昆虫散歩道

昆虫をあれこれ撮影してあれこれ語ります

ミヤマアカネ・・・日本一の称号を獲得した赤とんぼ

日本一美しい赤とんぼ。羽の模様が特徴的だ

赤とんぼと言えば我々日本人にも馴染み深く、特に個体数の増える秋の風物詩とも言える存在である。「夕焼け小焼けの赤とんぼ♪」などと歌われて広く親しまれていたりもするわけだが、そんな赤とんぼの中で、「日本一美しい赤とんぼ」と言われるのが、今回紹介するミヤマアカネだ。

 

画像を見ればわかる通り、アキアカネやナツアカネ等にはない羽の模様が最大の特徴である。またこの模様が真っ黒ではなく、若干の赤みがかっているのも個人的にはお気に入りポイントだ。
特に成熟したオスはキレイに赤くなるので、日本一美しい赤とんぼというのも頷ける。
そして、こうした羽の模様があるおかげで、同定の難しいトンボにおいて見分けるのが容易な種類である(近縁種のマユタテアカネと交雑するようなので、そうなるとルックスが変わるのだろうか)

こちらはマユタテアカネ。中々きれいだね

少しオスに触れたが、一方のメスは、オスのように真っ赤にはならずにオレンジのような薄い褐色のような色になる。オスに比べてだいぶ落ち着いた雰囲気になるが、特徴である羽の模様はメスにも表れるので、一目でミヤマアカネだとわかることに変わりはない。

メスは薄い褐色のような体色をしている

名前のミヤマはもはや言うまでもないと思うが、漢字で書くと「深山」となる。しかし、山奥に行かないと会えないというわけでもなく、いわゆる丘陵地から低山地を中心に広く生息している
実際ミヤマクワガタミヤマセセリ等、深い山でなくても生息している「ミヤマ」と名付けられた昆虫は結構いたりするので、結構いい加減な気がするのは私だけだろうか。
ちなみにミヤマアカネは、他のトンボが好むような池や沼のような止水域よりも、ある程度流れのある小川等を好むので、自然が豊かなところに行かないと中々お目にかかれない印象だ。
実際にレッドデータに載っている都道府県も多く、例えば東京都では絶滅危惧Ⅱ類に指定されている等、減少している所も多々あるようだ。

 

超個人的な思い出話だが、幼い頃群馬の山間部にある親戚の家に行っては、ミヤマアカネを捕まえるのが、私のお盆の恒例行事であった。普通の赤とんぼと違って、羽に模様があるトンボというのが、どうにも昆虫大好き少年の心をくすぐっていたわけだ。
日本一美しい赤とんぼという称号は大人になってからはじめて聞いたのだが、ミヤマアカネに魅了されていた少年時代の私は、なんとなくその意味に気付いていたのかもしれない。

 

そんなこんなでミヤマアカネは、昆虫好きならやはり見ておきたいトンボだ。改めて見てみると、日本一美しい赤とんぼという称号は伊達ではない。その姿に魅了されて、昆虫ライフを彩ってみてはいかがだろうか。

 

【ミヤマアカネ】

トンボ目トンボ科

成虫は7月~11月頃にかけて出現

体長32mm~38mm

北海道から九州にかけて分布

ゆるやかな小川や用水路の周辺等に多く生息

昆虫を捕食

日本一美しい赤とんぼと称されるトンボ。山奥でなくても見ることができる

 

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ショウリョウバッタ・・・圧倒的存在感を放つ日本最大級のバッタ

なんとも立派なショウリョウバッタ。目の前で飛び立つと結構ビビるよね

バッタは子どもたちの間でも結構人気があり、追いかけた思い出がある方も多いのではないだろうか。今回紹介するショウリョウバッタも代表的なバッタなので、中々馴染み深い存在であろう。

 

やはり最大の特徴はその細長い見た目だ。なんかちょっと刀のようなフォルムだが、なんとも言えない目のせいかかっこいいというよりは、ちょっと抜けているような感じがするのは私だけだろうか。まあそこがチャームポイントでもあるということだ。
幼虫も、羽がないだけでほぼ同じような見た目をしているので、すぐにショウリョウバッタだとわかるだろう。
オンブバッタとフォルムが似ているが、あまりにも大きさが違うので、さすがに間違えることはない。

幼虫。羽がなくてもフォルムは同じ

こちらはオンブバッタ。フォルムは似ていても全然小さい

名前の由来は旧暦のお盆の時期(精霊会)の頃によく見かけるようになる説や、その時期に流す精霊船に形が似ている等の説がある。まあ要するに旧暦のお盆が関係しているというわけだ。
ちなみに旧暦のお盆は7月13日~15日とされているので、ショウリョウバッタの成虫が現れ出す目安として押さえておこう。

 

日本のバッタの中では最大であり、実際目撃するとなんとも貫禄の姿といったところだ。しかし、その立派な大きさを誇るのはメスだけで、オスは下手したら半分くらいの大きさしかない。
人間は基本的に男性の方が大きいことが多いが、昆虫界ではオスの方が小さい種類はむしろザラなので、まあまあマストだと言えよう。

 

飛ぶときに「キチキチ」という音を立てるので、飛び立つとすぐにわかる。生息地の草むらを掻き分けると、あっちでキチキチこっちでキチキチ音が鳴るので、中々賑やかである。
その羽音から「キチキチバッタ」と呼ばれることもあり、私も実際子どもの頃はキチキチバッタと呼んでいた。
また、「コメツキバッタ」という異名も存在する。これは捕まえた際に体を上下に動かす様が米をついているように見えるから名付けられた
色々な呼び名があるのでこんがらがりそうであるが、紛れもなく同じ種類のバッタである。

 

基本は緑一色の体色だが、環境等によって様々な体色の個体が存在する。褐色の者や緑を基本に褐色のラインが入っている者等が存在するので、フィールドワークの際にはその辺りをよく観察すると面白い。

褐色のラインが入っている者

褐色の者。環境によって体色が変わるようだ

立派な体つきで草原に潜んでいるショウリョウバッタ。身近な所にも普通に生息しているので、河川敷の草むら等があれば生息している可能性は高い。
飛べば賑やかな音を立てるし、身近な昆虫として存在感はピカイチだ。
そんな存在感あるショウリョウバッタを、童心に帰って追いかけるのも中々乙なものである。

 

ショウリョウバッタ

バッタ目バッタ科

成虫は7月~11月頃にかけて出現

体長:オス45mm~52mm メス75mm~82mm

北海道から沖縄にかけて分布

河川敷等日当たりの良い草原に多く生息

様々な植物を食べる

日本最大級のバッタ。キチキチバッタやコメツキバッタの異名を持つ

 

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クジャクチョウ・・・真っ赤な配色と独特な模様で異彩を放つ蝶

これが本当に日本の蝶なのだろうか?

爽やかな風が吹き抜ける夏の高原。そこには貴重な植物が生えたり、分布の限られた昆虫が生息していたりと、我々のテンションが上がるような光景が広がっている。
そんな中、君は本当に日本の蝶かい?と疑いたくなるのが今回紹介するクジャクチョウである。

 

何がそんなにすごいかと言われればやはりそのド派手な表の模様だろう。そもそも日本にこんな原色っぽい真っ赤な蝶がいるのかという話である。
もちろん日本に似ている種類など存在しないので、見かけたら一発でクジャクチョウだと判断できる。
ちなみにヨーロッパではポピュラーな蝶で、様々な環境に幅広く生息している。

 

寒い地域に多く生息する蝶で、日本では標高の高い所を主な生息地としている。そのため平野部に住んでいる方にはほとんど馴染みのない蝶である。
そして寒い地域が主戦場ということは、近畿地方以上西には生息していない滋賀県にはちょびっとだけ生息地があるらしい)無論埼玉南部のベッドタウンに住んでいる私には遠い存在だ。
しかし、生息地では珍しい存在というわけではないので、赴けば基本はお目にかかる事ができるチョウではある。
場所によっては庭先に植えてある花を訪れるなんてこともあり、私からしてみたらなんともうらやましい限りである。
ちなみに北海道や東北の寒い地域では平野部でも見ることができる

生息地では庭の花に来ることも。なんともうらやましい

生態は一般的なタテハチョウらしく、成虫で越冬をして春に目覚めた後産卵をするという生活史を送る。その後2回ほど発生をして秋までの長い期間見られることも、タテハチョウっぽい感じだ。
そして、鮮やかな表に対して裏がすこぶる地味なのも完全にタテハチョウライクである。
クジャクチョウの裏はなんだか黒塗りの地味な感じとなっており、表のド派手な感じと比べると、本当に同じ蝶なのか疑いたくなるほどだ。故にクジャクチョウの写真を撮ろうとするときは、「羽広げろ羽広げろ!」と念を送るのは言うまでもない(ちなみにクジャクチョウは割と羽を広げてくれる系ではあるので、頑張って観察すれば派手な表を見ることは難しくない)

裏面はなんだか黒塗りで地味な感じ。いや、逆に派手まである!?

タテハチョウの仲間は樹液を好んで訪れる者が多いが、クジャクチョウは樹液よりは花が好きで、他のタテハチョウと比べてやや優雅寄りの蝶である。クジャクチョウに出会うには日当たりの良い花のよく咲いた林縁やら高原が狙い目で、時折多くの個体を同時に見ることもできる。
しかし、避暑に訪れてこんなにも美しい蝶が見られるなんて、とにかく最高としか言いようがない。

 

そんな感じでクジャクチョウは、やはりそのド派手な見た目で、出会うとテンションが上がる蝶である。
高原に行けば個体数も多く、お目にかかることは難しくない。
避暑に訪れた際は是非ともクジャクチョウを探して、その羽の美しさに触れてみよう。

 

クジャクチョウ】

チョウ目タテハチョウ科タテハチョウ亜科

成虫は6月~10月頃にかけて出現。成虫で越冬する

前翅長26mm~32mm

北海道から本州にかけて分布。近畿以西には生息していない

日当たりの良い林縁や草原等に多く生息

食草はイラクサ科のホソバイラクサやクワ科のカラハナソウ

赤い羽が良く目立つチョウ。本州では基本的に高標高地に生息する。

ニイニイゼミ・・・小柄で保護色を発揮するフライング気味のセミ

独特な模様のニイニイゼミ。夏休み前に普通に現れる

子どもたちが夏休みを迎える頃、夏を代表するセミたちも本格的に活動を開始する。
そんなセミの中でも、子どもたちの夏休みよりも一足早く本格的に活動を開始してしまうのが、今回紹介するニイニイゼミである。

 

前述の通り、日本を代表するアブラゼミやらミンミンゼミやらは7月中旬頃からの発生が多いが、ニイニイゼミは6月の終わり頃から本格的に現れ始める。そのため7月の始め頃に鳴いているセミがいたら、大体ニイニイゼミである

 

さて、私はさっそく物申したい。それは、ニイニイゼミの名前の由来だ。
ミンミン鳴くからミンミンゼミツクツクボウシと鳴くからツクツクボウシ。ではニイニイゼミニイニイ鳴くからニイニイゼミ、、、否、どう聞いてもニイニイとは聞こえない!!!
図鑑等の記載で多いのは「チー」であるが、個人的にはジーという感じに聞こえる。だったらチーゼミかジーゼミにしなきゃおかしいじゃないか! 一体全体ニイニイってなんなんだ!ちむどんどんのニーニーか!?!?
、、、取り乱しましたが、まあなんかアブラゼミよりマイルドな鳴き声だからニイニイとなったのだろう。きっとそうだ。うんうん。

 

そんなニイニイゼミ全身が木肌っぽい色味をしており、かなりホゴショキーである(そんな単語はない)
鳴き声はすれど中々姿を見つけられないこともよくあり、私はよく木を見上げながら見つけられずに、不審者っぽくなってしまう。アブラゼミやミンミンゼミと比べても小さな体つきをしているので、余計に見つけにくいのもあるかもしれない。
ちなみに世界的に見ると羽が透明でないセミは少数派らしく、それを基準にして見ると珍しいセミだと言えよう。
まあ実際は、都市部でもまとまった雑木林があれば生息している可能性が高いほど身近な存在である。


しかも最近は、住宅街でも結構目撃する頻度が増えたような気がしている。その肌感を裏付けるというわけではないが、近年都市部で復活傾向にあるようである。気候の変化や環境への適応等様々な要因が考えられるようだが、個人的には湿度が関係しているのではないかと思っている。
というのもニイニイゼミは、乾燥した土壌を好まずある程度湿気がある土壌を好んで幼虫が成長していくからだ。その証拠に、ニイニイゼミの抜け殻は泥だらけであるので、他のセミの抜け殻との見分けは容易だ。
要するに成虫も幼虫も簡単に見分けが付くので、日夜同定に苦慮している我々にとても優しいセミだと言えよう。

泥だらけの抜け殻。湿っている地面にいるため泥だらけになる

他のセミに先駆けて登場するニイニイゼミ。見た目もかなりの個性派なので、誰でもすぐにニイニイゼミだとわかるだろう。
見つける側としては、保護色なのが辛いところではあるが、見つけた時の嬉しさもひとしお。
鳴き声が聞こえたら是非とも探してみよう。

 

ニイニイゼミ

半翅目セミセミ亜科

成虫は6月~9月頃にかけて出現

体長20mm~24mm

全国に分布

雑木林や果樹園等に多く生息

様々な木の汁を吸う

独特なまだら模様のセミ。抜け殻が泥だらけなのも大きな特徴

ヒメギス・・・黒光りした小柄なキリギリス

黒光りする体色のヒメギス。意外と身近なところで見られる

皆さんは、キリギリスというとどんな昆虫を想像するだろうか。草むらの中にいる緑のバッタっぽいアイツを思い浮かべる方がほとんどだろう。そんなキリギリスの仲間に、黒塗りの高級車のような装いをした者が存在する。それが今回紹介するヒメギスだ。

 

前述の通り、とにかく特徴は黒い墨汁でもかけられたのかと疑いたくなるほどに黒い。色合い的にはキリギリスよりもコオロギと言った方がしっくりくるだろう。

ちなみにヒメギスは幼虫の頃からすでに黒く、明らかに草むらで異彩を放っている存在と言っても過言ではない。

 

さてここで、私は全身全霊を込めて異議あり!」と申し上げたい。それはヒメギスという和名に対してである。
ヒメギスは漢字で書くと「姫螽蟖」要するに小さなキリギリスという意味である。
まあ確かに、ヒメギスはキリギリスよりも一回り小さいので、そうした和名が付けられるのも妥当っちゃあ妥当かもしれない。しかし、冷静に考えていただきたい。どう考えてもこやつの名にふさわしいのは「クロギス」だ!!! 
クロギスだったらどれだけ分かりやすかったことか!おかげで私はフィールドワークする度に「あーコイツだコイツ、あれだ、、あれよ、、、あれ、、、あのー、、、ヒメギスだ」みたいな感じになってしまうんだ!どうしてくれるんだ!!責任取ってくれよ!!(記憶力が悪いだけでは?)

 

取り乱したが、改めてヒメギスの生態を見ていこう。
食性は各種植物やその他の昆虫を食べる雑食性キリギリスに比べて昆虫はあまり食べず、植物をより好むようだ

 

メスのお尻に付いている産卵菅は、キリギリスやヤブキリ等と比べて短く、ちょっと上向きになっている。上記の2種類が土中に産卵するのに対して、ヒメギスは植物の茎に産卵するので、長い産卵菅が必要ないのだろうと個人的に考えている。

メス。キリギリス系はお尻の産卵管で雌雄を見分けるのがマストだ

参考までにキリギリスのメス。だいぶ産卵管が長い

黒塗りの高級車のような見た目だが、実は結構身近な所で見られる普通種である。「私こんな黒いキリギリスなんて見たことないわよ」と通りすがりのマダムに言われそうだが、それはヒメギスが草むらの中にいて目立たないからである。
これはヒメギスに限らず鳴く虫全般に言えることだが、彼らは基本的に草かげを主戦場としているため、声はすれど見つからない現象が起きやすい
しかも少しでも不用意に近付けば途端に鳴くのを止め、草の奥に逃げ込んでしまう。そりゃあ見つけるのが難しいわけである。

 

肝心の鳴き声について触れていたかったが、ジージーというか「ジリリリ」というかそんな感じである(適当)
まあ、その辺の草むらで大きい声で鳴いている昆虫がいたら、大体ヒメギスである(適当がすぎないか?)

 

ヒメギスにはかなり似ているイブキヒメギスという種が存在するのだが、こちらは山地性で、関東平野ど真ん中在住の私が近所でお目にかかる事はない。
一方で、コバネヒメギスなるものも存在する。その名の通り羽が小さいヒメギスで、パッと見幼虫かと思ってしまうルックスだ。こちらは平野部にも普通に生息しているので、注意して見てみると面白い。

コバネヒメギスの成虫。背中に申し訳程度の羽がある

そんなこんなで知らぬ間に身近な所に存在していたヒメギス。いる所にはめちゃくいゃいるので、なんとか目を凝らして探してみよう。独特の黒塗りがあなたをお出迎えしてくれるはずである。

 

【ヒメギス】

バッタ目キリギリス科キリギリス亜科

成虫は6月~9月頃にかけて出現

体長17mm~27mm

北海道から九州にかけて分布

湿り気のある草地に多く生息

様々な植物や他の昆虫を食べる

黒い体色のキリギリス。身近な草地でも割と生息している。

 

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キアゲハ・・・身近でも存在感抜群の美しい羽

キアゲハの圧倒的存在感パねえ

アゲハといえば日本で知らない者はいないというレベルで、誰もが知っている蝶であろう。
住宅街でも普通に飛んでいるし、成虫が見られるのも春から秋までと実に長いので、そういった面でも、日本国民に馴染み深い蝶であると言える。

しかし、そんなアゲハチョウの仲間に、もう1種類似ている者が存在する事を知っている方は、意外と少ないのではないか。それが今回紹介するキアゲハである。
おそらく知識のない方が飛んでいるところを見たら、間違いなくアゲハチョウと思ってしまうだろう。

こちらはアゲハ。キアゲハと双璧だ

そうは言ったものの、実は見分けるのは難しくない。キアゲハは文字通りアゲハチョウに比べて鮮やかな黄色をしており、大きさも一回り大きいので、よくフィールドワークをする人からしてみたら、簡単に見分けられる。
裏面の模様もよく見ると全然違うし、私が子どもの頃に教わった見分け方が、表羽の付け根から縞模様があるかどうかという点だ。
縞模様があるのがアゲハチョウで、ないのがキアゲハという、なんともわかりやすい見分け方をしている。
私がもし、蝶の教科書を作るとしたら、2ページ目にアゲハチョウとキアゲハの見分け方を載せるだろう。それくらい両種を見分けるのは基本中の基本なのだ。

両種の見分け方はこれでバッチリ

裏面もよく見ると結構違う

そんな両種だが、実は生態は結構異なっている部分がある。まず明らかに違うのが幼虫の食草だ。
アゲハはミカン科の植物を食草とするのに対して、キアゲハはセリ科の植物を食草としている
そのためかアゲハは住宅街の公園や林縁等に多く、キアゲハは畑や拓けた草原に多い
また、キアゲハはセリ科であれば様々な植物を食するグルメであり、パセリやニンジン等の農作物も食べるので、これらを育てている方は注意が必要である。
ちなみにセリ科を主な食草としているアゲハチョウの仲間は、日本ではキアゲハが唯一であり、身近な所に生息しているが、実は結構尖っている存在である(ちなみにアゲハチョウの仲間はミカン科を食草としている者が多い)

ちなみに成虫同士はそっくりな両種だが、幼虫はまっっっっっっっったく似ていない
アゲハの幼虫はおなじみの目玉模様のある芋虫だが、キアゲハの幼虫は縞模様のなんだかすごい柄をしている

まずはおなじみアゲハの幼虫をご覧ください

一方のキアゲハの幼虫。似ても似つかん

しかしなぜこんなすごい柄になってしまったのか。アゲハチョウの仲間はアゲハ同様、緑の目玉模様付きの幼虫が多いので、余計に異彩を放っている。
ちなみにアゲハの幼虫は何か危険が迫ると臭角という角を出すのだが、キアゲハの幼虫も臭角をしっかりと出す。この辺りはちゃんとアゲハを踏襲しているので、ホッと一安心といったところである(?)

 

しかしキアゲハは身近な存在なのでスルーしがちであるが、じっくり観察してみると、かなり美しいチョウである。
サイズも大きく草原を優雅に飛び回る姿は圧倒的存在感だ。
これが珍しい存在だったらさぞかしマニア受けがすごかったのではと思う。
もっともマニアに受けようが受けまいが、キアゲハの美しさに変わりはない。

身近な存在だが他の仲間とは異彩を放ち、圧倒的な存在感で我々を楽しませてくれるキアゲハ。
こんなに美しいチョウが身近な所で見られるというのだから、探しに行かない手はない。
あなたも美しいキアゲハに会いに行ってみよう。

 

【キアゲハ】

チョウ目アゲハチョウ科アゲハチョウ亜科

成虫は3月~11月頃にかけて出現

前翅長36mm~70mm

北海道から九州にかけて分布

草原や耕作地等拓けたところに多く生息

食草はセリ科の各種

アゲハと双璧を成す存在。鮮やかな黄色が美しい。

 

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クサギカメムシ・・・強烈な臭いで人々を翻弄するTHEカメムシ

黒っぽい色のクサギカメムシ。中々立派な容姿だ

カメムシ。そう、それはフローラルな香りを放ち、有機野菜を食する優雅な存在、、、なんて生易しいものではなく、要するに強烈な臭気と植物の汁を吸う害虫として悪名高い
そんなカメムシの中でも、今回はクサギカメムシを紹介していきたい。

 

ルックスはTHEカメムシといった感じで、黒っぽいカラーリングが特徴だ。
カメムシの中でもかなり強烈な臭気を放つとしてお馴染みで、ということはカメムシの中でも最強クラスのポテンシャルを持っていると言えよう。

 

食する植物はクワやウメ、ミカンやリンゴやダイズ等様々だ。故に草原や林縁、農耕地等様々な場所で見られる普通種である。


ちなみにクサギカメムシクサギ「臭木」という植物の事であり、要するにクサギでよく見られるから付けられた和名ということである(もちろん漢字からもわかる通り、クサギは葉から悪臭を放つ植物である)


そして、食する植物の種類を見て察した方も多いだろうが、要するに重要な農業害虫ということになる。
特に果樹にはかなりのダメージを与えてしまうようで、果実の汁を吸っては果実を傷めてしまう。

 

そして、前述の通り強烈な臭いを放つので、いわゆる衛生害虫としても本領を発揮する。
まあ強烈な臭いを出しても、人里離れた森の中でずっと暮らしているのであれば、我々が特に思う事はないが、このクサギカメムシは、越冬のために屋内に入り込んでくるというとんでもない習性を持っている。
クサギカメムシ平たい体型をしており、屋内に入り込むのに適しているのだ
まあ屋内は雨風を防げるし、温度も安定しているので、越冬個体からしたらかなり居心地の良い場所になるので、納得といったところか。
ちなみに私は子どもの頃、山間部にある親戚の家の使われていない部屋を久々に開けたら、本種が大量に入り込んでいたのを見て衝撃を受けた事を未だに鮮明に覚えている(今なら嬉々として写真を撮っているであろう)
ただ、最近の家は密閉性も上がってきており、中々こうした越冬個体を見ることもなくなってきたので、今にしてみたら惜しいことをしたと思わなくもない(まあ自宅ではないのでいくらでも好き勝手言えるわな)

 

そんなクサギカメムシだが、幼虫はちょっとトゲトゲでゴツい体つきをしている。カメムシの仲間は、成虫と幼虫で全然姿形色が違うじゃん!みたいな種類が多かったりするのだが、クサギカメムシはそこまで違う感はない。親子なんですか?あーどことなく面影ありますねーといった感じだ。

クサギカメムシの幼虫。まあ羽がなくなったらこんなもんか

まあそんなクサギカメムシだが、何かと嫌われてしまいがちではあるが、私はその堂々とした姿を見るのが結構好きである。カメムシにしては大型なので存在感はピカイチだ。
昆虫観察という意味ではクサギカメムシは中々立派なので、是非とも探してみたいところである。

 

クサギカメムシ

半翅目カメムシ

成虫は4月~11月頃にかけて出現。また成虫で越冬する。

体長13mm~18mm

本州から九州にかけて分布

林縁や畑、果樹園等に多く生息

様々な植物の汁を吸う

黒っぽい体色のカメムシ。強烈な臭いを放つ。

 

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