素敵な、、、!と思った方もいるかもしれないが、トンボは同じ相手と添い遂げる事などなく、また別の交尾相手を探しに飛んでいってしまう

メスを守るためにホバリング。これがトンボの漢気である

さらに、交尾中の個体に凸することも全然普通にあったりする(メスの護衛に熱心なのも、そうした事情があるからではないかと邪推してみる)もはや子孫を残すためにはなんでもござれな世界と言えよう。
ちなみにこれもオオシオカラトンボのみならずトンボ界隈では普通の事なので、皆さんショックを受けないでいただきたい。

まあ要するに、トンボはトンボで子孫を残すために全力を捧げているわけである。それを人間の倫理観で否定するなどおこがましいというもの。そうやって何代も命を繋げてきたと思うと、なんだか素晴らしいなと思うような思わないような、まあ思うことにしよう!そうしよう!うんうん。

 

とまあ無理やり納得させてしまったが、トンボの世界は中々熾烈で、縄張り争いもかなり激しい。そんな死線を潜り抜けていると思うと、かっこよさも倍増というもの。オオシオカラトンボの黒光りする複眼もなんだかめちゃめちゃかっこよくないだろうか。
そんな争いを制したオオシオカラトンボのかっこよさに触れる時、昆虫観察の醍醐味を感じることができるのだ。

 

【オオシオカラトンボ

トンボ目トンボ科

成虫は5月~11月頃にかけて出現

体長52mm~61mm

日本全土に分布

林縁の池や湿地等に多く生息

昆虫を捕食

シオカラトンボより少し大きいトンボ。黒い複眼が特徴。

 

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コチャバネセセリ・・・小さくもちょっとおしゃれなセセリチョウ

羽の脈と縁がはっきりとしているコチャバネセセリ

こちらはチャバネセセリ。茶色一色って感じ

我が国にはチャバネセセリなるチョウが存在するのだが、昆虫に興味がなければ中々知られていない存在だろう。チャバネセセリはセセリチョウの仲間で、とても小さく素早く飛ぶのが特徴である。
そんな小さなチャバネセセリに、さらに「コ」が頭に付いたチョウが存在する。それが今回紹介するコチャバネセセリというわけだ。

 

和名からさぞかし小さなセセリチョウなのだろうと思われるかもしれないが、正直チャバネセセリと同じくらいの大きさである。
形態としてはチャバネセセリと違って羽の脈が黒く出るので、チャバネセセリと見分けるのは容易だ(鱗粉がかすれて見分けにくい個体もいるのでその辺は注意が必要である)
全体的に茶色のチョウなので、地味で目立たない系であることは否めないが、よく見かけるセセリチョウ代表のイチモンジセセリやチャバネセセリと比べると、ちょっと装飾が豊かであり、なんだかおしゃれな感じがする。

 

飛んでいる姿はいわゆるセセリチョウといった感じで、飛び方も素早い。しかし、長時間飛び続けるという感じでもなく割とすぐに止まる
セセリチョウお得意の羽を半開きにするジェット機みたいな独特の止まり方も披露してくれるので(私はセセリ止まりと呼んでいる)THEセセリチョウの1種といった感じだ。

 

図鑑では、都市部にも比較的多く生息しているとの記載が多いが、私が住む埼玉南部のベッドタウン周辺ではあまり見かけることがない。
しかし、少し自然の多い地域に足を運ぶと、そこらじゅうで飛んでいるのを見かけるほどで、ファーストチョイスになっていることも珍しくない。

 

早い者は4月の終わり頃から発生し、チャバネセセリやイチモンジセセリ等、同系統の他のセセリチョウに先駆けて出現する。GW頃に見かける者はだいたいコチャバネセセリである。

 

チョウの仲間よろしく花で吸蜜する姿をよく目にするが、コチャバネセセリは中々のグルメなようで、花以外にも様々な物に集まる
地面で吸水するのもよく見かけるし、それ以上に好きなのが動物の糞である。複数匹集まることもザラで、特に山地で動物の糞が落ちていようものなら、高確率で集まっている姿を目撃する。

吸水するコチャバネセセリ

糞にも普通に集まる。お、おいしいのかい?君たち・・・

動物の糞に集まるのなんてハエくらいじゃないの!?チョウなのにそんな動物の糞に集まるなんて・・・と思った方も多いかもしれないが、実は動物の糞には、結構色んなチョウが集まったりする。特にタテハチョウの仲間は動物の糞好きが多く、集まっているのを目撃するのは普通も普通である
なぜこんなに動物の糞に集まるのかと言えば、実は糞を摂取することで繁殖力を高めることができるようであるが、詳しく書くと長くなりそうなので、気になった方は調べてみると面白い事を知ることができるだろう。

 

ちょっとおしゃれでフライング気味に出現して色んな物を食するコチャバネセセリ。
せっかちそうに飛んではどこかに止まってまた飛んでを繰り返している。そんなコチャバネセセリを追ってみると色々なシチュエーションに遭遇することだろう。
是非ともコチャバネセセリを探してみよう。

 

【コチャバネセセリ】

チョウ目セセリチョウセセリチョウ亜科

成虫は5月頃と7月~8月頃にかけて出現

前翅長14mm~19mm

北海道から九州にかけて分布

雑木林の林縁等に多く生息

食草はタケ科のササ類等

羽の脈がはっきり現れるセセリチョウ。花の他に吸水や獣糞にもよく集まる。

 

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キリギリス・・・有名だけど意外と姿を目撃する者は少ない?

草むらの鳴く虫代表。夏って感じがするよね

アリとキリギリスといえば、知らない方がいないくらい有名な寓話だ。
働き者のアリと怠け者のキリギリスを対比的に描いた物語はあまりにも有名なお話といえよう。
さて今回はそんなキリギリスをご紹介していこうと思うわけだが、果たしてキリギリスは本当に怠け者なのだろうか?そんなキリギリスの真実に迫っていこう。

 

知名度だけであれば抜群のキリギリスだが、実際に見たことがある方は案外少ないのではないか
その要因としては、そこまで身近な存在でない事が上げられる。私は埼玉南部のベッドタウンに住んでいるが、周辺でキリギリスはまず見かけない。ある程度自然が豊かなところまで赴かないと生息していないのが、キリギリスの実状といえよう。

また、基本的に背丈が高めの草むらの中に潜むように暮らしているため、中々目に止まる所に現れない。鳴き声は聞こえど、姿を見るにはかなり注意深く草と草の間を探さないとダメなので、家の近くに生息地があるような方でも、昆虫に興味がなければ素通りしてしまうことだろう。 

基本は草むらの中の方。何見てんのよ!?

体つきはかなり立派で、他のキリギリス科の仲間と比較してもさすがの貫禄といったところか。その体つき故に草の隙間をのそのそ歩いてることが多く、草の先端に行くと草が重さに耐えられず、結局元の位置に戻ってしまうというかわいらしい様子もよく目撃する。

 

鳴き声は短めに「ギィー」と鳴き、次のギィーまでに「チョン」という謎の短い声が入るという、ちょっと独特な感じになっている。
アリとキリギリスではキリギリスは何も考えずにただ楽しく歌を歌って過ごしているという設定になっているが、実際はそんなに気楽なものではない。キリギリスが鳴く主な理由は、無論メスへのアプローチのためである。彼らは次世代に子孫を残すために、頑張って鳴いているというわけで、種の存続にとって極めて重要な役割を果たしていることになる(セミ同様鳴くのはオスだけである)
ちなみに働きアリの中には2割ほど働かずにサボっている者がいるらしいので、必ずしもアリの方が働き者のというわけでもない(これにはちゃんと理由があるのだが、今回はキリギリス回なので、また別の機会に語ってみようと思う)

 

メスは鳴く機能がない分、お尻に産卵のための管(まんま産卵菅という)が付いており、故に雌雄の見分けは容易だ。メスは鳴かないので、鳴き声である程度場所がわかるオスに比べて、見つける難易度がかなり高くなっている。

メス。お尻に産卵管がついているのですぐメスだとわかる

実は他の昆虫を襲って食べる肉食性の一面を持ち、セミなんかも補食する事があるほどである(植物を食べることもあるので、正確な食性は雑食である)
キリギリスの足はトゲトゲになっているのだが、これは捕らえた獲物を逃がさないためのものらしい(怖ぇ・・・)

 

そんなキリギリスであるが、実はニシキリギリスヒガシキリギリスという、完全な別種に分けられるというのはあまり知られていないところだろう。
ニシキリギリスは近畿から西に、ヒガシキリギリスは青森から岡山に分布しているようで、故に、私が埼玉県で撮影したキリギリスは、正確にはヒガシキリギリスということになる。
さらにもっと言うと、正確にはもっと細かく分けるのがマストらしいのだが、ここまで来るともう私が理解できる領域をはるかに越えてしまっているので、特に語れることもない(おいおい)

 

とまあ、キリギリスが怠け者でないことがわかったところで(無理矢理繋げてやがる)やはり思うのはキリギリスは見かけるとテンションが上がるということだ。だってなんか立派だし。体高があるってだけでなんか興奮するし。
そして、真夏の真っ昼間に鳴いているので、夏の風物詩でもある。
セミとはまた違った夏の風物詩を堪能することが、何よりの楽しみなのである。

 

【キリギリス】

バッタ目キリギリス科キリギリス亜科

成虫は7月~11月頃にかけて出現

体長30mm~40mm

本州から九州にかけて分布

日当たりのいい草原や河川敷等に多く生息

様々な植物や昆虫を食べる

日本を代表する鳴く虫。草の中にいるので姿を見るのが難しい

シオヤアブ・・・かわいい顔して昆虫界最強クラスのアサシン

林縁でおなじみシオヤアブ。目がカービィっぽい

時に昆虫という存在は、人々に嫌われることも珍しくない。台所の使者であるゴキブリや吸血鬼のカ。悪臭発生機のカメムシ等は、常に駆除の対象となるような嫌われ昆虫たちである。
そして、アブも人の血を吸い、しかもその瞬間がとてつもなく痛いので、嫌われ昆虫の仲間入りをしていると言えよう。
しかし、そんなアブの中で、なんともかわいらしい顔つきをしているのが、今回紹介するシオヤアブである。

 

まあまずは画像をじっくり見ていただきたい。なんともかわいい目をしていると思わないか?
この顔つきはまるであの大人気キャラクター、カービィのようなルックスだ。
しかもお尻に白いポンポンが付いているという、なんともかわいいに寄せた作り。ちなみに白いポンポンが付いているのはオスだけで、メスは先細りのお尻になっている

メスはお尻の白いポンポンがない

そんなアブっぽくないかわいらしい見た目で、なんとも平和な昆虫なのかと思ったそこのあなた。あなたはまだシオヤアブの本性を知らない。
実はシオヤアブは、昆虫界最強という称号を得ている。それはなぜか。ひとえにシオヤアブが、獰猛なハンターだからである。
そうはいってもシオヤアブの体長は3cmほど。昆虫界最強と名乗っていいほど強そうには見えない。ところがそんな体格でありとあらゆる昆虫を補食する。時にはトンボやスズメバチ、カマキリ等、いやいやパワーバランス逆だろうとツッコミたくなるような者まで、獲物として捕らえてしまう
ちなみにカメムシテントウムシ等、臭いで撃退する系の面々も、シオヤアブにとっては関係なし。例えるなら、スポーツマンNo.1決定戦室伏広治状態である。
しかもシオヤアブがすごいのは、小さい体格にも関わらず、毒等の飛び道具を使うことはなく、体のどこかが伸縮したり、罠を仕掛けたりすることなども一切ない。そう、己の体を目一杯使って狩りをするというわけだ。

 

基本的な狩りの仕方は、適当なところで待ち伏せをして近くを通りがかった者に襲いかかって口吻をぶっ刺して仕留めるという非常にシンプルなもの(やり口がマフィアのそれと一緒)
その狩りの方法故に目がとても良いようである。
また、その獰猛な性格故に、フィールドワークをしていれば、お食事中のシオヤアブに会うことは難しくない。

お食事中のシオヤアブ。よく見る光景である

逆光でアサシン感マシマシ

ただし、一応補足しておくと、シオヤアブが強いのはあくまで奇襲の場合であって、正面からやりあうと強くないという意見も多々ある。まあサイズがサイズだけに、カマキリ等とやりあったら普通に負けそうな気はする。

 

さて、ここで皆さんも気になるだろう。そんな獰猛な性格のアブ。それはそれは危険なのではないかと。
ところがどっこい、シオヤアブは自ら人間を襲うことはない、大人しいアブである(いや、大人しいは語弊があるか?)
要するに人間を襲うアブは血液を欲しているアブであり、シオヤアブは人間の血液などまったく興味がないので、襲いかかってくることなどないということだ。
ただし、無理やり捕まえたりすると刺してくることがあるようだ。しかもめちゃくちゃ痛いらしい。どれくらい痛いかは刺されたことがないのでわからないが、興味がある方は捕まえて確かめてみよう!

 

とまあ、自ら危害を加えてくる系でないとわかったところでシオヤアブを見てみると、かわいい顔がとても愛らしい存在である。
そして、顔に似合わず昆虫界最強というギャップ萌え。こんなに魅力的な昆虫も中々いない。
ぜひともシオヤアブを見つけて、そのギャップに魅了されていただきたい。

 

【シオヤアブ】

ハエ目ムシヒキアブ科シオヤアブ亜科

成虫は6月~9月頃にかけて出現

体長23mm~30mm

北海道から沖縄にかけて分布

林縁の日当たりの良い場所等に多く生息

幼虫はコガネムシの幼虫を捕食する

他の昆虫を狩る獰猛なアブ。オスのお尻の白い毛が特徴的。

 

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マメコガネ・・・海外でもブイブイいわせるジャパニーズ・ビートル

茶色い羽のマメコガネ。飛んでいるところはミツバチっぽい

参考までにコガネムシ。すごいメタリック

コガネムシといったらメタリックなカラーリングでおなじみの甲虫だ。その輝かしいルックスから、金持ちという印象すら持たれているほどだ(若い世代には伝わらなそう)
しかし、一口にコガネムシといっても実はかなりの種類が存在し思い思いの形態や生態をしている(ちなみに、広義にはカブトムシもコガネムシの仲間である)
そんなコガネムシの中で今回は、世界で暴れまわる暴君をご紹介しよう。その名もマメコガネである。

 

しかし、世界で暴れまわる暴君なのにマメコガネとは、なんとも拍子抜けな名前である。
大きさは1cm前後と、普通のコガネムシと比べるとかなり小さく。飛んでいる姿はまるでミツバチのようなかわいらしい感じだ。
茶色い羽がトレードマークで、コガネムシと比べて色彩は地味な印象を受ける。

おいおい、暴君要素が全然ないじゃないかと思ったそこのあなた。マメコガネが本領を発揮するのはこれからである。


マメコガネがなぜ猛威を振るっているのかと言えば、その食性に原因がある。
マメコガネマメ科の植物や、ブドウ、クヌギ等様々な植物を食する。要するにマメコガネは、重大な農業害虫ということなのだ。
また、幼虫は土の中に潜って植物の根を食べるため、農作物を枯らしてしまうこともある。すなわちマメコガネは、大人から子どもまで完全無欠の害虫ということになるわけだ。

実はコガネムシの仲間には、マメコガネ同様成虫が植物の葉を食べ、幼虫は地中で根を食べる種類が多い。ということは、その分害虫とされる種類も多いということだ。

 

農作物にとっては看過できない天敵であるということはわかった。では一体、世界で暴れまわる暴君とはどういうことなのか。勘の良い方はすでに気付いているかもしれない。
マメコガネは日本在来種の昆虫なのだが、20世紀初頭、貿易の荷物に紛れてアメリカに進出爆発的に分布を広げ、アメリカ中の果樹に大打撃を与えてしまったのだ
アメリカではジャパニーズ・ビートルと名付けられ、恐れられる存在となった。

 

しかしマメコガネを完全に防除するのは難しいと言わざるを得ない。
このマメコガネ。様々な植物を食するからかかなり数が多い。ちょっと草が茂ってるところに行くと普通にたくさんいるため、仮に畑を中心に駆除を行ったとしても、その辺の草地で暮らしていけるたくましさがある
そして、マメコガネの食指はヨーロッパにも及ぶようになり・・・

生息地ではあちこちでアチチアチチ

そんなこんなでマメコガネは害虫なので、ネガティブ要素満載の記事になってしまっているわけだが、少しくらいマメコガネのポジティブなところを書かないと怒られてしまいそうだ。
マメコガネのいいところはひとえにあれだ、まあなんというか、要するにその、なんかかわいらしい。そう、なんかかわいいだろう!ちっちゃなコガネムシでなんかかわいいのだ!そうだそうだ!

 

まあなんか無理やりまとめてしまったが、生態によって害虫だと決められてしまうのも、なんともやるせないような気がしなくもない。マメコガネはこの生き方で長い年月を過ごしてきたのであり、それは別に悪というわけではないのである。 
心を広く持ってマメコガネを見ると、なんともかわいらしい存在だ。
マメコガネを探して、色々思いを馳せてみてはいかがだろうか。

 

マメコガネ

甲虫目コガネムシスジコガネ亜科

成虫は5月~9月頃にかけて出現

体長9mm~13mm

北海道から九州にかけて分布

農耕地や日当たりの良い草原等に多く生息

幼虫は土中で植物の根を食べる

小型のコガネムシ。国内のみならず欧米でも害虫として猛威を振るっている。

コミスジ・・・林縁を滑空しながら飛び回る三本線

身近だがマイナーなコミスジ。胴体の光沢がすごい

4月も大方過ぎ去ってGWが近づいてくる頃。ふわりとまるで滑空するように飛び回るチョウが現れる。それが今回紹介するミスジだ。

 

身近な所に生息しているチョウではあるのだが、一般的な知名度は低いチョウだ。
分類的にはタテハチョウ科のミスジチョウ属に属するチョウだが、そもそもミスジチョウというのが、昆虫に興味がない方にはほぼほぼ知られていない存在と言えよう

ミスジチョウの名前の由来は羽を広げたところを見るとわかりやすい。白い模様が三本線に見えるところから名付けられたというわけだ。


日本に生息するミスジチョウ属の仲間は、ミスジ以外は都市部近郊ではほぼ見ることがない上に、コミスジにしてもアゲハやモンシロチョウ等と比べると住宅街に出没する率が低いので、その辺りが知名度が低い要因と言えるだろうか。
それでもコミスジちょっとした雑木林や河川敷等を歩くとよく見かけるチョウなので、フィールドワークをすれば遭遇率の高いチョウだ。

 

ちなみに南西諸島に本種とそっくりなリュウキュウミスジという種類が存在するが、分布域が被っていないので、その辺りの知識があれば間違えるということはない。

 

前述の通り滑空するような独特な飛び方をするので、慣れてくれば飛び方で容易にコミスジだとわかる。
ちなみにコミスジのみならず、ミスジチョウの仲間は滑空するように飛ぶのが特徴である。

 

タテハチョウの名前の由来は羽を立てて止まるから「立て羽チョウ」というところから来ているのだが、ミスジは基本的に羽は立てずに開いて止まることが多い
他のタテハチョウの仲間は羽の裏面が枯れ葉ライクで保護色になっており、積極的に羽を立てて止まる理由があるのだが、ミスジの裏面は表面の黒を茶色にしたような感じになっているので、そこまで羽を立てて止まる必要がないのではないかと個人的には思っている。

裏面は茶色い感じになっている

参考までに同じタテハチョウ科のルリタテハの裏面。かなり枯葉っぽい

また、食性も他のタテハチョウの仲間の多くが好きな樹液や果実等よりは、花で吸蜜をする方が多いという貴婦人感溢れる一面ものぞかせるなど、タテハチョウ科でありながら、とことんタテハチョウとは一線を画そうとするチョウなのだ。

 

日の光が当たると胴体の光沢がキレイなのも中々ポイントが高い。身近な存在でもよくよく観察すると、こういった魅力を発見することが出来る点が、昆虫観察の魅力の1つと言えよう。

身近な存在でありながらあまり知られておらず、不遇な(?)チョウではあるが、その実、見た目や飛び方がおしゃれなチョウでもある。
緑が深くなってくる爽やかな季節に合わせて、コミスジと戯れるのも乙なものである。

 

【コミスジ

チョウ目タテハチョウ科イチモンジチョウ亜科

成虫は4月~10月頃にかけて出現

前翅長22mm~30mm

北海道から九州にかけて分布

日当たりのいい林縁等に多く生息

食草はマメ科の各種、ハルニレ等

白い三本線が特徴のチョウ。滑空するように飛ぶ。